岸田首相が東京・赤坂の議員宿舎から首相公邸に引っ越したのは去年12月11日。

「首相が日常生活を行う住まい」とされる首相公邸だが、長く“空き家”の状態が続いていた。高額な維持費や危機管理対応が遅れる懸念などが指摘され、活用を求める声が根強くあった中、実に9年ぶりに“主”を迎えた。

岸田首相の入居から約3カ月が経った現在では、週末に、官僚らが岸田首相への説明を行うなど、「日常生活を行う住まい」にとどまらない「公務の場」としての活用が目立つ。背景には、相次ぐ北朝鮮のミサイル発射や、ロシアによるウクライナ侵攻がある。

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去年12月11日、首相公邸では引っ越し作業が行われた

ロシアによるウクライナ侵攻が激化 首相は休日も「公邸公務」

ウクライナ情勢を巡り、政府が2月11日にウクライナ全土の「危険情報」を最も高いレベル4の「退避勧告」に引き上げて以降、首相公邸では毎週末、官僚らが最新情報のレクチャーをする、いわゆる“首相公邸レク”が行われている。

2日後の13日は日曜日だったが、岸田首相は、秋葉国家安全保障局長や、外務、財務、防衛省の幹部らを首相公邸に呼び出し、約1時間にわたり面会。

また、ロシアが軍事侵攻に踏み切る可能性が高いとされていた週には19日、20日と、土日ともに秋葉国家安全保障局長らから首相公邸でレクを受けている。

そして祝日の23日には松野官房長官らと首相公邸で協議を行った上で、記者団に、最初の対ロシア制裁を発表した。ロシアが一方的に承認した2つの共和国関係者のビザ発給停止や輸出入禁止措置などの内容だ。

関係者は「状況はめまぐるしく動いている。政府対応に平日も休日も関係ない」と話す。“首相公邸レク”が常態化しているのは、緊迫が続くウクライナ情勢を受けて、平日に首相「官邸」で行っているのと同様の公務を、休日の首相「公邸」で行う必要性が高まっていることの表れといえるだろう。

祝日の2月23日、公邸前で取材に応じる岸田首相

今年すでに北ミサイルが9回 今週末も?

一方、政府関係者が「ウクライナが日々動く中で、ミサイルも飛んでくる」と対応に苦慮しているのが北朝鮮による度重なるミサイルの発射だ。今年に入ってから、北朝鮮の弾道ミサイルなどの発射は9回確認されている。1月30日に、政府は「烈度の高い」という異例の表現を使用。あまり耳慣れない言葉だが、激しさや厳しさが高いことを表すとのことで、頻度が上がっているミサイル発射に対する警戒感の高まりを協調するため、あえて用いたということだ。

今年に入って7回目のミサイル発射は日曜日の朝だった。1月30日午前7時52分に弾道ミサイル1発が発射され、およそ1時間後には秋葉国家安全保障局長や防衛省幹部らが“首相公邸レク”を行った。その後、岸田首相が官邸に入り、国家安全保障会議を開催している。

北京五輪期間を挟み、2月27日(日)に8回目、3月5日(土)に9回目と、直近のミサイル発射は2週続けて休日の朝だった。どちらも発射から約1時間後には国家安全保障局や防衛省による“首相公邸レク”が行われた。その後の分析で、この2発のミサイルは、いずれもICBM(大陸間弾道ミサイル)だったことが分かった。

ある政府関係者は、「韓国の次期大統領が選出された直後で、今週末も発射がある可能性は高い」と警戒している。

コロナ重点措置も継続 首相に求められる危機管理は…

ウクライナ情勢や北朝鮮のミサイル発射以外の“首相公邸レク”で目立つのは新型コロナウイルス感染対策だ。まん延防止等重点措置の期限が近づくと、週末に岸田首相が、山際コロナ担当相や後藤厚労相、堀内ワクチン担当相らを公邸に集め、解除や延長の判断を含めた今後の対応を協議するのだ。

これら“首相公邸レク”のテーマで共通するのは、危機管理。首相周辺は当初「2021年のうちに公邸に移り、危機管理体制を整える」などと引っ越しを決めた理由を説明していた。まるで未来を予見していたかのように、今年は年明けから国内外の情勢がめまぐるしく動いている。

かつて岸田首相は、公邸入居の意義について「様々な観点から公務に専念するためにも意味がある」「危機管理の観点からは公邸で過ごすことの意味は大きい」などと述べていた。果たして岸田首相が公邸に入居したことで、危機管理を中心とした政府の態勢は変わったのだろうか。

ある政府関係者は「公邸に常に首相がいることで機動的に状況報告が行える」ことから「メリットはある」と話す。一方で、別の関係者は「首相がどこにいようと政府の危機管理は変わらない」と強調した。また、首相周辺は最近の岸田首相の様子を「公邸に帰ってからも書類を目に通すなどしている」「ウクライナ、コロナ、土日のミサイルという局面が続き、ずっと職場にいるような感覚なのではないか」などと表現した。

岸田政権で常態化しつつある休日の“首相公邸レク”は、日本を取り巻く環境が一層緊張を増していることの証ともいえる。そしてコロナを含め、現在、政府が直面している課題は、いずれも長期的な対応が不可欠なものばかりだ。公務への専念はもちろんだが、休息をしっかり取ることも長期戦には必要だろう。国内外の危機に対して、岸田首相をはじめ、政府には引き続き万全の態勢で臨んでほしい。

(フジテレビ政治部・官邸クラブ 亀岡晃伸)

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