“不登校”から“登校”できるようになった生徒がほぼ倍増

青森市で2020年度、全ての市立中学校でオンライン授業を導入したところ、“不登校から登校できるようになった生徒”の割合が、2019年度に比べて、ほぼ倍増したことが分かった。

青森市では、新型コロナウイルスの拡大で2020年3月2日から5月10日まで、市内の小中学校の一斉臨時休校を実施。この間に学習の遅れが生じないよう、「オンライン授業」を実施した。

その結果、文部科学省の「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」で、不登校になった生徒のうち、登校できるようになった生徒の割合が2020年度は49.3%となった。

2019年度は26.1%だったので、2020年度はほぼ倍増したことになる。
全国平均は2019年度が22.8%、2020年度が28.1%なので、全国平均を大きく上回った。

オンライン授業を導入したところ、“不登校から登校できるようになった生徒”の割合が大幅な増加になったということだが、これはなぜなのか?

オンライン授業の導入は、不登校だった生徒にどのような心境の変化をもたらしたのか?

“オンライン授業の参加”から“登校”へと導くため、不登校の生徒に対し、どのようなサポートをしているのか?


青森市の担当者に詳しく話を聞いた。

「オンライン授業」に参加後、“不登校生徒”が学校再開とともに登校

――「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」は毎年、文部科学省が行っている?

文部科学省が毎年、行っているものです。
 

――この調査でカウントしている「登校できるようになった生徒」は、自宅でオンライン授業を受けている生徒も含まれる?

「登校できる」というのは、オンライン学習に関係なく、学校へ実際に登校した生徒のことです。生徒によって、教室で授業を受けたり、別室で学習したりと、学習形態は様々です。

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――2020年度に不登校から登校できるようになった生徒の割合が倍増。この理由として考えられることは? 

「オンライン授業」の導入が一因と考えています。

青森市においては、新型コロナウイルスの拡大を受け、2020年3月2日から5月10日まで市内の小中学校を一斉臨時休校とし、その後の2週間の分散登校期間を経て、5月25日から通常登校を再開。

ほぼ3か月間、休みが続いた状態のため、この間に学習の遅れが生じないよう、「同時双方向型のオンライン指導」である「オンライン授業」を実施しました。

具体的には、臨時休校期間中の3月下旬、小・中学校4校を推進校としてZoomを使ったオンライン授業を実施し、4月5日から、この4校で本格的にオンライン授業を開始。

市内の他の58校についても、4月5日から推進校4校に担当者を集めて、オンライン授業の研修を行い、翌週から試行的に、そして4月20日から5月22日までの約1か月間は62校全校で本格的にオンライン授業を実施しました。

その結果、週1回程度、学校に来て、プリントなどを受け取って帰る状況にあった不登校の児童生徒の75%がオンライン授業に参加し、この内90%が2020年5月25日の学校再開とともに登校するようになりました。

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登校しないのが自分だけではないので、気持ちが楽だった

――「オンライン授業」が登校のきっかけになったということ?

学校再開後、登校した生徒に「オンライン授業」について聞き取りをしたところ、 以下のような意見が挙がりました。

・臨時休校中、登校しないのが自分だけではないので、気持ちが楽だった
・周囲の目を気にしなくてもよいので、気持ちが楽だった
・新しい学習形態に興味をもった


また、登校を始めた理由については「やればできるのだという気持ちになった」と答えており、これらの生徒に共通するのが、「勉強が嫌いではない」と言っていることです。

不登校の生徒については、まったく学校の指導を受け付けない生徒も、一定程度、存在しますが、勉強したいという生徒の方が圧倒的に多いことが推察されます。

しかし、周囲の目が気になって登校できない状況にあることから、ICT(情報通信技術)を活用することで個々の課題を取り除くことができれば、これらの生徒も学習に向かい、登校するようになるものと考えています。

さらに、不登校の生徒の登校日数を調べてみると、2019年度の不登校の生徒は、週当たりの登校日数が徐々に減っていく傾向にありましたが、オンライン授業が行われた2020年度は、週当たりの登校日数は維持されていました。

これについては、学校が再開した後も、家庭への授業配信、校内の別室への授業配信に加え、「AI型のドリル教材」を活用することで、一人一人の状況に応じて、きめ細かな指導の対応が、ICTの活用によって可能となったものと考えています。

これまでは、単にプリントを配布し、答え合わせするといった指導であったものが、 ICTの活用で質的な向上がみられたことによるものと推察しています。

イメージ(オンライン授業)

――「不登校の児童生徒の75%がオンライン授業に参加」の「不登校の児童生徒」は、青森市内の62校全校の不登校の児童生徒を指す?

62校のうち、不登校の児童生徒がいる学校全てです。
 

――「AI型のドリル教材」とは?

1人に1台、端末が配備されている環境で、個々の生徒の理解度や特性に合わせた、個別の最適学習を提供する教材です。

算数、数学、理科などの教科で、生徒の解答内容からAIが理解度を判断し、誤答の原因と推定される単元に誘導するなど、一人一人の理解を助ける最適な出題で学びを支援します。

不登校生徒のために行っている5つのサポート

――不登校の生徒にオンライン授業の参加をどのようにすすめている?
 
青森市では、2020年4月の一斉臨時休校期間中に実施したオンライン授業において、前年度に不登校だった児童・生徒のうち、74.5%がオンライン授業に参加したことが明らかになったことを受け、学校再開後も継続的にICT(情報通信技術)を活用した支援に努めています。
  
現在は、小学校3年生以上の全ての児童・生徒に配備されている、1人1台の端末を活用し、主に以下の5つの取り組みを行っていまして、子どもたち自身も個々の状況によって自分で選択し、行っている状況です。

・自宅において、グーグルの各ツールを活用した教師とのやりとりや面談
・自宅において、「AI型ドリル教材」を活用して、自宅で学習
・自宅からのオンライン授業
・別室に登校して、「AI型ドリル教材」を活用して、学習
・別室からのオンライン授業

 

――小学校3年生以上の不登校の児童生徒は、この5つの選択肢から、授業に参加する方法を選べるということ?

支援の方法については、選択肢から選ぶという形式的なものではなく、教員が、保護者や子どもとの面談などの中で、登校の仕方や家での過ごし方、学習方法などに加え、ICTを活用した支援も紹介している状況です。

あくまでも、子ども一人一人の状態によって、対応はその都度、異なるものです。
 

――「オンライン授業の参加」から「実際に学校に行く」へと導くため、不登校の生徒に、どのような方法で声をかけている?

青森市においては、不登校の児童生徒に対しては、個々の状況に応じ、多種多様な支援に努める必要があるものと考えています。

各学校においては、子どもたちの状況に応じて、先ほどの回答でお話ししたように、段階的な支援を行っている状況です。

 

コロナ禍で導入した「オンライン授業」によって、学校再開後に不登校だった生徒の登校につながった、青森市の市立中学校の事例。
取材を通して、ただ、導入するのではなく、不登校の生徒へのきめ細かいサポートがあったことが分かった。

心理的負担を減らす「オンライン授業」の効果というのは興味深く、今後、全国的に不登校の生徒を減らしていくため、青森市の取り組みが他の自治体にも広がっていくことを期待したい。