「海の色は何色?」と聞かれたら、「青」と答える人は多いだろう。しかし、世界に広がる海の色はさまざまだ。これが分かる、その名も「海のクレヨン」が登場した。

海のクレヨン
海のクレヨン
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衛星を使って宇宙事業やメディア事業を展開する「スカパーJSAT」の「Satellite Crayon Project」の第1弾で、1月31日に発売。宇宙から撮影した衛星写真の中から、世界12カ所の実際の海の色を抽出したクレヨンだ。海のイメージで思い浮かぶ青や緑のほか、白や朱など「こんな色があるの!?」と驚く色がそろっている。

選ばれた海は奄美大島の笠利湾のほか、グリーンランドやオーストラリア、アメリカ、ウクライナなど。また12色には名前が付いておらず、通常クレヨンに記されている色表示部分には、海の場所を示す緯度と経度を記載している。

実際の海の色を抽出したというクレヨン
実際の海の色を抽出したというクレヨン

さらに、パッケージにも工夫が施されている。穴が開いた表フタからは宝石のような12色が見えるのだ。表フタを開けると分かるのだが、クレヨンの色の元になった12カ所の海の衛星写真が印刷された中ブタが入っているという。

表ブタの穴の横には、それぞれの色の座標(緯度・経度)が記され、中ブタの写真と見比べることもできる。

表ブタ(左)を開けると、12カ所の海の衛星写真が印刷された中ブタが入っている(右)
表ブタ(左)を開けると、12カ所の海の衛星写真が印刷された中ブタが入っている(右)

そして、中ブタの裏にはQRコードがあり、読み取ると公式HPへとつながる。HPでは世界の海がこのような色になっている理由を始め、地球温暖化によって直面している課題など、色をきっかけに環境問題や地球の神秘に触れることができるというのだ。

中ブタの裏にはQRコードがある
中ブタの裏にはQRコードがある

価格は2420円(税込)でAmazonなどから購入ができ、売り上げの一部は海面上昇の危機に直面をしているキリバス共和国に寄付されるという。

いろいろな海の色で描ける「海のクレヨン」は、子どもたちの世界を広げる1つのきっかけになるのではないだろうか。

膨大なカラーチップから色を選定

ここで気になるのが、実際に存在する海の写真からどのように色を抽出したかということだろう。そして、なぜこの12カ所を選んだのか?

スカパーJSATの清野正一郎さんに話を聞いてみた。


ーー12カ所の海はどうやって決めた?

毎日更新される過去1年分の世界中の衛星写真をもとに、当初は世界自然遺産の海や有名な観光地などを中心に約50カ所くらいを候補として選定しました。その中で最終的にこの12カ所を選んだのは、その色の美しさと、その色に隠されたストーリーです。

例えばグリーンランドのイルリサットアイスフィヨルドの衛星写真の中では、一冬でできた流氷の白と、何万年もかけて雪が積み重なってできたグリーンランド氷床の白があったり、

グリーンランドのイルリサットアイスフィヨルド(72.29126 , -55.74175)
グリーンランドのイルリサットアイスフィヨルド(72.29126 , -55.74175)

約30年後には海面上昇でなくなってしまうかもしれない、キリバス共和国のきれいなエメラルドグリーンや、

キリバス共和国のカントン島(-2.77482, -171.70690)
キリバス共和国のカントン島(-2.77482, -171.70690)

塩分濃度が高すぎる影響で藻が異常発生し、βカロチンが発生されてできたウクライナの腐海の赤など、大人の私でも「へぇ」と発見や驚き、そして地球環境のことなどを考えさせられるような場所を中心に選定しました。

ウクライナの腐海(46.13594 , 33.91955)
ウクライナの腐海(46.13594 , 33.91955)

ーー日本からは奄美大島が選ばれている。その理由は?

もともと日本からはどこか1カ所選びたいと思っていました。ちょうど場所の選定をしているときに、奄美大島や徳之島、沖縄本島北部・西表島が世界自然遺産に認定されたニュースが入ってきたので、それぞれの衛星写真を見ながら、最終的に奄美大島の笠利湾に決定しました。あとから専門家の方に聞いた話ですが、ちょうど選んだ場所の衛星写真には、過去に隕石が落ちた場所が映っているそうです。

奄美大島笠利湾(28.46023 , 129.64000)
奄美大島笠利湾(28.46023 , 129.64000)

ーー衛星写真からどうやって色を抽出したの?

クレヨンは名古屋のクレヨン職人さんに作って頂きました。リモート環境下での色の打ち合わせはとても難しく、クレヨン職人さんには「データだと画面の映り方によって色が変わるので、この(衛星写真の海の)色という色を印刷してモノとして送って欲しい」と言われていました。

候補の12カ所の衛星写真を見ながら、デザイナーさんと一緒にその色を忠実に再現するためにイメージを決めていったのですが、デザイナーさんが最終的に、番号だけで色名もないような膨大な量のカラーチップの中から衛星写真に写る海の色と近い色を選定してくださり、それを衛星写真に貼り付けて、クレヨン工場に送り、それを見ながらサンプルを作ってもらい、送って頂き、そのクレヨンを手元で確認しながらリモートで打ち合わせをする、というような工程で色を作っていきました。

誕生したのは全12色(左から6番目が奄美大島笠利湾のクレヨン)
誕生したのは全12色(左から6番目が奄美大島笠利湾のクレヨン)

ーー製造で特に苦労した点は?

毎日更新される地球一個分の膨大な量の衛星写真から、良い色を探し、場所を決めていくという作業はとても時間がかかり途方もない作業だったので、一番苦労したところだと思います。

あとは、とても初歩的なことなのですが、私たちはプロダクトを作って売るということをしたことがない会社なので、バーコードの申請から販路開拓まで全部ゼロスタート。マーケティングデータもないので、この企画に共感してくれる人がどれくらいいるのだろう?ということを知るために、販売に至るまでに、クラウドファンディングにチャレンジしました。結果、たくさんの方に共感を頂き、開始3日で目標金額(150万円)を達成させて頂き、手応えを感じました。ご支援いただいた方がいてこそのこのクレヨンです。

クレヨン職人の製造の様子
クレヨン職人の製造の様子

またこだわりについても聞いたところ、「職人が再現した実際の海の色」や「天然由来の原料で制作した安心安全性」のほか、パッケージやWEBページの解説文などだと話してくれた。

「海の色って何色だと思う?」4歳息子との会話がきっかけ

ーーそもそも、なぜ海の色のクレヨンを作ろうと思いついた?

「海の色って何色だと思う?」「青に決まってんじゃん!」という4歳の息子との会話から生まれました。もともとは赤い海(ウクライナの腐海)を見つけたことから始まります。ずっと「海=青」だと思って生きてきたので、赤い海があることを恥ずかしながら38歳にして初めて知りました。それで、他にどんな色の海があるのか気になり、WEBで情報を集め、衛星写真で調べると多種多様な海の色があることに驚きました。

子どもたちにも、この地球の色の豊かさを知って欲しい、これなら自然に地球について興味を持ってもらえるんじゃないか? でも、ただ言葉で伝えただけじゃ伝わらないし、子どもが普段使っているクレヨンで地球の色を伝えられたら、遊びながら「へぇー面白い!」って思ってもらえるんじゃないか?そう考えてクレヨンを作りました。クレヨンって子どもが一番最初に手にする画材だし、そういう意味でもクレヨンに決めました。

「こんな色の海もあるんだね」とお絵描きしながら、「どこ?」「なんで?」「どうして?」と子どもたちの世界が勝手に広がっていってくれたらとても嬉しいです。

選ばれた12カ所
選ばれた12カ所

ーー実際の描き心地はどう?

職人さんが一本一本手作りで作って頂いていることもあり、とてもなめらかできれいな発色のクレヨンになっていると思います。原料も全て天然由来のものを使用していますし、小さなお子さまでも安心してお使いいただけると思います。とても繊細な、あまりみたことのない色だと思うので、新鮮ですよ!


ーー購入者からはどのような声が届いているの?

「こんなにたくさんの海の色があるなんてはじめて知った」や「子どもだけじゃなく大人も学べるクレヨン」など、我々の想いやコンセプト、そして箱のデザインに至るまで、とても多くの共感をいただいている気がします。SNSなどでも最近話題にしていただいたりと、とても嬉しいです。

この「海のクレヨン」を手にしながら、家族の時間の中で地球について話題にする時間が少しでも作れていたのであれば、とても嬉しいです。

なめらかできれいな発色
なめらかできれいな発色

ーー今後、海の色から広げる予定はある?

今後は「砂漠のクレヨン」や「森のクレヨン」など、宇宙から見た「地球の色」を使った新シリーズを構想中です。まだまだ伝えたい地球の色はたくさんあります!

「海のクレヨン」は全12色のカラーだが、候補は約50カ所もあったというので、世界にどんな色の海があるのか調べてみるのも面白そうだ。

「海の色は何色?」と聞かれたらあなたはなんと答えるだろうか? 地球の色の豊かさを子どもに教える際には、この「海のクレヨン」を片手に悩んでほしい。

(画像提供:スカパーJSAT)

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。