独自の強いこだわりにより、社会に馴染みにくいとされる“広汎性発達障害”と診断された一人の男性。
1冊のノートにこだわりを込めて始めた、ある挑戦を取材した。

馬場日向さん
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少しぎこちなくも黙々と接客に励むのは、新潟・長岡市に住む馬場日向さん(19)。

お客:
個性がこういうことに生かされて、私のようにそれを“いいな”と思う人がいて、つながれたらすてきだと思う

“数式デザイン”

日向さんが持つ個性とは…

長谷川珠子アナウンサー:
販売されているトートバッグやTシャツ。よく見ると、縞模様が数式でできています。彼は今、“アーティスト日向”として活動。デザインされている数式は、全て日向さんが手がけたものなのです

小学生のとき広汎性発達障害と診断 1冊のノートには“数式”がびっしり

日向さんのノートには、数式がびっしり

静まり返る部屋で、ノートいっぱいに長い“数式”を書いている日向さん。
小学4年生のときに、コミュニケーションが苦手で独自のこだわりを持つことが特徴の“広汎性発達障害”と診断された。
手に持つ驚くほど短い鉛筆も、そのこだわりの一つ。

(Q.なぜ短い鉛筆を?)
馬場日向さん:
まだ使えるから

馬場さんの母・裕子さん

コミュニケーションが苦手で、小学校高学年からは不登校になったという日向さんだが…

馬場さんの母・裕子さん:
他のテストはともかく、数学だけは抜き出て良くて、96点とか。“すごいな、習っていなくてもこんなにできるんだ”と

(Q.授業はほとんど出ていない?)
馬場さんの母・裕子さん:
一切出ていない。ゼロ

変化を苦手とする日向さん 数式のほか生活面にも様々なこだわりが

数式を書くことが習慣に

数学が得意だったと話す母・裕子さん。
2020年から日向さんの習慣となっているのが、1冊のノートに数式を書くこと。
その”数式ノート”で何を計算しているのかは、母親も分からないという。

(Q.数学は好き?)
馬場日向さん:
うん

変化が苦手

こうしたこだわりの習慣は生活面にもあった。
飼っているウーパールーパーとの朝晩の交流もその一つ。他にも…

馬場さんの母・裕子さん:
変化が苦手。(服も)どんなにボロボロでも変えることが苦手だったり、お風呂の順番も絶対変えられなかったり、色々ある

“認めてもらえる場”求めSNSへ デザイナーの目に止まり商品制作!

母・裕子さんがSNSに投稿すると…

生活習慣にも様々なこだわりを持つ日向さんは、周囲の理解を得られず次第に閉じこもりがちに。
その様子を見た裕子さんが始めたのは、日向さんがノートに書き続けてきた数式などをSNSに投稿すること。

馬場さんの母・裕子さん:
このままじゃ自己肯定感が下がると思って。“いいね”をもらうとか、良かったねと、彼の自己肯定感を下げないで、ちゃんと認めてもらえる場をつくりたかった

“数式デザイン”誕生

すると、その願いが思わぬ出会いを生んだ。
日向さんの数式に芸術性を見出したファッションデザイナーの小川結布好さんの協力を得て、2021年4月に『数式アパレルプロジェクト』が始動。
日向さんの数式をデザインした商品を制作することに。

“人が真似できないこと” 日向さんの個性にプロが気付かされることも

アトリエ装ウ ファッションデザイナー 小川結布好さん

この日、その商品の販売展示会に向けた打ち合わせが行われた。

アトリエ装ウ ファッションデザイナー 小川結布好さん:
デザインというか模様というか、すごい世界だと思って。何かに生かせるんじゃないかな、みんなに見せてあげたいという気持ちだった

日向さんによる、数式デザインの商品

日向さんのこだわりを、小川さんは“特別な個性”だと評価している。

アトリエ装ウ ファッションデザイナー 小川結布好さん:
多分彼は“すごく良いものを作ろう”というよりは、ただ集中して美しいものを作っている。そこに価値があり、みんなが真似できないことだと思う

日向さんと出会って気付いたこと

そのこだわりに、デザインのプロも気づかされることがあったという。

アトリエ装ウ ファッションデザイナー 小川結布好さん:
今まで自分のこだわりを削って生きてきたなと、彼と出会ってハッとなった。自分のやりたいこと、こだわっていた部分をもう一回出して生きていこうという気持ちになった

特別な個性に光を当てて… 数式デザイン通して日向さんの魅力を発信

原動力となっているのは

知らず知らずのうちに、周りにも刺激を与えている日向さん。

(Q.ご飯を食べることと数式を書くこと、どちらが好き?)
馬場日向さん:
数式を書くこと

原動力は“三度の飯より数学が好き”という気持ち。

馬場さんの母・裕子さん:
色々な人たちが、色々な目で彼の良いところを吸い上げてくれて、そこに光を当てて、新たな形に展開していくのはすごい力だと思う

販売展示会

そして迎えた、販売展示会当日。
そこでは日向さんのこだわりが形となって、多くの人に届いていた。

お客:
こだわりがあるからこそ生きづらい部分はあると思うが、それを力に変えているのは尊敬できる

お客:
みんなが才能を生かせる場があったら

お客:
見ていると落ち着いてくるので、日向くんにもっと作っていってほしい

“こだわりなくしたら彼ではなくなる” 人々の心動かす日向さんの個性

母の願いは「今のままで」

こだわりが周囲との距離を生んだこともあった日向さん。
今は、そのこだわりこそが最大の個性となり、輝きを放っている。

馬場さんの母・裕子さん:
(こだわりは)彼そのもの。こだわりをなくしたら彼じゃなくなってしまう。こだわりがあっての今の姿なので、そのままでいいのかなと思っている

自分らしくいるための“こだわり”

日向さんも思いは同じのようで…

(Q.今のまま、今やりたいことをやる?)
馬場日向さん:

うん

1冊のノートをきっかけに始まった自分らしくいるための“こだわり”は、人々の心を動かし、作品にエネルギーを宿していく。

(NST新潟総合テレビ)

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