米政界の天王山、11月の中間選挙を控えて、劣勢を伝えられる民主党から「沈む船からネズミが逃げる」ように不出馬を宣言する下院議員が相次いでいる。

米連邦議会議事堂
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民主党下院議員「30人目」の不出馬宣言

2月15日、ニューヨーク州第4選挙区選出のキャスリーン・ライス下院議員が記者会見を開き「今回の任期終了で引退し、中間選挙には出馬しない」と明言した。これで、中間選挙への不出馬を宣言した民主党の下院議員は30人に達した。

中間選挙では上院の3分の1議席(2022年は34議席)と下院の全議席(435議席)が改選されるが、下院民主党は現有議席221の13%余が不出馬を表明したことになる。一方の共和党にも再選を図らないことを表明した議員がいるが、その数は13人だ。ライス議員は不出馬の理由については「私の人生と仕事に一区切りをつけることにした」とだけ言っている。

ライス議員は、前回2020年の選挙では対立候補に13ポイントの差で当選しており、ニューヨーク州第4選挙区は今回の選挙区の区割り改定でも大きな変更は加えられておらず、再選の可能性は高いとみられていた。

ライス議員は民主党でも中道派で、民主党左派のナンシー・ペロシ下院議長が主導するリベラルな政策には同調できないでいたと、ニューヨーク・タイムズ紙電子版(15日)の記事は伝えている。

ペロシ下院議長は出馬を表明している

一方、共和党全国委員会の広報担当者マイク・ベルグ氏はこう皮肉っぽくコメントしている。「彼ら(民主党の不出馬議員)は、次回の選挙で下院民主党が多数派ではなくなることを知っているから辞めるのだ」。

確かに、選挙で敗退が予想される政党の議員が出馬を断念することはよくあることだが、民主党で30人というのは1992年の41人以来最も多く、やはり異常な動きだと捉えられている。逆に言えば、2022年の中間選挙で民主党は大きく議席を失うのではないかという見方を裏付けているようにも思える。

民主大敗の可能性も

世論調査では定評があるトラファルガー・グループが15日に発表した調査結果では、中間選挙で「共和党候補」に投票するとした者は54.4%「民主党候補」に投票するとしたものは41.9%で、その差12.5ポイントという大差になった。

これを議席配分するのは難しいが、民主党が歴史的大敗を喫したとされる2010年の投票日直前の世論調査では、共和党候補50.7%、民主党候補41.3%で、その差は9.4ポイントだった。(※リアル・クリア・ポリティクス平均値)

11月までにコロナが完全に終息していなかったり、インフレが収まっていなかった場合には民主党は2010年に失った63議席以上の敗北を喫するかもしれない。

米議会下院

不出馬宣言した約7割は政界引退へ

これまでに不出馬を宣言した民主党議員30人のうち22人は、政界を引退して他の道を辿ると言っている。一方、共和党議員13人のうち政界から引退するのは6人で、残りの7人は上院や知事選への出馬の意向を示している、いわば“積極的不出馬”で、こうしたことも共和、民主両党議員の中間選挙に対する戦意の差を表しているのかもしれない。

「沈む船からネズミが逃げる」を英語で「Rats(ネズミ) flee from sinking ship」とも言い、これをもじって「democRATS(民主党員) flee from sinking ship」と右派のサイトなどで揶揄するが、言い得て妙だろう。

民主党という「船」は、中間選挙で沈没するのだろうか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎


アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。 NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。

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