女子シングルに出場できることが決まった、フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ選手。
しかし、「潔白が認定されたわけではない」として、団体戦の表彰式は行われないという異例の事態に……。そこでめざまし8では、今後のワリエワ選手について解説しました。

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出場決定にWADA「失望」

14日、CAS(スポーツ仲裁裁判所)がワリエワ選手の個人戦への出場を決定。その決定を下した理由は3つあるといいます。

1つ目は「保護が必要とされる16歳未満である」こと。そして、2つ目は「北京で行われた検査で陽性と判断されなかった」こと。つまり、もし出られないという判断をすると、ワリエワ選手に与える損害が大きすぎるという理由です。3つ目は「選手側には非がない検体の提出の遅れで、自己弁護の手続きができなかった」こと。つまり、手続き面での問題もCASは挙げているのです。

これを受けてIOCは「出す」と決めましたが、まだ結論は出ていないとしています。
ワリエワ選手がメダルを獲得した団体戦表彰式、ワリエワ選手が3位以内になった場合の女子シングル表彰式は、大会期間中には行わず問題が解決した後に行うと発表。
また、ショートプログラムからフリースケーティングには、約24人の選手が進出しますが、今回ワリエワ選手が24位以内に入った場合には、25人までの選手がフリーに進めるように調整しているということです。

今回の決定について、IOCは出場資格におけるCAS(スポーツ仲裁裁判所)の裁定は「絶対であり尊重し従う」としていますが、WADA(世界反ドーピング機関)は、CASの裁定は受け入れるが「失望」しているとしています。

IOCの判断に感じる矛盾と違和感

公平さを保つためのドーピング検査のはずが、この判断はどう受け取られるのでしょうか。
スポーツライターの小林信也氏に話を聞きました。

スポーツライター 小林信也氏:
本来であれば疑惑があった段階で出場できない。ところが16歳未満は柔軟に対応とするというような規則、それが考慮されている。IOCはドーピングに対して厳しい姿勢を取るのか、でもやはり商業主義の中でこの選手が出ない北京オリンピックは、視聴率的にもファンの関心も下がってしまう、僕は決定が出る前にどっちを取るのだろうと思ったんですね。ところが今の状況を見ると、見事にどちらも取ってしまっているという形なんですね。

IOCの判断に感じる“矛盾”。さらに、小林氏は他にも違和感のある点を話します。

スポーツライター 小林信也氏:
1番のポイントは、この大会が始まってから結果が発表されたこと。そうすると、やはり見る人は選手に対して同情的な気持ちや、見たいという気持ちが高まりますから。色々な物を利用して、見事なリレーが行われたような気がしています。
まずはロシアの中で、そしてそれが発表されたけど、停止はしたけど本人の提訴で覆った。そこに今度はIOCが出てきて、IOCが提訴するという形ですが、よく考えるとおかしい。
IOCは、この選手はROCというぐらいでクリーンであることを前提に認めている訳ですから、残念だけれども「出場できない」という裁定をIOCが下してもいい。
そして、CASに提訴するのは、ロシア側であったりワリエワ選手自身が「私は悪いことをやってません」と提訴するなら分かるんですが、逆になっているんですね。
そういった所も、皆が彼女を出したいという方向で、それぞれが責任を少しずつ回避しながら、ルールに含まれない部分を活用して今日に至ったというような、そのような気がしますね。

悪質性あればメダル剥奪や失効の可能性も

一方、検出された禁止薬物「トリメタジジン」は、どういったものなのでしょうか。

日本アンチ・ドーピング規律パネル委員長の早川吉尚弁護士によると、「トリメタジジン」は、現在ドーピングに使われる主な薬の一つであり、元々は狭心症などの治療に使う、血管を広げ血流を改善するためのものです。ただこれを使うことで息切れがしにくくなるため、成人に比べ心肺機能が劣る若い選手にはこういった薬は有効であるといいます。

「トリメタジジン」はスポーツ界では知られている薬物なのでしょうか。

スポーツライター 小林信也氏:
ロシアの問題を告発した元所長さんのコメントが出ていましたが、ソチオリンピックの前後からこれは日常的に使われていたと。それから、テニスのシャラポワ選手が違反に問われた時は、違う種類のものですが、やはり心疾患の薬でしたね。

小林氏は、過去にも禁止薬物が使用されていた例があることを指摘しました。そして、2021年12月25日に検体を提出し、2月8日に結果が出ることは普通のことなのかという疑問に対しては……。

スポーツライター 小林信也氏:
普通、日本のJADA(日本アンチ・ドーピング機構)などでは、稼働日で10日以内には必ず検査を出すと。それで、オリンピックなどの大きな大会が控えていると分かっている時は、早めにお願いしますという形で提出されるから、10日よりも早く結果が出る。それがこのような状況というのは不思議な所ですね。

結果が出るまでの期間の長さに違和感があると言及しました。

一方で、早川吉尚弁護士によると、女子シングル出場のあとワリエワ選手に悪質性が認められた場合、「メダル剥奪」や「失効」もあり得るといいます。悪質性というのは、おそらく本人の意思も含めて、どういった形で処方されて服用したかということによるものです。

スポーツライター 小林信也氏:
非常に曖昧ですよね。16歳未満ということが一部悪用されているというか、下手をすれば16歳未満ならば、ドーピングをやっても許されるようなことにもなりかねない。
それから、16歳未満だからこそ、こういった薬を処方しながらスポーツをやるなんてということは、絶対にあってはならないことなんですよね。それは、本人が仮に分かっていたとしても、どちらかといえばコーチやドクター、トレーナーたちの関与というのはどうしても考えられるので、今回バッサリと出てはいけないと言えなかった1つの理由は、例えば誰かが意図的に食べ物に混ぜたとか、そういう可能性も否定できないので、その辺の調査がこの時期には出来ないと。そういうこともあると思います。

大きな波紋を呼んでいるドーピング疑惑。
果たして今後真相が明らかになるのでしょうか。

(「めざまし8」2月15日放送)