人工授精、体外受精、顕微授精など対象

医療機関に支払われる診療報酬について、厚生労働省は4月からの改定内容を決めた。不妊治療の保険適用や新型コロナウイルスに対応できる医療体制の構築が柱となる。

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今回の改定では、現在一部を除いて保険適用外となっている不妊治療について、「人工授精」や「体外受精」、「顕微授精」などを新たに適用対象とし、「体外受精」と「顕微授精」などは治療開始時点に女性の年齢が43歳未満であることを条件とし、最大6回までを上限にしている。

男性に年齢制限はなく、事実婚のカップルも対象となる。

新型コロナなどの感染症対応では、発生時に発熱外来を設置し、それを公表している診療所への報酬を手厚くする。また、新型コロナの対応で特例的に認められた初診からのオンライン診療は恒久化される。

40歳以上は4月を待たずに一度受診を

三田友梨佳キャスター:
産婦人科専門医で4人のお子さんを育てる母でもある稲葉可奈子先生に聞きます。不妊治療への保険適用は、実際に不妊に悩む患者さんと接している稲葉先生の目にはどのように映っていますか?

産婦人科専門医・稲葉可奈子先生:
特にこれまでの不妊治療の助成金の対象ではなかった人にとってはありがたい変化だと思います。不妊治療=自費で高い、というイメージがあったため費用面の懸念がネックとなって躊躇し、治療を先延ばししてしまうということが少なからずありました。

しかし不妊治療をするにしても、年齢とともに妊娠率は下がっていってしまうので、不妊治療は早いにこしたことはありません。そういう意味で『保険診療』となったことで、経済的、心理的なハードルが下がり、不妊治療に一歩踏み出しやすくなり、結果的に妊娠率があがるということが期待されます。もしかすると、これが不妊治療を保険適用化する最大の効果ではないかとも思います。

保険が適用されるのは4月からですが、受診してすぐ不妊治療を始められるとは限らないので、特に40歳以上の方は4月を待たずにまずは一度受診することをおすすめします。

三田キャスター:
女性の不妊、男性の不妊に対しても理解が広がってこの保険適用がお子さんを望む方への支援につながればと思いますが、一方、懸念などについてはいかがですか?

稲葉可奈子先生:
不妊治療へのハードルが下がった安心感から、いずれ不妊治療を誰でも受けることが出来るなら妊活を先延ばしにしてもいいかな、というような発想にはならないで頂きたいです。

経済的負担は軽くなっても、不妊治療は心にも体にも負担がかかり、さらに通院にも時間を割く必要があります。不妊治療しないで済むにこしたことはないので、可能であれば妊活は先延ばしにしないでいただければと思います。

三田キャスター:
子供を育てる環境を整えたりその支援も重要ですが、同時に子供を望んでいても授かることが出来ない方を支える取り組みも更に進んでいってほしいですね。

稲葉可奈子先生:
不妊治療の保険適用化が抜本的な少子化対策にはならないかと思いますが、少子化の一方で、望んでいてもなかなかお子さんに恵まれない方がたくさんいるのが今の日本です。

お子さんを望んでいる方があまり不妊治療に苦しむことなくお子さんに恵まれるための支えがより強くなることを期待しています。

三田キャスター:
不妊治療は経済的なことはもちろん、時間的、身体的、精神的にも負担は大きいものです。先が見えない不安の中、心が折れそうになりながらも頑張っている方はたくさんいます。せめて経済的負担が軽減されることで子供を望む方があきらめずに治療を続けたり、治療に踏み出すきっかけになればと思います。

(「Live News α」2月9日放送分)