大地と地球を意味する「ジオ」と、公園を意味する「パーク」を組み合わせた言葉「ジオパーク」。特有の地形や、地質と地域の暮らしの関わりを体感する地質遺産で、いわば自然博物館とも言える。

今回、その日本ジオパークの1つに長崎県下五島のエリアが「五島列島ジオパーク」として認定された。

念願のジオパーク認定「もっと楽しい島に」

五島市や新上五島町は、火山が噴出してできた地形や波風で削られた断崖などの豊かな自然に恵まれている。

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こうした特色を地域の活性化に生かそうと、地元では2017年にジオパーク協議会を立ち上げた。そして、2022年1月28日、日本ジオパーク委員会から待ちに待った「認定」の一報が届いた。

五島市・野口市太郎市長:
新規認定、ありがとうございました

五島列島ジオパーク推進協議会のメンバー:
うれしい。これがきっかけで、もっと楽しい島になれば。自分も頑張っていきたい

日本ジオパーク委員会は「五島列島を形作った断層やマグマの痕跡など多様な地形、地質遺産を有し、SNSの活用やガイドの養成など今後の展開が期待される」と評価した。

大地と海が生み出す”自然の造形美”

5つの大きな島と数々の小さな島からなる五島列島は、大陸から流れてきた砂泥の地層に加えて、火山噴火の影響を受けている。

今回の構成資産、いわゆるジオサイトの1つとなるのが奈留島の「水晶山」。名前の通り、砂岩の中に石英の鉱脈がある。

火山の噴火によって溶岩台地の平たんな地形が広がる、富江地区の「井坑(いあな)」。溶岩のトンネルで、真夏でもひんやりして快適だ。

こちらは、火山れきを積み上げて造られた「勘次ケ城(かんじがしろ)」。倭寇(わこう)のアジトとして築城されたという説があり、迷路のような石塁が180メートルにわたって広がっている。

地元ガイド:
(五島市にある)鬼岳も実は火山なんですね。こんなになだらかな感じなんですけど、実はスコリア丘といって、噴火の時に出たマグマが空から降り積もってできた

そして「鐙瀬(あぶんぜ)海岸」。鬼岳の噴火で流れ出た大量の溶岩が、変化に富んだ興味深い地形を作り出した。

高校写真部もアピール 「五島の景色を国内外へ」

協議会では2019年にもジオパーク認定を申請したが、住民の理解の広がりが十分でないなどと指摘され、見送りとなった経緯がある。

このため、2021年の日本ジオパーク委員会の現地審査を前に、県内のジオパークの先進地・島原半島のメンバーを招いて審査のリハーサルを行うなど検討を進めた。

その助言をもとに、地元出身者がガイドとして各ジオサイトで案内役を務めたり、地元高校の写真部が「ジオ」をテーマにしたフォトコンテストで連続入賞していることなどをアピールして、今回の認定を勝ち取った。

五島南高校・写真部員:
崖の割れ目の間に石が挟まっていて、それが面白いなと思って撮った写真です

本土にない景色が五島にあるおもしろさ、「五島に来ないと見られない」ということも大きな特徴だ。

五島市・野口市太郎市長:
五島市全体を長崎県外、国外の人に見てもらう意味で幅が広がった。遺産関係と連携を図りながら、ジオパークの中で五島をPRしていきたい

今回、五島列島は日本ジオパークの46番目の地域となった。離島という地理的ハンディに加え、長引くコロナ禍で観光産業などへの打撃が大きい中で届いた明るいニュース。

今後、五島市などでは「ジオパークの島」として自然や歴史、文化といった多様な地域資源を守りながら複合的に活用し、地域経済の活性化につなげたいとしている。

(テレビ長崎)

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