ネグレクトや過干渉などのさまざまな行為で、子どもの成長に悪影響を及ぼす“毒親”。

自分の親は大丈夫だと思っていても、これから毒親と接する可能性もある。例えば、結婚相手(配偶者)の親だ。基本的にはその後、ずっと関係が続くことになる。

義理ではあるが、毒親が家族の一員となる…。一般的な家庭で育っていれば、どのような距離感で接し、対応していけばいいか分からないだろう。また配偶者には、どのように伝えればいいのだろうか。

家族問題専門の心理カウンセラーとして活動する三浦くみ子さんに、適切な対応法などを聞いた。

対応の鉄則は「関係は薄く、距離を置く」

ーーこのようなケースの相談は実際に寄せられている?

はい、あります。特に、配偶者が自身の親を毒親だと認識していない場合が多いです。この場合、配偶者は親がすることを正しいと思っているので、結婚相手からしたら違和感ばかりでも、不満をぶつけると怒られてしまうことも多いです。

これからの夫婦関係に響く問題ですので、非常に難しいところです。これに関して、「夫婦関係をもつれさせず、どのように配偶者や義父母に対応したらいいか」という相談がよくあります。

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――「義父母が毒親」という相談が多い年代に、傾向はある?

30代後半から40代が多いです。つまり子ども(孫)に関する干渉ですね。子どもが小学生ぐらいまでの親の年代となります。

時代背景的には、20代などの若い世代の方が毒親率は圧倒的に高いです。しかし、義父母が毒親だとすぐには分かりませんので、子どもが生まれたくらいから少しずつ感じ始め、そして相談に来られているようです。


――配偶者の親が毒親だと感じた場合、義父母や配偶者とどう接すればいい?

まず、配偶者が自分の親を毒親だと“1.気付いている”“2.うすうす気づいている”“3.全く気付いていない”の、どのパターンになるかを見極めてください。これによって多少は変わってきますが、毒親への対応の鉄則は「関係は薄く、距離を置く」となります。そして配偶者には、パターン別で以下のように接してください。

最初は気づいている場合です。本人が親によって、自分の考えや人生に影響を与えられたことを自覚されているので、何かあるたびに「大変だったね」「あなたのご両親、ここがきついよね」というふうに、共感していくことが大事となります。「毒親っぷりがすごいね」などと思いっきり共感していくこともいいですね。そうすると夫婦として共通の認識が深まり、毒親との距離がとりやすくなっていきます。

夫婦で共感することも重要(画像はイメージ)
夫婦で共感することも重要(画像はイメージ)

次は“うすうす”の場合。やはり配偶者に「あのやり方って、大変じゃなかった?」のような感じで、聞いていくことが重要です。基本的には義父母についてではなく、配偶者本人に「あのやり方はキツくなかった?」などと、自分の育てられ方とかなり違うことを伝えていきます。

合わせて「義父母って、ずいぶん支配的じゃない?」などと、同時に義父母についても触れる感じです。“うすうす”の場合は、「毒親」という言葉を使うのはあまりお勧めしません。配偶者から「うちの親って毒親だよね…?」と言い出すまでは使わない方がいいです。


――最後の、配偶者が自身の親を毒親だと気づいていない場合は?

これが一番大変です。まず、まったく気付いてない場合は「毒親」という言葉は使わないでください。自身の親を貶されたなどと思われ、夫婦関係自体がダメになってしまう可能性もあります。

「あなたのそういう時の対応って、ご両親も同じだけどずいぶん違う気がする」などと伝え、自身の環境が特殊だということを本人に気付かせることが重要となります。

毒親とは「はぐらかす」意識で

――毒親と「関係は薄く、距離を置く」とは具体的にはどのようなこと?

例えば、会う回数をお盆と正月だけの年2回だけと決め、ここだけはしっかり行くということです。これ以外に誘われた場合は、用事があるなどと理由をつけて断っても大丈夫です。完全に拒絶することは難しいと思うので、「はぐらかす」イメージです。

いろんなパターンがあり、他には義父母から電話やメールが自分に毎日のように来る家庭もあります。そのような場合は「連絡は配偶者(毒親の子ども)にしてください」とお願いして、もし自分の方にあっても、スルーしても問題ありません。

義父母から頻繁に連絡が来る場合は?(画像はイメージ)
義父母から頻繁に連絡が来る場合は?(画像はイメージ)

――距離を置こうとしても、どんどん連絡がくる場合は?

最終的には「なるべく関わらない」「無視」して、諦めさせるしかないと思います。自分は正しいと思っている毒親に話し合いは通用しません。また、たまに優しい対応をしてしまうと、まだチャンスがあると思われてしまいます。

もし毎日のように連絡が来る場合、急にやめることにうしろめたさがあれば、「少し忙しいので」などと理由をつけて断り、それが3日に1回、1週間に1回となり、だんだんとスパンを空けていくという方法もあります。


――毒親の義実家に行かなければいけない時もある。この時はどうしたらいい?

子どもを連れていくことを想定していると思いますが、義実家に行っても、まずは自分の心を守ることが大切です。そこから体調を崩してしまう方が本当に多いです。

配偶者の方にとっては実家ということもあり平気だと思うので、子どもを任せて自分は義実家の周辺を散歩するのもいいでしょう。または「何か買い物はありませんか?」などと用事を作って、なるべく外出する時間を作ってください。泊まることもなるべく避け、少しでも義父母と接する時間を減らすように心がけてください。

(画像はイメージ)
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――義父母と同居している場合は?

東京などの都会ですと二世帯住宅も多いようですが、田舎では義実家の家にそのまま入るというパターンもあります。こちらは義父母との距離を置くのが難しくなるのでとても大変です。配偶者を教育することから始め、少しずつ自分の盾になってもらうといいでしょう。

また、子ども(孫)やご自身が具合悪い時などに張り切られて、嫌な思いをする場合も多いです。体調が悪くても「みんな元気です」とウソをつくことも、自分と自分の家族を守る為のアリの対応です。

子育てはまず夫婦で方針を決めて

――夫の親と妻の親、どちらに毒親が多いの傾向はある?

ほとんど変わらないと思いますが、男性(夫)の方が「自分の親は毒親かもしれない」と気付きにくいことはあると思います。男性の場合は毒親の過保護・過干渉によって、子どもの頃から進学や就職などで成功体験をしていることも多いからです。「親に世話になったおかげで、今の自分がある」と考え、女性よりも自分の親が毒親であることを認めにくいのではないでしょうか?


――最後に、毒親が自分達の子ども(孫)に積極的に関わろうとしてきた場合は?

ケースバイケースではありますが、まずは夫婦で「自分たちはどのように子育てをしていきたいのか?」をしっかり話し合ってください。方針をまず固め、そして毒親に伝えてください。

そして、例えば「習い事をやらせなさい」「お金は出すから○○を習わせなさい」と言われても、ここは子どもの将来に関わることですので、自分達の方針があると断ってもいいと思います。

(画像はイメージ)
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義実家と全く交流をしないということは難しい。そして、接する機会が多くなるほど、たしかに心理的な負担は大きくなっていく。もし今この問題で困っているのであれば、三浦さんのアドバイスにあるように、まずは「関係は薄く、距離を置く」を意識してほしい。

 

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。