仕事の合間や友達との待ち合わせなどで利用する喫茶店。そんな喫茶店について、東京商工リサーチの調査で、昨年の休廃業・解散が過去最多を記録したことが分かった。
2021年の「喫茶店」の休廃業・解散は100件(前年比26.5%増)で、調査を開始した2000年以降、最多だった2018年の84件を大幅に上回った。
大手チェーンやコンビニコーヒーとの競争、輸入コーヒー豆の高騰に加え、コロナ禍で生活様式が変化し、商談や時間つぶし、勉強などの需要も減っていることから、先行きが見えず、債務超過に転落する前に廃業を決断したとみられるという。

一方、2021年の「喫茶店」の倒産は61件(前年比8.9%減)にとどまり、2020年の67件に比べて6件減った。こちらは、コロナ関連の休業補償金や持続化給付金、ゼロ・ゼロ融資などの資金繰り支援が下支えしたとみられる。
大手チェーンでは明暗分かれる
また大手チェーンの2021年の業績をみてみると、こちらは明暗が分かれた。
「コメダ珈琲店」を展開するコメダホールディングスは、2021年3月~11月の連結営業利益が前年同期比36.8%増の58億4700万円。一方で「ドトール・コーヒー」「サンマルクカフェ」「喫茶室ルノアール」は、いずれも苦戦していたのだ。
「ドトール・コーヒー」やレストランを運営するドトール・日レスホールディングスの2021年3月~11月の連結営業利益は9億2100万円の赤字。「サンマルクカフェ」などを運営するサンマルクホールディングスの2021年4月~9月の連結営業利益は27億900万円の赤字。「喫茶室ルノアール」を運営する銀座ルノアールの2021年4月~9月の連結営業利益は6億6400万円の赤字だった。
コロナ禍の長期化で債務超過になる前に廃業を選択
コロナ禍などの状況は同じだったと思うが、このように大手チェーンで明暗が分かれたのは、なぜなのだろうか? また、2022年、喫茶店の休廃業や解散、倒産はどうなるのか? 東京商工リサーチの担当者に話を聞いた。
――喫茶店の休廃業・解散、倒産の件数は、全国の喫茶店が対象?
全国の喫茶店です。厳密に言うと、全国の喫茶店を主な業務としている企業の件数です。
――喫茶店の休廃業・解散、これまでの最多は2018年。この理由は?
大手チェーンとの競争やコンビニコーヒー、缶コーヒーの進化などで、業績の回復が見通せない企業が多かったのだと思います。
――なぜ2021年に、喫茶店の休廃業と解散が最多となった?
元々あった理由に加えて、コロナ禍が長期化し、債務超過になる前に廃業を選択したとみています。
――倒産が61件にとどまった理由は?
休業補償金やゼロ・ゼロ融資など、コロナ関連の資金繰り支援策が効果的だったためと考えています。

――喫茶店はいわゆる協力金はもらえたの?
酒類を提供していたのか、営業時間などで条件は様々でしょうが、時短営業に応じた喫茶店は協力金を申請できるようです。
2022年は廃業・倒産ともに増加する可能性が高い
――喫茶店は大手チェーンで明暗が分かれている。これはなぜ?
たとえば、会社員や外出した人向けの喫茶店は、外出自粛や在宅勤務などの影響を受けたとみています。
――コメダホールディングスは黒字。この理由としてはどのようなことが考えられる?
限定メニューやSNSでの効果で、売上が伸びたようです。
――コロナ禍で喫茶店が生き残っていくために必要なことは?
コロナ禍で生活様式が大きく変わってきております。これまでの常識が通じないことも出てきており、変化への対応力も問われています。
――変化への対応力とは、具体的には何?
会社員の来店数が減っていれば、主婦や学生などターゲットを広げるためのメニュー開発など、です。

――2022年、喫茶店の休廃業や解散、倒産はどうなるとみている?
コロナ禍が約2年と長期化し、経営体力が落ちている喫茶店も多いとみられます。また、ゼロ・ゼロ融資などで過剰債務の解消が見込めない企業が増え、2022年は2021年よりも、廃業・倒産ともに増加する可能性が高いと考えています。
「コメダ珈琲店」が業績好調の要因
大手チェーンの明暗が分かれる中、業績が好調だったのは「コメダ珈琲店」を展開するコメダホールディングスだ。業績好調の要因は何なのか?
コメダホールディングスの担当者に話を聞いた。
――2021年3月~11月の連結営業利益が前年同期比36.8%増。この要因としてはどのようなことが考えられる?
前年同期においては、特に2020年4月に発令された緊急事態宣言により、弊社の業績も大きな影響を受けました。
お客様の安全を第一に、新型コロナウイルス感染症の感染防止策を徹底して営業を続けながら、様々なキャンペーンや季節限定商品の発売などの施策を実施することで、多くのお客様に戻ってきていただくことができました。
そういった弊社の取り組みをテレビ番組で取り上げていただいた反響も大きく、前年同期比36.8%増という好調な業績となりました。

――特に好評だった取り組みは?
「コメ牛サイズアップ無料キャンペーン」、「シロノワール ぜいたくピスタチオ」、「大豆ハムカツバーガー」、季節限定バーガー「グラクロ」が特に好評で、話題性がありました。

――2021年12月以降の売上は?
2021年12月の既存店の卸売売上は100%を超えました。しかし、2022年1月のオミクロン株の感染拡大により、「まん延防止等重点措置」が適用される地域が増え、今後の影響については見通せない部分も出てまいりました。このような状況下ではありますが、弊社では引き続き、お客様の満足度を高める活動を行ってまいります。
コロナ禍の長期化で経営環境が厳しさを増している喫茶店。人々の生活様式が大きく変わる中、生き残っていくためには、変化に対応する柔軟さや客を呼び込む発信力が求められているようだ。