「Suica」のビッグデータ「駅カルテ」とは
JR東日本の交通系IC「Suica」。これまで首都圏などおよそ600カ所の駅で、乗客らが利用したデータは、JR東日本は、社内で活用していた他、一部の自治体にも提供されていた。そして今後は、「駅カルテ」と名付け、民間企業や広く自治体に販売することが検討されているという。
「駅カルテ」は、個人が特定されないビッグデータだ。利用者を年代(10歳単位)・性別で区切り、平日・休日にそれぞれ、どれぐらいSuicaを利用しているかの平均値が出される。このデータをもとに、駅の利用者の属性や状況などを把握、分析することができる。

駅ビル・駅ナカの出店に活用 大規模イベントの混雑予想にも
JR東日本は、すでにこのデータを活用し、例えば、駅ビルや駅ナカにどういう店を出店するか、店舗の配置をどうするかなど、ニーズに合ったサービス提供に役立てている。
また、スタジアムやイベントホールなど、大勢が集まる施設がある最寄り駅では、イベントの終了後の混雑の分析に活用。いつ頃、臨時列車を増発するのがよいか、どちらの方向に利用者が多いのかなどを見極め、混雑緩和にもつなげているという。

今回、「駅カルテ」を広く販売するのには、街づくりや沿線、地域の活性化を進める狙いがある。データを活用すれば、不動産開発の需要分析や、店舗の営業時間を決める際など、ビジネスの参考にもなるという。
過去に「無断提供」で批判も 今後は・・・
一方、JR東日本には、Suicaのデータをめぐって、苦い経験があった。2013年、利用者に断りなくSuicaのデータを大手電機メーカーに提供し、大きな批判を受けた。
このため今回は、個人が特定されないように統計処理を行い、厳格なデータ管理を行うほか、希望しない利用者向けに、「除外要望窓口」をホームページに設置して対応。その上で、どのような目的で使用したかについてもホームページなどで例示するという。

累計8800万枚「Suica」データで地域活性化は
JR東日本は、「プライバシー保護に配慮しながら、Suicaの情報を社会に役立つよう活用したい」としている。具体的な販売時期は決まっていないが、JR東日本によると、交通系ICカードの情報を統計化して、販売することは国内で初めてだという。
これまで発行されたSuicaは、およそ8800万枚にのぼる。個人情報やプライバシーに配慮することは言うまでもないが、貴重なビッグデータの活用により、地域活性化や、私たちの生活の”暮らしやすさ”につながることを期待したい。(画像は一部イメージ)

(フジテレビ社会部・国交省担当 滝澤教子)