冬でも家全体が20度以上の暖かさ…「太陽熱温水器」でぽかぽか

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愛知・知立市のソーラーシステムメーカーから、「屋根の上に載せて太陽の熱で水を温める、太陽熱温水器は愛知県発祥ですが、あまり知られていません。地元が生んだ技術をもっと知ってもらいたいです」と投稿があった。

太陽の熱でお湯を作る「太陽熱温水器」は、かつて一大ブームを巻き起こした技術だ。しかし現在は「太陽光発電」に取って代わられ、あまり見かけなくなった。

役割を終えたかと思いきや、調べてみるとその意外な実力が、脱炭素の“切り札”としての可能性を秘めていることが分かった。

三重・桑名市の加藤さん一家。3年半前に新築したという家に入ってまず感じるのが、その“暖かさ”だ。

妻:
(冬場でも)裸足。裸足の方が気持ちがいいので

1階はリビング・ダイニングとキッチン、子供の勉強スペースや書斎などがあり、ほぼすべての場所に床暖房が入っている。さらに…

加藤勇祐さん:
洗面は両方ともお湯が出るのと、あとお風呂。下のシステムで(温水と冷水を)ブレンドして調整した温度でここに出てくる

どの蛇口からも、すぐにお湯が。この暖房や給湯のエネルギー源は、“太陽の熱”。太陽といっても、屋根などに載せたソーラーパネルで電気を作る「太陽光発電」ではない。

この家では、屋根に載る“集熱器”に太陽の熱を集め、水や不凍液を温めることでお湯を作っている。温められた不凍液をパイプで床下に通して床暖房に。蛇口からは太陽の熱で作ったお湯が出る。

加藤勇祐さん:
下で暖まった温度が上に上がるので、自然に2階にも暖かい空気が行って、家全体が暖かくなっている

床暖房の他に使う暖房器具はない。この日の外の気温は約13度だったが、部屋の中は27度以上と夏のような暖かさ。ちなみに、翌朝6時半は外の気温は約5度だったが、部屋の中は約23度とポカポカだ。

妻:
年間通して、光熱費がフラットでいけている感じ。何もしなくても家全体が暖かいので、どこに行っても寒くない付加価値があります

オイルショックで大ブームも…ガス給湯器などの普及で下火に

太陽の熱でお湯を作る「太陽熱温水器」は、愛知県の三河地方が発祥。全国で10社ほどある温水器メーカーの一つで、今回投稿をくれたチリウヒーターの刈谷工場を訪ねた。

チリウヒーターの社長(81):
これが一般的な自然循環型の「太陽熱温水器」。タンクの中の水が下りてきます。薄いステンレスなので、日が当たるとすぐに温度が上がります。温かい水の方が冷たい水よりも軽いので、温かい水は上へ上へと

太陽の熱で温められた水が上へと上がると、今度は冷たい水が下へ。その水がまた太陽熱で温められ上へと循環する仕組み。そもそも三河発の温水器は、“素朴なタンク”から始まったという。

同・社長:
木で箱の上にガラスをのせて、その中に水を入れていくのが始まり

「太陽熱温水器」の“元祖”といわれる「天日タンク」は、戦後間もない1940年代に、愛知県の農業改良普及員だった安城市の山本祐夫さんが開発した。

ガラスの蓋をかぶせた四角い木製の桶で、中の水を太陽の熱で温めてお風呂のお湯として利用。シンプルな作りだが、基本的な役割は今と同じだ。

当時、農村ではお風呂を沸かすために“わら”や“まき”を燃やすなどしていた。
しかし、天日タンクを使えば楽にお湯が沸かせると、三河地方を中心に普及が進み、1950年代には愛知県内での設置台数が3万台を超えた。
さらに…

同・社長:
1973年と1979年の石油ショック。これからはもう化石燃料が使えないよと(太陽熱温水器は)大ブーム

オイルショックによる大ブームで、大手企業も参入。1980年には新規設置台数が80万台に達し、都市部でも屋根に温水器を載せた家が当たり前の光景となった。

しかしその後、石油の安定供給に加えて、多くの家庭でガス給湯器などが普及。1980年のピークを境に大手企業も続々と撤退し、設定台数は減少の一途をたどった。

一方で国内に広まったのが、「太陽光発電」。その普及状況は太陽熱とは対照的で、この10年で急成長し、今や日本を代表する再生可能エネルギーとなっている。
チリウヒーターの社長は、人々の意識から「太陽熱でお湯を沸かす」という発想自体がなくなってしまったと話す。

熱を熱のまま使う“太陽熱” 風呂好きの日本人にピッタリ

時代遅れになった感のある「太陽熱温水器」だが、環境の専門家は「今の時代にこそ果たす役割がある」と話す。

名城大学理工学部の吉永美香教授:
給湯は高々40~50度の温水。電気、ガス、他にもっと使い手のあるエネルギーを燃やして、そのぐらいの温水を作るよりも、熱は熱のまま使える再生可能エネルギー“太陽熱”が合理的

太陽エネルギーに詳しい名城大学理工学部の吉永美香教授は、熱を熱のまま使う“太陽熱”は、合理的かつ効率的な再生可能エネルギーと指摘する。

特に、日本でこそ“太陽熱”は注目されるべきとして吉永教授が挙げるのが、“風呂好き”という国民性。日本の家庭で消費されるエネルギーの中で最も多いのは、全体の33.9パーセントを占める「動力・照明」。それに続くのが、28.8パーセントの「給湯」だ。その割合は他の国の約2倍にあたり、これは“入浴の習慣”と大きく関係しているという。

吉永美香教授:
夏に日射があって、午前中だけで(温水器で)お湯が沸きましたと。今日は昼風呂に入ろうと。午後にまたお湯が沸いたら、夜も入るかと。そういうプチ贅沢ができたりもします

カーボンニュートラル実現へ…“太陽熱”利用は率先して導入すべき

しかし、世界的にみると中国を筆頭にトルコやアメリカ、ドイツなどが“太陽熱”を積極的に導入しているのに対し、日本は“圏外”となっているのが現状だ。

世界が気候変動問題に対し、脱炭素化の動きを加速させている中、日本も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するため、2030年度には2013年度比で46パーセント削減する目標を掲げている。

吉永美香教授:
カーボンニュートラルにするには、大量に導入できて、確実にCO2が減る信頼がおける技術という意味で、太陽熱利用はすごくいい。故障にも対応が簡単ですし、率先して入れるべき装置

脱炭素社会に向けた有効な切り札の一つになりえる「太陽熱温水器」。“古くて新しい”その技術が、再び見直されるときが来ている。

(東海テレビ)

記事 2083 東海テレビ

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