海岸に“氷の宝石”が流れ着いた。そう言いたくなる光景が注目を集めている。

Twitterユーザーのりなさん(@tnr_1111)が投稿したのは、海岸に流れ着いた氷を捉えた動画。15秒の映像には、数えきれないほどの氷塊が見渡すかぎりに広がっているではないか。

数えきれないほどの氷塊(提供:りなさん)
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そして印象的なのが、氷のひとつひとつが透明で角が取れ、円形や楕円形などにもなっていること。それらが太陽に照らされて輝く姿は美しく、まさしく“氷の宝石”なのだ。

太陽の光が透けて見える(提供:りなさん)

景観と非日常感が話題となり、Twitterでは「めっちゃ綺麗」「凄い!幻想的〜」などの反応が続々。8万3000以上のいいねがあり、動画は128万回も再生されている。(1月21日時点)

ひとつひとつが“氷の宝石”だ(提供:りなさん)

りなさんによると、この光景は北海道・十勝地方の豊頃町にある「大津海岸」付近で撮影したという。海で見られる氷には「流氷」があるが、それとは全く違うようだ。

結氷した川が打ち上げられたもの

豊頃町によると、透明な氷は「ジュエリーアイス」と呼ばれ、観光資源でもあるという。その美しさはどのようにして生まれるのか、担当者に聞いた。


――ジュエリーアイスはどのように生まれる?

豊頃町で太平洋に注ぐ十勝川が冬の厳しい寒さによって結氷し、その氷が潮の満ち引きで破壊され、手のひらサイズから畳1枚分ほどのものまで大小さまざまな塊となって河口から流出し、太平洋を漂ったのちに、時化や風向きによって大津海岸に打ち上げられたものです。


――透明で丸いのはなぜ?昔からある光景?

結氷した氷が太平洋に流出し、波にもまれているうちに角が取れて丸くなり、さまざまな形になっています。この自然現象は、昔からあるものです。

ジュエリーアイスの正体は凍った川だった(提供:豊頃町)

――ジュエリーアイスの名前の由来を教えて。

写真愛好家たちの間で話題になり、2012年に帯広市で英語学校を経営する浦島久さん(豊頃町出身)が「ジュエリーアイス」と命名しました。

透明度が高く、いろいろな表情を見せる

――ジュエリーアイスはどんな環境で見られる?

例年、1月下旬から3月上旬に大津海岸で見られる自然現象で、寒さが厳しくなり、風、波の高さ、風向きなど様々な気象条件がそろわなければ見られません。ジュエリーアイスは川の氷なので塩分を含んでおらず、流氷とは違って透明度が高いのが特徴です。川の氷なので冬期間、川の河口付近ではこのような現象がみられると思います。


――気温が高かったりすると見られないの?

氷点下が続き、川が凍らなければ見られません。気温だけではなく、雪が降ったりすると雪に埋もれて見えなくなったり、高波で一度漂着したジュエリーアイスも沖に流される場合があります。

寒いため注意も必要(豊頃町公式サイトより)

――ジュエリーアイスの見どころを教えて。

透明度が高いので、太陽の光を浴びて時間帯によってさまざまな色に輝くのが特徴で、早朝、日の出前はブルー系から日が昇ると黄金、日中はクリスタル(シルバー)、夕方はオレンジなど寒さが続けば色んな表情を見せてくれるので、一日中楽しめます。

早朝の特に寒さが厳しい時間帯は、けあらしも発生することから神秘的な空間になります。寒さが苦手な方は、日中や夕方の時間帯をお勧めします。

朝焼けに照らされた姿(提供:豊頃町)

――美しい写真や動画を撮影するポイントは?

日の光を浴びて様々な表情を見せてくれるので、晴れの日がおすすめです。


地元住民や安全面には配慮してほしい

――見学時の注意点や心がけてほしいことは?

大津海岸まで行くためには、大津地区の住宅街を通ります。車で来られる方は指定の駐車場に停めて下さい。停車中は、大気汚染や騒音を防ぐためエンジンをお切りください。また、乗り降りの際、車のドアの開閉はお静かにお願いします。住宅地が近接しているため、地域住民へご配慮をお願いします

見学の際は気温がマイナス20度以下になることもあります。しっかりとした防寒対策が必要となります。耐寒性の高い帽子、手袋でお越しください。撮影に夢中になりすぎて波をかぶったり、荷物を波にさらわれたりする方もいるのでご注意下さい。

見学時の禁止事項と注意点(豊頃町サイトより)

――大津海岸に向かうためのアクセス方法は?

大津海岸へは公共の交通機関で行くことができません。自家用車、レンタカーやタクシー、もしくは帯広市からの民間企業のガイドツアーなどをご利用いただくことをおすすめいたします。

大津海岸に出る手前に「ジュエリーハウス(休憩スペース・トイレ)」施設があります。休憩スペースでは写真も展示してあります。観賞で体が冷えた後は暖をとって、ゆっくり休んでいただけます。

大津地区には、小さな飲食店が1件ありますが、コンビニなどの小売店はございません。一番近いコンビニは約20キロ程度離れたところにセイコーマート(役場前店)があります。


――話題を集めていることの受け止めを聞かせて。

メディアへの取り上げ、写真家や観光客のSNSなどの発信により徐々に訪れる人が増えてきています。海外からも注目されており、2018年は6600人、2019年には13800人、2020年では16800人(独自カウント)の観光客が訪れております。

しかし、見学に行くには大津地区の住宅地を通過しなければならないことから、豊頃町は地域住民とのトラブルをさけるために駐車場の整備や誘導看板・注意喚起看板の設置など受け入れ整備を行っています。(※観光客が日の出の時間帯に集中し、早朝の一般乗用車、観光バスのエンジン音やドアの開閉音、路上での話し声がうるさいなどの苦情も出ており、特にジュエリーアイスが打ち上げられた週末は、観光客の路上駐車が多く、地域住民宅の私有地に車を停めたり、コミュニティバスの運行や除雪にも影響が出ています)

仮設で設置した休憩所やトイレも2020年には「ジュエリーハウス」として新設し、安心して観光ができるよう整備しております。町としては大津地域住民の方の生活を第一に考え、地域住民と共に盛り上げ、冬の北海道を代表する観光資源になるように努めて参りたいと思います。


宝石のような氷は、凍った川が海に流れ、海岸に打ち上げられることで生まれていた。投稿者のりなさんも豊頃町の担当者も、地域住民や環境保全への配慮が第一とのことだったので、もしも見学に訪れる時はその点を忘れないようにしてほしい。