コロナ禍でもコミュニケーション総量が「変わらない」は半数以上

リクルート内の、人と組織に関する研究機関「リクルートワークス研究所」は、コロナ禍をきっかけに広がったリモートワークなどの新しい働き方が、職場の“集まり方”にどのような影響を及ぼしたのか、実態を調査。その結果を12月2日に公開した。

この調査は、三大都市圏にある従業員50名以上の企業で働くオフィスワーカー(職種が「管理的職業、専門的・技術的職業、事務的職業、営業職業」のいわゆるデスクワーカー20歳~69 歳)を対象に、2021年10月14日~18日に実施された。

調査結果を見てみると、コミュニケーションの総量については、「変わらない」と回答したのは53.5%で半数以上だった。

コロナ禍前と比べて「減少」と回答したのは37.6%(「減った9.2%」「やや減った 28.4%」)。
「減少」の割合がもっとも高いのは「他部署」とのコミュニケーションで35.9%(「減った12.1%」「やや減った23.8%」)だった。

コロナ禍前からのコミュニケーション量の変化(提供:リクルート)
コロナ禍前からのコミュニケーション量の変化(提供:リクルート)
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職場における会議や会話の機会の中で減少したものを尋ねたところ、コロナ禍で開催が難しかった「ランチや飲み会」が最も多く71.0%、つづいて「研修やイベント」が61.1%だった。

また、「仕事とは関係のない雑談」や「他部署や社外の人との新たな出会い」、「たまたま出会ったり、予定していなかった人との情報交換」「職場で偶然聞こえてきた会話や、自然に受け取った情報をもとに仕事をする経験」はそれぞれ4割以上だった。

減少した集まり(提供:リクルート)
減少した集まり(提供:リクルート)

“意見交換のための会議”は「対面派」と「どちらも同じ派」がともに約4割

「有意義な集まり方」について目的別にみてみると、“情報伝達のための会議”について「対面のほうが有意義」と回答したのは32.5%、「オンラインでも対面でも同じ」と回答した人は43.2%だった。

一方で、“ブレーンストーミング(ブレスト)や意見交換のための会議”については、「対面のほうが有意義」と回答したのは38.5%、「オンラインでも対面でも同じ」は38.2%と、回答がほぼ同率となり、目的によって有意義と感じる集まり方が違うことがわかった。

会議・会話の目的別、有意義な集まり方(提供:リクルート)
会議・会話の目的別、有意義な集まり方(提供:リクルート)

回答者の役職ごとに集計すると、特に「ブレストや意見交換のための会議」についての回答傾向が異なり、管理職では「対面のほうがオンラインよりも有意義な場になる」と回答した割合が44.2%で最も高かったのに対し、一般では「オンラインでも対面でも同じ」と回答した割合がもっとも高く、37.4%だった。

「ブレストや意見交換のための会議」の有意義な集まり方(提供:リクルート)
「ブレストや意見交換のための会議」の有意義な集まり方(提供:リクルート)

また、職場のコミュニケーションが変化したことによる中長期的な課題の上位は「1位:仕事のノウハウが継承されないこと」、「2位:職場の一体感やチームワークが弱くなること」、「3位:離職者ややる気のない人がでてくること」だった。

中長期的な課題(提供:リクルート)
中長期的な課題(提供:リクルート)

“ブレストや意見交換のための会議”について、「対面のほうが有意義」と「オンラインでも対面でも同じ」という回答はほぼ同率だったが、テレワークでブレストを効果的に行うためにはどうすればよいのか?

また、中長期的な課題の上位3つ「仕事のノウハウが継承されないこと」「職場の一体感やチームワークが弱くなること」「離職者ややる気のない人がでてくる」を解消するためには、どうすればよいのか?

リクルートワークス研究所の辰巳哲子さんに話を聞いた。

「ハイブリッドな働き方が望まれている」

――今回の調査結果をどのように受け止めている?

コロナ禍で働く時間だけでなく、働く場所も多様になりました。テレワークが進み、個人の働き方は変化し、それと同時に、職場のコミュニケーションの在り方は大きく変化しました。

しかし、コミュニケーションの総量が「変わらない」と回答したのは、53.5%と半数以上でした。対面のコミュニケーションに代わる方法として、テレワークの活用が進んだことが考えられます。

コミュニケーションの「減少」がもっとも大きいのは「他部署とのコミュニケーション」であり、仕事での必要性があるなどの目的がない人とのコミュニケーションは、テレワーク環境下では新たな工夫をしないと実現が難しかったことが分かります。

このように以前にも増して、集まり方の工夫が必要になったにも関わらず、目的によって場を変えることができているのは、28.5%に過ぎないことが明らかになりました。

テレワークが進み、働きやすくなった人も増えましたが、感染者数が落ち着くと同時に、コロナ禍前の状態に戻り、まだ、「なんとなく(リアルで)集まっている」ケースもあるのではないでしょうか。勤務時間や勤務場所を決めることは、多様な個人の働きを制限してしまう可能性があります。

テレワークを希望する人のうち、テレワークで働きたい日数は2日から3日と回答しています。
つまり、毎日テレワークで、ということではなく、ハイブリッドが望まれていることが分かります。

調査では、集まる目的別にどの集まり方がよいか、尋ねていますが、情報伝達を目的とした会議ならテレワークが有意義だ、と考えています。

“伝達のための会議”はオンラインで、ブレーンストーミングなど“創発的なコミュニケーション”は対面でといったように、複数のやり方を目的にあわせて組み合わせることが必要なのではないでしょうか。

イメージ(テレワーク)
イメージ(テレワーク)

ブレストで大切なのは「発散」と「収束」を分けること

――“創発的なコミュニケーション”であるブレストをテレワークで効果的に行うためにはどうすればよい?

ブレーンストーミングや意見交換についても、上手く行うことができている人とそうではない人がいるようです。
ここでは工夫している企業の事例を基に考えてみましょう。

第1に、場に参加する際のコミュニケーションのルールを決めることが大事です。

ブレーンストーミングの場合、テーマや目的を決めて、その場のルールを共有します。ブレーンストーミングは発散型の思考です。

例えば、新商品のアイデア出しをするためのブレーンストーミングをするなら、その日のミーティングでは徹底的に「発散」することを心がけます。
チーム全員が広範囲に渡って洞察し、新しいアイデアを生み出すことに集中します。

発散のために、ブレーンストーミングにはルールがあります。
「良し悪しの判断をしない」、「斬新なアイデアを奨励する」、「他の人のアイデアにのっかる」「話題に集中する」「一度に一つの会話をする」「アイデアの量にこだわる」といったものですが、大事なのはそうした場のルールを会議の前に共有しておくことです。

発散のための場のルールを共有しなかった場合、発散を目的とした場なのに、収束させようとすると、「無理な決めつけ」が起こり、せっかくアイデアの量を増やすために行っているブレーンストーミングが活かされません。

ブレーンストーミングは発散型の思考ですが、一方で、具体的な企画に仕上げていくには「収束」も必要です。
チームでアイデアを洗練させ、情報を統合することで焦点を絞ります。「収束」を目的とした場で、発散的な議論を持ち込むと議論がまとまりません。

大切なのは、今日は「発散の日」、今日は「収束の日」という形で場を分けることです。

イメージ(テレワーク)
イメージ(テレワーク)

3つの「中長期的な課題」の解消法

――中長期的な課題の上位3つ「仕事のノウハウが継承されないこと」「職場の一体感やチームワークが弱くなること」「離職者ややる気のない人がでてくる」について。これらの課題を解消するためには、どうすればよい?

これら3つの課題に「はい」と回答した人「いいえ」と回答した人とで、どのようなコミュニケーション上の工夫の差がみられるのか、追加分析を行いました。

その結果、統計的に有意な差がみられた工夫のうち、差が大きく、3つの課題に共通していた「工夫」は、「職場のメンバー同士が親睦を深めるための飲み会やイベントを行う」「研修やイベントなど、職場全体で同じ経験をすることを大切にしている(推奨している)」「オンライン上で雑談や情報交換ができる場を、意図的に設定している」というものでした。

つまり、これらの課題を解消するために、職場外でのメンバー同士の親睦を深めたり、研修など職場全体で同じ体験をしたり、オンライン上で雑談ができる場をあえて設定したり、ということが効果的だと言えます。

もちろん、所属している企業の組織文化によってやり方は変わってくるでしょう。自社独自のやり方を検討することが必要だと思います。
 

リクルートワークス研究所によると、ブレストをテレワークで効果的に行うためには「発散の日」と「収束の日」を分けるのが大事だという。
コロナ禍でブレストが上手くいっていないと感じている方は一度試してみてはいかがだろうか。