昨年に続き2021年もコロナ禍の1年となり、緊急事態宣言が発令されていた期間も長かった。

外出自粛が続き、仕事はテレワークに移行し、大学などはオンライン授業がメインとなったという人も多かったことだろう。

このようなリアルな場での交流が減ったことでひとりの時間が増え、以前より“孤独”を感じるようになった人もいるかもしれない。

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そのような中で、孤独対策・自殺対策に取り組んでいるのが2020年3月に設立された特定NPO法人「あなたのいばしょ」だ。

主な活動は、利用者の相談にチャット形式でボランティア相談員が365日で対応。世界中にいる日本人相談員を採用し、時差を利用することで24時間対応を実現させた。相談は無料で誰でも利用可能だが、10代〜20代の相談も多いという。

24時間いつでもチャットが相談できる(画像提供:特定NPO法人あなたのいばしょ)
24時間いつでもチャットが相談できる(画像提供:特定NPO法人あなたのいばしょ)

このような相談の仕組みを作ったのは、頼りたくても頼る人がいないといった「望まない孤独」を抱える人の受け皿になるためだ。現在では件数も増えており、1日に約700件の相談が寄せられている。

実際、相談者の多くは若者のようだが、例えば大学生も“孤独”を抱えている人が多いのだろうか? 特に現在の大学2年生はコロナ禍ということもあり、入学式が中止になるなど新しい友達などに出会う機会が少ない大学生活を送っているようにも思う。

大学生の孤独の実情や、これからの孤独対策について「あなたのいばしょ」理事長で、現役大学生でもある大空幸星さんに話を聞いた。

孤独は人との関係が充足していない状態

――そもそもとして「孤独(望まない孤独)」とは何?なぜ感じてしまう?

孤独とは、人との関係において量的にも質的にも充足していない状態です。もし自身が何か問題を抱えたとき、誰かに頼ることができるという環境にあれば、孤独は深まっていかないでしょう。

しかし、残念ながら学生の全員がこのような状況にいるわけではありません。特にコロナ禍では、“人との繋がり”を作る機会が少なく、本来は抱えなくても済む孤独を抱えている学生もいるように感じています。

例えば大学1、2年生であれば、入学式が中止になるなど、入学してから学校に行くことがほとんどなく、そもそも人と出会う場面がありませんでした。友達を作る機会すら奪われてしまったっていう現状があると思います。


――例えばオンライン授業などが現在も続いている大学もあると思う。このような非対面の状況があることで、孤独を抱えたりするの?

チャット相談には、大学生だけではなく短大生や大学院生などの高等教育機関に所属する人からも、相談が毎日寄せられています。

この学生も含めてとなりますが、「オンライン授業が影響」というだけの話ではないと考えています。先ほどお話ししましたが、そもそも孤独を感じてしまうのは、困ったときなどに周囲に頼れる人が少ないことにあります。

ただ、頼れる人がいないという状況で、さらに非対面のオンライン授業が続いたりすると、孤独を深めやすくなる傾向はあります。孤独を感じる要因や背景は一つではなく、いろいろな要因が複合的かつ連鎖的に積み重なっているのです。

コロナ禍でオンライン授業も多い(画像はイメージ)
コロナ禍でオンライン授業も多い(画像はイメージ)

――孤独を感じるのは、3、4年生に比べて、やはり1、2年生に多い?

データをしっかり見てみないと正確には分かりませんが、“つながりを作る機会”が少なかったので、そういう傾向にあるでしょう。しかし、例えば3年生は就職活動において、さらに上の世代に比べて不安を抱えているでしょうし、また経済的な悩みがある人もいるかもしれません。

そういう状況を勘案していくと、現在の3、4年生もいろいろ大変だと思います。入学時はコロナ禍ではなかったのでいわゆる一般的な大学生活を送って繋がりを持っていたとしても、現在は就職や経済的などいろんな問題があって苦しい状況にある人もいると思います。

いろいろなことが積み重なって、孤独を抱えることもあると思います。

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1年前には孤独対策を政府に提言

――1年前には孤独対策について政府に提言した。その理由は?

1番の目的は相談窓口の逼迫を防ぐということです。現在は利用者の1〜2割しか対応できていない窓口も多く、どんどん相談だけが増え続けている状況があります。しかし、相談員を増やすことは容易でありません。

また現段階で窓口が逼迫していますが、そもそも相談にきていない人も多い。このような潜在的なニーズもある中で供給をいくら増やしても足りないことでしょう。

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そこで、この相談窓口のニーズをそもそも産まないようにするための社会の仕組みを作る必要があると考えました。「孤独」をあらゆる社会問題の一つの根源に位置付け、ここの源流への対処を行うことで50年後や100年後の日本のセーフティーネットの逼迫を防ごうというアプローチです。

いま孤独を抱えている人への支援は相談窓口などでもちろん必要ですが、本質は「いかに孤独を防いでいくのか?」ということにあります。そして、孤独は全ての人が人生のどこかで必ず感じるもので、そのときに深刻化や重症化させないことが重要です。このような孤独対策が進むように提言しました。

孤独を感じたら誰かに助けを求めてほしい

――最後に、孤独を重症化させないよう、周囲や社会ができることは?

政府に提言したことでこれまでは個人の問題でしかなかった「孤独」を、まずは政策課題の対象にできたのではと考えています。

政府などを含めた社会側としては、そうした予防的な観点を踏まえた上での対策を練り、いかに重症化を防いでいくかということですね。具体的には相談窓口などのセーフティーネットの逼迫を改善し、孤独を抱える人を減らすことです。

そして個人レベルでは、自分自身も孤独を感じる可能性があることを自覚し、その際に自分一人で対処しようとはせずに誰かに助けを求めてください。孤独は社会的関係・人間関係の量と質が充足していれば基本的には感じませんので、自分だけでは対処が難しく誰かにつながりを求めることが必要です。

一方で、他の人の孤独には対処できます。友人や家族らの良き頼れる人となってください。寄り添って話や悩みを聞くだけで、その人の孤独の重症化を十分に防ぐことができるはずです。

孤独を感じたら助けを求めるのが大事(画像はイメージ)
孤独を感じたら助けを求めるのが大事(画像はイメージ)

コロナ禍という状況の変化によって大学生も望まない孤独の悩みを抱えている。もし今、孤独を感じているようなら、周りに助けを求めたり、「あなたのいばしょチャット相談」を利用するなどしてほしい。

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。