古代の日本で権力者などの墓として建造された古墳。広島・福山市にはその古墳が集中的に残る全国的にも珍しい地域がある。
1400年以上の時を超え、現代に歴史を伝えるロマンに魅せられ古墳の調査を行う女性を取材した。

福山市神辺町の御領地区。岡山県と接するこの地域では古代に生きた人々の息吹を感じられる遺跡が数多く残されている。

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「異常」なほど密集している古墳

古賀記者:
あちらにあるのは、人が入ることができるような大きさの古墳の石室です。そしてそのすぐ隣にも同じような古墳の石室をいくつも確認することができます

この地域でこれまで確認されている古墳は約220基。全国でも有数の古墳密集地域であり、総称して「御領古墳群」と呼ばれている。この古墳群の存在から、かつてこの場所にはヤマト王権と通じる強大な権力者がいた可能性を指摘する専門家もいる。

広島大学・古瀬清秀名誉教授:
1つの地域に200基くらい集まってるんですね。これはもう異常。本当に当時の畿内のヤマト王権と直接結びついていた地域だったというのが、御領古墳群の発見で私はより鮮明になってきたんじゃないかと思っています

多くの可能性を秘める御領古墳群だが、調査や保全活動を担っているのは行政や専門家ではなく地元の住民グループ。
その代表を務める端本てる子さん。古代の人々の生活の営みを現代に伝える、古墳のロマンに魅了され続けているという。

御領の古代ロマンを蘇らせる会・端本てる子代表:
今から1400年前、もっと前のものがここに姿をそのまま残していて、やっぱり私たち感動しますよね。これはすごいとか。人と人のつながりっていうのもすごく感じますし、人間の力って凄いんだなと

端本さんたちが見つけてきた古墳のほとんどは横穴式の石室が特徴で、6世紀から7世紀ごろにかけて作られたと見られている。
御領古墳群ではそうした石室が隣り合うように密接して残っていて、全国的にも数少ない事例。

御領の古代ロマンを蘇らせる会・端本てる子代表:
実際には距離をとって、これが1つの古墳、これが1つの古墳とするんですが、ここは1つ2つ3つ4つ目が、自然と追っていけるようにできてます。とても珍しいと思います

古墳の魅力を現代に伝えるべく工夫

次々と新たな古墳が確認される一方、行政の許可がないため、いまだ専門家による発掘など本格的な調査は実施されておらず、史跡としても未登録。なぜこれほど多くの古墳が残っているのか明らかになっていない。
将来的に発掘調査などが実施されることを目指し、端本さんたちはボランティアで古墳の保全活動のほか記録や研究を進めている。

御領の古代ロマンを蘇らせる会・佐藤武志副代表:
右側壁とか奥壁奥に入れるものは、中から入り口を写したりとか全部撮ってます。サイズも測って、それを冊子にまとめたりして

2021年10月には好奇心を掻き立てる新たな発見もあった。

御領の古代ロマンを蘇らせる会・端本てる子代表:
これがもしかしたら前方後円墳かもしれないなと、会の方で今言っている最中で、まだ詳しい方に見ていただいてはいないのですが、古い記録も残っていて2つセットで認識されていました

見つかったのは、全長60メートルほどの前方後円墳とみられる地形。驚くべきことに、その形状は、力のある王や豪族などのために造られた古墳時代初期のものに似ているということ。同じような形の地形は付近で複数確認されていて、強大な権力者の存在を裏付ける発見の可能性もあることから、発掘調査への思いはさらに高まっている。

御領の古代ロマンを蘇らせる会・佐藤武志副代表:
この辺り、何も明らかになってない訳ですよ。一切分からないくらいの状況で。そこの考え方ですよね。文化財の保護ということと、地域史というか日本史にも関わるような歴史を明らかにするというところのバランスですよね

本格的な調査を願う賛同者を増やそうと、端本さんたちは御領古墳群の魅力を広める活動にも取り組んでいる。
この日はグループの仲間と共に、ボランティアガイドとして古墳群を案内するツアーを開催。全国各地から多くの参加者が集まった。

目の肥えた歴史マニアの目にも御領古墳群の遺跡は興味深く映る。中にはこうしたツアーがきっかけで、端本さんたちの活動に加わるようになった人もいる。

参加者:
やっぱりここに古墳時代に一大勢力がいたと、豪族ですね。かなり力を持ってたというのがよくわかると思います

ツアーの中では自分たちで制作した古墳グッズを販売したりなど、御領の古墳群に少しでも興味を持ってもらうための工夫が凝らされている。
多くの人の関心を集めて調査を望む声が大きくなることで、行政を突き動かすことを目指している。

御領の古代ロマンを蘇らせる会・端本てる子代表:
やはり好奇心とか知りたいという気持ちっていうのは大切だと思うんです。そういう思いがないと前には進んでいけませんし、色んなものに少しづつ背中を押されて、今自分たちが頑張っているな、頑張れているなというところが強いです

地域の歴史の観点、あるいは人を集める観光という点でも様々な可能性を秘めた御領古墳群。いつの日かそれが掘り起こされることを信じて、端本さんは活動を続ける。

(テレビ新広島)

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