岩手・盛岡市など8つの市と町では、東北道の盛岡IC付近に新たなごみ処理施設を整備することを2021年3月に決めた。
しかし、近隣の住民からは今も反対の声が上がっている。

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施設の老朽化と人口減少で“集約化”

佐々木雄祐記者:
雫石川にもほど近い上厨川地区。この付近がごみ処理施設の建設予定地となっていますが、こちらには、それに反対する住民の看板も立てられています

盛岡IC南側の雫石川に沿って広がる土地。
盛岡市や八幡平市、紫波町など8つの市と町でつくる協議会では2021年3月、この場所に新たなごみ処理施設を整備することを決めた。

住民:
おかしいですよ。なぜあんな街中にごみを集めて

しかし、予定地近くの住民のなかには反対を訴え続ける人たちがいて、12月6日も盛岡市に対して計画撤回を求める要請書を提出した。

撤回を求める太田の会・黒澤誠世話人代表:
地域をないがしろにして、(市は)自分たちの都合だけでやっていることが非常に腹立たしく思っています

そもそも今回の計画の背景には、現在、地域に6カ所ある施設の老朽化がある。高温での焼却を続ける施設の耐用年数は本来20年程度とも言われる中、盛岡市の施設は稼働から23年、最も古い葛巻町の施設では28年経過している。

また、国も人口減少などを踏まえて、ごみ処理の集約化を各県に促している。

盛岡に新設される施設では、南北85km・東西70kmにもわたる地域のごみを集めて焼却する予定で、処理能力は現在の盛岡市の施設を上回る1日500トンとされている。

候補地は当初466カ所あったが、協議会は盛岡IC付近を選定。
ごみの分別方法など詳細を検討するため、12月1日に計画の1年延期が決まり、稼働は2032年度の予定だ。

協議会会長・谷藤裕明盛岡市長:
東京などでは市役所の隣にごみ処理場があったり。環境問題やにおいは、今は全くクリアされている。効率性のいいところで、ちゃんとクリアできるところに造って、対応する時代に入ったのかなと

地域活性化につなげるため「受け入れ」

予定地選定の決め手となったのは、近くの住民でつくる土淵地域活動推進協議会が「受け入れ」を表明したこと。
そこには街の開発につなげたいとの思いがある。

土淵地域活動推進協議会・本宮秀孝会長:
土淵地域の均衡ある街づくり計画をつくってくれと、土地区画整理事業が失敗しているので、この跡地の利用を促進してくれと

今回、予定地となっているのは、上厨川土地区画整理事業の跡地。当初、工業用地などとしての活用が期待されながら、2020年に組合は破産。土地の荒廃が進み、野生動物の出没にもつながっているという。

土淵地域活動推進協議会・本宮秀孝会長:
最近もクマが出て、学校のそばに。荒れ地のところは(クマが)来て当然だと思う。危険なので、安全を守るためにも早く開発してほしい

また市は、ごみ焼却で生み出される電力を活用した多目的施設も整備する方針で、住民は地域の活性化に期待を寄せている。

土淵地域活動推進協議会・本宮秀孝会長:
地元の要望を入れて、いろいろなものをつくるということで、例えば盛岡にはないドーム型の多目的施設ができれば、冬もスポーツができますし、災害の時は避難できる

一方で、反対する住民は、受け入れは地域の総意ではないと訴える。予定地に近い前潟地区で生まれ育った齊藤常嗣さん(83)。予定地の一部の地権者でもある。

前潟地区在住地権者の一人・齊藤常嗣さん:
83年間、前潟(地区)に生きている。絶対反対ですね、ごみは。絶対買収に応じるつもりはありません

予定地の川の対岸・太田地区の黒澤誠さん(68)も、齊藤さんたちと署名活動などを続けてきた。

大田区在住・黒澤誠さん:
(自分の)周りもみんな反対という意見だし、ゼロに戻して市民で議論していくのが非常に大事なのかなと

2021年7月。予定地の決定後、太田地区では、実に1年8カ月ぶりで住民説明会が開かれた。市はコロナ禍で開催できずにいたと釈明したが、住民からは予定地がある土淵地区よりも軽視していると強い批判の声が上がった。

盛岡市の担当者:
盛岡IC付近を新たなごみ処理施設の整備予定地として選定しました

市民:
「説明会に来ます」と言って、それがなかった。来たら、もう一歩進んでいるというのは全然納得いかない

大田区在住・黒澤誠さん:
太田は、一昨年も3回住民説明をやっている中で猛反対だった。なぜ、ないがしろにされるの、太田は

市は予定地決定の背景として、計画を説明する冊子を回覧したことなどにより、市民の理解が進んでいるとの認識を示した。

盛岡市ごみ処理広域化推進室・菊池与志和室長:
盛岡市内では(冊子を)回覧という形でお知らせをした。さまざまな意見が寄せられ、情報交換の中で理解が深まっているのではないかと

近郊住民のごみ処理施設への認知度は…

佐々木雄祐記者:
市民の皆さんが、新しいごみ処理施設についてどのくらいご存知か、お話をうかがってみたいと思います

12月6日、街で盛岡や近郊の住民に新たな施設の予定地を知っているかを尋ねると…

(Q.新しいごみ処理施設ってどの辺にできるのかご存知ですか?)
住民:

ちょっとわからないですね

住民:
滝沢だったかな。
(盛岡ICのあたりなんです)
ああ…盛岡IC

20人に聞いたうち、盛岡IC付近と答えられたのは2人。認知は広がっていない現状がうかがえた。

地域への丁寧な対話や周知が必要

ごみ処理施設などの立地紛争について詳しい東洋大学の中澤高師准教授は、ごみ処理集約に向けた合意形成の難しさをこう語る。

東洋大学(環境社会学)・中澤高師准教授:
なんでわれわれがこういった集中した負担を引き受けなければいけないのかという不公平感は、かなり大きな反対の要因になってくる。期限があるからと言って、説明会などの丁寧な住民合意のプロセスをやらないのは当然望ましくない

そのうえで、ごみ処理は地域全員の課題であり、ごみ減量などに向けた意識の醸成が行政側には求められると指摘する。

東洋大学(環境社会学)・中澤高師准教授:
合意を形成しやすくするためにも、ごみ処理の負担を市民みんなで分担していく。ごみ減量やリサイクルなど。(今回の計画が)地域全体のごみ処理が改善されていくきっかけになるといいのではないか

地域に不可欠なごみ処理施設。老朽化による時間の制約もある一方、市には住民との丁寧な対話や周知への一層の取り組みが求められていると言えそうだ。

(岩手めんこいテレビ)

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