岸田首相の所信表明演説をめぐり、岸防衛相が「台湾海峡の平和と安定」との文言を入れるよう求めたが、見送られていたことがわかった。
岸田首相は6日、「近隣国との間でも、国益に基づき、この地域の平和と安定を目指して、確固たる外交を展開していく」と外交政策の所信を語った。一方、関係者によると、演説原稿の作成段階で、官邸と防衛省の間で「台湾」に関する表現を巡り攻防があったという。
岸防衛相は、緊迫する東アジア情勢について「中国には主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求め、建設的かつ安定的な関係の構築を目指す」との一文の後に「台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障と分けて考えることはできない。両岸関係の平和的な解決を求める」との文言を加えるよう官邸側に求めた。
「台湾海峡の平和と安定」とは、2021年4月、菅首相(当時)と米国のバイデン大統領が、日米首脳会談で初めて一致した日米の共通認識で、岸防衛相は「台湾を巡る情勢は安全保障にとって極めて重要で、国民や国際社会の関心も高いという事実や政府としての姿勢を、所信表明演説で国民にわかりやすく伝えるべき」と主張した。
しかし、官邸側は「台湾海峡の平和と安定」を入れることに慎重な姿勢を崩さず、結果として所信表明に盛り込むことは見送られた。官邸関係者は、一般論として「過去に台湾について入れたことことはない」と解説する。2月には、北京冬期五輪を控え、欧米では外交的ボイコットの動きもあるが、日本政府は静観の構えを崩していない。対中政策で、今後、岸田政権がどのような姿勢で臨むのか注目だ。
