日本三大薬湯の1つとして数えられる新潟・十日町市の松之山温泉で、地域の新しい宝にしようと、温泉水から塩を作る取り組みを取材した。
1200万年前の海水で…温泉から作る塩
豪雪地を象徴するように、婿が雪めがけて投げ飛ばされる“むこ投げ”。
十日町市松之山地区の伝統行事。
その松之山を雪と並んで有名にするのが、“日本三大薬湯”の1つと言われる松之山温泉。
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そんな温泉を特別な思いで見つめるのは、嶋村彰さん(41)。
嶋村彰さん:
大地の癒やしですよね。包み込まれるような温かさ
その特別な温泉で、嶋村さんが仲間と協力して作っていたのは…
嶋村彰さん:
松之山温泉には塩分が含まれているので、炊くと塩ができる
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松之山の温泉を使って塩作りに挑む嶋村さんは、埼玉県出身の移住者。
嶋村彰さん:
高校時代からスノーボードが好きで、高校を卒業したら雪国に移住したいと思っていた。そして、ふらっと松之山に来たときに、自然と人の良さにほれ込んじゃった
3人の子どもと松之山で暮らす嶋村さん夫婦は、薬草を栽培してハーブティーに加工。
松之山の特産品として販売している。
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嶋村さんが、5人の仲間とともに塩作りを始めたのは2020年のこと。
源泉から温泉水をくむことから始まる塩作り。
実は…
嶋村彰さん:
戦後、塩が不足していたときに(松之山温泉から塩を)作っていた。経済がよくなって、塩作りをやめた
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しかし、なぜ松之山の温泉から塩ができるだろうか?
嶋村彰さん:
もともと(松之山は)海だった。1200万年前に地殻変動で山ができて、海水が閉じ込められた
メンバー:
1200万年前の海水から塩ができるというのは、すごくロマンがある
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雪の中をメンバーが温泉水を運び、たどり着いた小屋。
中に入って階段を下りると、そこには塩を作るための窯があった。
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しかし、ここは地下ではない。
嶋村彰さん:
さっき入ってきたところは2階部分。雪で1階部分は埋まっている。だから2階から入って、降りてきたここは1階
温泉水からの塩の作り方は単純で、窯で薪を燃やして、鍋に入れた温泉水の水分を蒸発させるだけ。
しかし、これがとても大変。
県内では、同じように海水から塩を作る施設もあるが、海水と温泉水には大きな違いがある。
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嶋村彰さん:
(松之山温泉の)塩分濃度は1.3%で海水は3.4%。海水の半分以下。これを薪で炊くので、なかなか根気のいる作業
温泉水は海水に比べて塩分濃度が低く、塩ができあがるまでには時間がかかる。
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嶋村彰さん:
(温泉水)100リットルを12時間かけて炊くと、塩が1,300グラムできる
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みんなで作り上げる“優しい結晶”
水蒸気と煙が白く充満した小屋で、塩の結晶が見えてくるまでの、ゆったりとした時間が仲間を結びつける。
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メンバーの市川久美子さんは農業に興味を持ち、2020年6月に愛知県から松之山に移住した1人。
市川久美子さん:
温泉が、人間に必要な塩に生まれ変わるのがいい
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養蜂業を営む本間志朗さんは十日町市出身で、東京に20年暮らしてUターンした。
本間志朗さん:
田舎は何もできないと思っていたけど、(Uターンで)戻ると、こっちのほうがいろいろできるなと感じて、魅力のある土地ということを再発見させてもらった
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故郷に戻った人と移住した人。
松之山への思いが重なって生まれる、小さくても優しい結晶。
嶋村彰さん:
みんなで作り上げるというのが楽しい
本間志朗さん:
メンバーが個性的なので、いろいろなアイデアが出てくる。遊びの延長で商品ができるのがおもしろくて、楽しませてもらっている
焦げつかないよう混ぜ続けると、2021年春に商品化を目指す「薬湯山塩」の完成。
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雪の松之山で生まれた結晶。
地元の宿泊施設「醸す森」で、フランス料理を提供するシェフの福原貴英さんに、薬湯山塩の味を評価してもらった。
醸す森 福原貴英シェフ:
味がやわらかい。大地の味がする
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シェフの福原さん、地元の米を使ったおかゆに薬湯山塩をひとふり…
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醸す森 福原貴英シェフ:
(この塩は)インパクトがあって、地域の大切な宝となる。地元の養分を吸った野菜と合わせて、シンプルに楽しんでいただきたい
「見せる塩作り」を松之山の新たな魅力に
良好な評価に笑顔を見せる嶋村さんだが、メンバーは塩の完成で満足はしていない。
メンバーが新たに計画していたのは、クラウドファンディングによる資金集め。
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嶋村彰さん:
これから「見せる塩作り」を目指す。お客さんと一緒に塩を作り上げて、自分で作った塩を持ち帰ってもらう
塩を作る小屋を改装し、見学や体験をできるようにして、塩作りを松之山の新しい魅力として誘客につなげる考え。
嶋村彰さん:
(この土地を)気に入って、若い人が(松之山に)住みようになったらいい
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松之山の魅力を探して、知恵を出し合い、地域を楽しみ生まれた優しい結晶。
(NST新潟総合テレビ)