「パーフェクトメイドインジャパン」を目指して
衣服の原料、綿。鳥取県では「伯州綿」が長持ち素材として再び注目されている中、島根県雲南市では、綿で一大産業を築こうと挑戦を始めた男性がいる。栽培するのは、世界的にも希少なコットンだ。
加藤完一商店・藤原潤さん:
原綿から最終製品までを、全て日本国内でやれる。「パーフェクトメイドインジャパン」というのを目標にやってきて…

真っ白なTシャツ、そしてマスク。国内で流通する綿の99.999%が外国産の中、これらは100%雲南市で採れた綿から作りあげた。

加藤完一商店・藤原潤さん:
当初目標としていた、島根県産100%の製品を作ることができました

この原料・綿花を栽培し、製品のプロデュースに販売まで手掛けるのは、松江市出身の藤原潤さん。

学生時代の卒業論文に選んだのは、ジーパンの生地に関する産業の集積化だ。
綿などの繊維が大好きだった藤原さんは6年前に島根にUターンし、国産の綿を使ったTシャツを販売しようと企画した。

しかし…。
加藤完一商店・藤原潤さん:
国内で栽培している人がほとんどいらっしゃらなくて、供給量もほとんどない
国産綿は1%以下「それなら自分で作ろう」
もともと綿は、温暖で水はけのいい場所での栽培が向いている植物。外国産がほとんどで、国産綿のシェアは1%にも満たないことを知った。

加藤完一商店・藤原潤さん:
そうなると自分でやった方が早いですし、品質も管理できるので綿栽培をはじめました
銀行からお金を借り、栽培や商品販売までを手掛ける会社を2019年に作った。
加藤完一商店・藤原潤さん:
ここがうちの圃場(ほじょう)になります。11月中旬から後半にかけて、乾燥して綿花が割れてくる

綿の栽培に利用するのは、伝統の棚田で知られる山王寺地区と阿用地区、あわせて約7000平米の休耕田。
綿花が熟し、雪が積もる前の1カ月間が収穫の時期で、家族にも手伝ってもらい収穫作業に没頭する。

加藤完一商店・藤原潤さん:
これだけたくさん採って、やっとTシャツ一枚の製品ができる。…結構、大変ですね

世界で約5%しか栽培されない「超長綿」を島根で
こうして栽培する綿は、希少コットン「超長綿(ちょうちょうめん)」。多くの衣料品で使われている中綿よりも丈夫な上、絹のような手触りが出せる高品質の品種だ。

しかし、収穫まで熟すのに時間がかかり採れる量も少ないため、世界全体でも5%程度しか栽培されていない。藤原さんは、この希少価値と品質のよさに着目している。
加藤完一商店・藤原潤さん:
より島根県の色を強くするために、最初から最後まで全て県内でできることを目指していて。今、いろいろな方とものを作っていこうと相談しているところです

藤原さんの目標は、栽培から縫製、商品にするまでの工程全てを県内で行い、付加価値を高めて都会地へ送り出すことだ。

加藤完一商店・藤原潤さん:
国内でやるには難しい事業だということなんですけど。逆に私はそれが強みだと思っていて、誰も参入しないところを自分で切り開いていけば、必ず事業になる。チャンスだなと感じました
「超長綿」を一大産業に育てるため、藤原さんの挑戦は始まったばかりだ。
(TSKさんいん中央テレビ)