介護にあたる子どもたち「ヤングケアラー」を支援につなげようと、学校や地域で模索が始まっている。教師の意識を変え、まず把握することからでも…。
動き始めた現場の取り組みを追った。

札幌市の女子中学生。母子家庭で、仕事を掛け持ちする母親に代わって家事を担い、弟たちの世話をしている。
子どもでありながら、家族の介護や世話をするヤングケアラー。

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そのことを知っているのは、家族の分のお弁当を渡してくれる子ども食堂の人だけだ。

ヤングケアラーの子ども:
学校の先生は知らないと思います

学校にも知られず、行政の支援からもこぼれ落ちる子どもたち。

教育現場では教師たちの意識を変え、孤立するヤングケアラーを把握する取り組みが始まった。子どもたちの小さなSOSを聞くために…

教師に代わり”ヤングケアラー”支援するスクールソーシャルワーカー

札幌市南区の札幌新陽高校。ヤングケアラーをはじめとする、生徒の課題に対応する取り組みが始まっている。
札幌大谷大学で社会福祉学を教える今西良輔さんだ。

訪れたのは保健室。養護教諭から不登校の生徒や家庭に問題を抱える生徒たちについて聞き取る。そのうえで生徒とも面談。

活用できる福祉サービスを家庭にも伝えるなどして解決を図る。スクールソーシャルワーカーと呼ばれる仕事だ。

スクールソーシャルワーカー 今西 良輔さん:
ヤングケアラーの状況に合わせて、例えばお金の部分で生活が大変であれば、行政機関。ケースに応じて児童相談所などにつないでいく

高校ではこれまで、多忙な教師が生徒たちの相談に応じてきたが、今西さんによって具体的な支援に向けて動くことができるようになった。

札幌新陽高校 養護教諭 須川 恵里さん:
話を聞き状況を把握することはできるが、家庭に学校が踏み込めない。どうすれば具体的な支援につながるのか、ソーシャルワーカーに相談してよかった

変わり始めた「教師の意識」

さらに教師の意識の変化も生まれている。

札幌新陽高校 教頭 宮原 祐輔さん:
遅刻ひとつとっても、家族のお世話をしてから登校することが、もしかしたらその裏にあるかもしれない。まずは教師の認知度を上げて、日々生徒の観察にあたってもらうような研修も、今後検討していきたい

今西さんは、他の高校でもスクールソーシャルワーカーを務めている。ヤングケアラーの問題には、家庭の貧困や親の病気などが複雑に絡み合っている。
今西さんが過去に担当した子どもたちだ。

過酷な状況にある「ヤングケアラー」

両親が家を空け、子どもにお金も渡してくれないという高校生。

コンビニのアルバイトを掛け持ちし、お金を稼ぐために援助交際もしていた。

家計を支えるために働くことも、ヤングケアラーの一つとされる。
また、精神疾患の母親に代わってアルバイトをしながら家事をしている生徒もいた。

ただ、解決は簡単ではない。

スクールソーシャルワーカー 今西 良輔さん:
どこも手立てがない。親がかなり子どもに頼っていて、子どもの家事や育児を軽減したい時に『やらなくていい』という支援がない

欠如する子どもを"直接サポート"する仕組み

生活が困窮している場合に生活保護につなぐことはできるが、子どもを直接サポートする仕組みがない。ヤングケアラーを見つけても、支援のメニューがほとんどないのが実情だ。

札幌に住む中学1年生の香織さん。母子家庭で、仕事で忙しい母親にかわって家事や保育園に通う弟の送り迎えをしている。

2つの仕事を掛け持ちする母に届かない支援…

母親の美智子さん。コロナ禍で収入が減り、2020年転職を余儀なくされた。今は介護施設の夜勤など2つの仕事を掛け持ちしている。

夜、子どもを家に残して働きに出るため「育児支援制度」を使いたいと考えたが、市からは遅い時間の利用はできないと言われた。

働くためには長女の香織さんが頼りだ。

美智子さん(仮名):
本当はつらいのかもしれないが、『大丈夫だよ』『ママ行っておいで』『ありがとう』って。『お仕事頑張ってね』と言ってくれるので感謝ですし、安心して仕事に行ける。そして謝ります。『ママがこんなんでごめんね』って

孤立し、支援から取り残されているヤングケアラーと家族。

ヤングケアラーを支える「子ども食堂」

支えているのが民間の支援団体だ。香織さんは週に1回、自宅近くの子ども食堂に行く。

保育園を終えた弟も一緒だ。学校の先生は知らない家庭の状況も、食堂の人たちは知っている。

香織さん(仮名):
食堂ではお母さんの悩みも聞いてくれるし、お弁当も考えて作ってくれて、すごく助かってます。すごくおいしくて

母親の美智子さんが夜勤のため、この日は2人の弟と一緒にお弁当を食べる。

香織さん(仮名):
(母親は)大変そうだなと思うが、その分 私も頑張る

子ども食堂を運営する亀岡純子さん。行政の支援が行き届いていない家庭を支援したいと話す。

子ども食堂 ぐれ~す 亀岡 純子さん:
行政の『隙間』の受け皿になれたら。学校や周りの人が(子どもの事情を)知らなくても、上の子は普段は家で弟や妹の面倒をみているが、食堂にくるとのびのびできたら、子ども食堂の役割になると思う

実態の把握へ…動き始めた行政

札幌市は11月12日から、中学校と高校などを対象にヤングケアラーの実態調査を始めた。

秋元 克広 札幌市長:
学校だけですべて解決できない。一緒に支援をしていくつながり、"ネットワーク"を作ることも大きな意味がある。まずは状況と具体策を早急につめていきたい

支援からこぼれ落ちてきたヤングケアラーたち。
教育の現場で、そして地域で。支える取り組みが動き始めている。

(北海道文化放送)