習い事のDX

上達への近道は課題の「見える化」だった。

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スイミングスクールで行われている水泳のレッスン。
指導の最中、コーチがプールサイドで準備をしていたのは泳ぎを撮影するためのカメラ。

神奈川県・横浜市にある東急スイミングスクール。
レッスン後、子供たちが見ているのは自分たちの泳いでいる様子を撮影した動画。

これは、スタートアップの「ウゴトル」と 東急スポーツシステムが共同で開発した 特別レッスンのプログラム「ウゴトル for Lesson」。
レッスン中に撮影した泳ぐ様子を水上からと水中からの2つのアングルで見ることができる。

スイミングスクールの生徒:
注意されているところが、 携帯で文字で書かれていてすごいと思いました。

生徒1人1人に作成する動画の編集はコーチ自らが行うが、タブレットを使って簡単に作ることができるという。

東急スポーツシステム 植木康広さん:
この平泳ぎの足なんですけど、本来であれば足の裏で水を押さなければいけないのが、足のつま先・足の甲で水を蹴るような形になっちゃっているので、これをアドバイスしたいです。

動画の中で指導するコメントは進級テストのチェック項目に応じて、テンプレート化されているためコメントを選択するだけ。1つの動画は数分で作成可能だ。

生徒は、普段見ることのない自分の泳ぐ姿を見ることで課題を可視化でき、より早い上達が期待できるという。

生徒の母親:
テストのときに「なんで不合格なのか分からない」 とか受かりそうなのかも分からなかったので(上達に)すごく役に立っています。

指導する側にも新たな気付き

また、この動画は指導する側も教え方を見直すきっかけになるという。

東急スポーツシステム 植木康広さん:
動画を見ている子供を見たときに、子供の感じ方ってこうなんだって思った瞬間があって、伝え方をもう少しかみ砕いてやってあげないとというところが新たなプラスαで気づきになったりしています。

デジタル技術を活用した習い事アップデート。その可能性を開発したスタートアップ企業の代表はこう語る。

ウゴトル 西川玲社長:
もともとスポーツ指導において、まだまだIT技術でできる、効率化できる余地はすごくあったなと思っていたんですけど、その効率化をしていく先でやりたいことというのは、指導者の1人1人の指導の価値というのを高めてもっと収益を良くしたい。それを良くすることによって指導者を目指す次世代をうめるというのが目指している世界です。

自分を客観視する「メタ認知」育成を

三田友梨佳キャスター:
一橋大学ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに聞きます。実際に「学びの場」で消費者行動などについて学生を導く立場にある鈴木さんは、今回の取り組みをどうご覧になりましたか?

一橋大学ビジネススクール准教授・鈴木智子氏:
今は「教え手」ではなく「学び手」を中心とした教育が当たり前になりつつあり、ビジネススクールも例外ではありません。学校の教師やインストラクターはあくまでも学びを促す「ファシリテーター」であり、生徒は「学習という旅」を自分でコントロールできるようになることが大切です。

主体的に学習を進めるためには、自らを客観視する力を育てることが重要で、これを「メタ認知」といい、学校に限らず学びの現場では重要なキーワードになっています。

三田キャスター:
私も幼いころ水泳教室で先生が一生懸命身振り手振りで教えてくださっても、そもそも自分がどのように泳いでいるのかわからずうまくできなかったことがありましたが、「メタ認知」が重要なんですね。

鈴木智子氏:
「メタ認知」が発達すると、生徒自身が自分の学習状況や進み具合を振り返り、自分が得意なことや苦手なこと、どのような方法で勉強するのが自分にあっているのかを判断できるようになります。

三田キャスター:
鈴木さんが学生と向き合う際には「メタ認知」の有無が問われるケースというのはあるのでしょうか?

鈴木智子氏:
例えばビジネススクールでは、学生の多くは仕事をこなしながら「学びの場」に参加しています。日常の業務をこなしながら課題をやるには、「メタ認知」に優れていると、自分の能力と与えられた時間から逆算して課題の提出というゴールをこなせるようになります。

三田キャスター:
「メタ認知」はビジネスにも活用できそうですね。

鈴木智子氏:
ビジネスには、細部に目配りする「蟻の目」と俯瞰するように物事を見る「鳥の目」の2つが重要だといわれますが、メタ認知は「鳥の目」の部分です。ビジネスの課題は、全体を見て長期的に考え、本質を捉える必要があります。目の前で起きていることだけに焦点をあてると、真の原因を見落とすことがあります。

メタ認知があると、全体像を見極めて問題を解決する糸口を見出すことができます。 

三田キャスター:
デジタルツールによって自分のことを客観的に考えられるようになると、さらに理解が深まっていくと思いますし、もっとこうすればいいと前向きな思考に繋げれば学びのモチベーションにも繋がるように思います。

(「Live News α」11月17日放送分)