今年のテーマは「性暴力をなくそう」
11月12日から25日までの2週間は「女性に対する暴力をなくす運動」の期間だ。
政府は、地方自治体や企業、NPOなどと連携し、セクシャルハラスメントやDV(ドメスティック・バイオレンス)、性犯罪などの撲滅に向けた取り組みを集中的に実施する。
今年の運動のテーマは「性暴力をなくそう」。
期間中、スカイツリーやさいたまスーパーアリーナ、ハウステンボスなど、全国230カ所以上のランドマークを、女性に対する暴力根絶のシンボルカラーである紫色でライトアップするほか、『毎日かあさん』で知られる漫画家・西原理恵子さん描き下ろしの漫画など、様々な手段を通じて、社会における問題意識を高める狙いだ。

こうした活動を通じて、女性に対して周知を図ろうとしているのが相談窓口の存在。
内閣府の男女共同参画局は、全国47都道府県49カ所にあるワンストップ支援センターに、去年10月、短縮番号「#8891(はやくワンストップ)」を導入し、さらにSNSで気軽に相談できる「キュアタイム」を設置した。
去年10月からの6カ月間のワンストップ支援センターの相談件数は、前年の1.3倍となった。
コロナ禍の影響による相談も
では、どのような相談が多いのだろうか。
2019年6月から8月までの3カ月間の相談件数は電話と面談あわせて約9,500件。このうち4割弱が20代からの訴えだった。
加害者との関係では、「友人・知人」が電話・面談ともに20%超と最も多かったが、「親」の割合も10%超と高い割合を示した。
「SNS・ネットで知り合った人」の割合は、電話での相談で6%程度にとどまったが、「最近は、ネットで知り合った人を『友人』と言う人もいる可能性がある」と担当者は不安な表情を浮かべ話していた。
一方、「キュアタイム」への相談(2020年10月2日~2021年1月30日)では、293件のうち、20代が36%、次いで10代が25%を占め、加害者との関係は「家族」が31%と最も多かった。

具体的な相談内容で特徴的なのは、コロナ禍の影響によるもの。「家族から被害を受けているが、コロナ禍で移動できない」「外出自粛の寂しさからSNSで知り合った人に、裸の写真を送ってしまった」といったものだ。
また、「性被害にあったのは被害者自身のせい」と言われる、「二次被害」の相談も多いという。
「性暴力の悩み、ひとりで悩まず、相談を。」
こうした被害者からの相談に応じる態勢は、さらに充実が図られている。
被害者から相談の電話がある時間帯は、日中に限らず、夜間の問い合わせもある。これまでワンストップ支援センターでは、相談員の人数の問題などから、24時間態勢は、21都道府県にとどまっていたが、11月1日までに、全47都道府県についての夜間・休日対応が可能となった。
担当者は「まだまだ周知されていない。少しでも多くの人に相談できる場所、守ってくれる場所はあるんだよ、ということを知ってもらいたい」と話す。
「性暴力の悩み、ひとりで悩まず、相談を。」
今回の運動のポスターなどに記されたメッセージだ。
性暴力の経験はトラウマとして何十年も被害者を苦しめることもある。苦しい、つらい気持ちを心の内に抱えたより多くの被害者が、相談を糸口に救われることを願う。
(執筆:フジテレビ政治部 長島理紗)