バナナやリンゴを思わせるフルーティな香り。白い濁りがあり、やさしく滑らかな味わい。全国の審査会で、2回連続日本一に輝いた地ビール「ヴァイツェン」。

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地ビールとは、大量生産される大手メーカーのビールと違い、特定の地域で少量生産される希少なビールのこと。
この日本一の地ビールを生産している場所、それは北九州市。地ビール作りで街に活気を呼ぼうと2020年から生産が始まり、現在、合わせて8種類の地ビールが販売されている。

特徴的な香り…味も上品な九州産ホップ

2021年8月、北九州市小倉南区の畑でビールの原料になるホップの摘み取り作業に汗を流しているのは、安枝裕司さん。

ホップの雌花の部分は「毬花(きゅうか)」と呼ばれ、ビールの苦みや香り、そしてビールの命である「泡」を生み出し、ビールの保存性を高める働きがある。

ホップは主に北海道や東北地方などの寒冷な場所で育ち、温暖な九州は栽培に不向きとされている。
安枝さんは、日陰で育てたり、真夏の暑さを避けて早めに収穫したりして、北九州市での栽培に成功した。

響灘ホップの会・安枝裕司さん:
幸い、雨の影響も最低限に抑えられて、たくさんとれて安心しているところです

2021年の収穫量は約35kg。用意されたカゴはあっという間にホップでいっぱいになった。

門司港にあるビール工場で、ホップの中にある黄色の粒を1つ1つ丁寧にむき出していく。この粒が、ビールの苦みや香りを決める。

門司港地ビール工房・峯松幸之助さん:
(去年より)今年の方がより大きく毬花が実って、ルプリンという黄色い粒がたくさん入っているんじゃないかなと思います。その分、香りがすごく華やかにでるのではないかと思います

収穫したホップは麦汁の中に入れ、1~2週間かけて発酵させる。
そして約1カ月の熟成期間を経てできた地ビールがこちら。その名も「ヒビキフレッシュホップス若松エール」。

門司港で醸造されている8種類の地ビールの中でも、北九州産のホップを使っているのはこの「若松エール」だけ。フルーティな香りが特徴的で、味も上品に仕上がった。

小川ひとみリポーター:
すごく爽やかです

門司港地ビール工房・峯松幸之助さん:
若松ホップの新鮮なものだからこそ、こういうフレッシュな香りがします

小川ひとみリポーター:
ビールが苦手な女性でも飲みやすいんじゃないかなと思いました

門司港地ビール工房・峯松幸之助さん:
普段使っているホップというのは、海外産の乾燥しているホップなんですね。やはり乾燥していない分、香りが良かったりとか、みずみずしいホップの風味が出ると思います

北九州の新たな名産を目指して

こうして完成した「若松エール」は注目の的に。2020年は4,000本の「若松エール」が即完売したことから、2021年はその3倍以上、13,000本分を仕込んでいる。

そんな地ビールの販売会が9月、JR小倉駅で開かれ、待ちわびた人たちがまとめ買いする姿もみられた。

購入した人:
きょうは6本買って。(去年)販売したら、すぐ売り切れたという話を聞いたものですから、きょうはちょっと早めに。ほぼ一番のりになって嬉しかった

購入した人:
奥さんが作ってくれた料理と一緒に飲めたらなと思います

この販売会の様子を見守っていた、ホップ生産者の安枝さんは…

響灘ホップの会・安枝裕司さん:
なかなか明るいニュースがない中で新しい話題を提供することで、みなさんが元気になれるんじゃないか、笑顔になれるんじゃないかということでチャレンジをしてみたんですけれども、これをもっと広げていきたい。多くの方に飲んでいただけたらなと思っています

地域の力を結集して完成した地ビール。北九州の新たな名産品として、街を明るく元気づける。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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