15カ国の連携で経済活動を後押し

日本や中国、韓国、ASEAN加盟国などが参加するRCEP=地域包括的経済連携協定が動き出す。

15カ国が合意している協定は、まず中国やオーストラリアなど10カ国で2022年1月1日に発効し、関税撤廃や削減、知的財産や電子商取引などの幅広い分野での統一的ルールの整備などを通じて、自由貿易を推進していく。

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域内の2019年の人口は約22.7億人、GDPは25.8兆ドルで、いずれも世界の約3割を占め、参加国全体での関税撤廃率は、99%のTPP=環太平洋経済連携協定には及ばないものの、91%を確保した。

多くの企業が生産拠点を置くアジア・太平洋地域に巨大な経済圏が誕生することになる。

2019年11月4日

中国とは初の同一の経済連携協定に

日本の貿易総額のうち、協定参加国との貿易額が占める割合は約46%に上る。日本は、ほかの14の参加国全体に対し、工業製品では約92%の品目で関税撤廃を獲得した。特に、最大の貿易相手国である中国とは、初めて同一の経済連携協定に参加することになり、その意義は大きい。

中国向けに輸出される工業製品で、関税がなくなる品目の割合は8%から86%へと大幅に上昇する。

対中輸出額が5兆円にのぼる自動車部品では、約87%の品目で関税が撤廃され、電気自動車=EVの重要部品であるリチウムイオン蓄電池の素材の一部では、6%の関税が16年目になくなるほか、家電では、洗濯機の一部や電子レンジで、それぞれ10%、15%とかかっている関税が、11年目に撤廃される。

農林水産品でも、中国は、日本からのパックご飯や米菓に関税10%を、清酒には40%を課しているが、21年目にそれぞれ撤廃される。

2019年11月4日

輸入では「重要5品目」を除外

一方で、日本が輸入する品目では、コメや麦・牛肉・豚肉など「重要5品目」が関税撤廃や削減から除外された。

中国からの輸入農産品では、輸入額が多い鶏肉や、日本国内の生産者団体が国産品の巻き返しを図りたいとしているたまねぎや冷凍ブロッコリーなどが、関税をなくしたり減らしたりする対象から外れたが、国産品だけで国内需要をまかなうことが難しい品目や、国産品とすみわけができているインスタント向けフリーズドライの具材となる乾燥野菜などについては、長い期間をかけて、関税が段階的に撤廃される。紹興酒や、ほとんどの衣類などでも、中国から輸入する際の関税が最終的になくなる。

2020年11月15日(提供:内閣広報室)

ほかの国の原材料を使っても「自国産使用」とみなす制度

RCEPでは、生産にあたって、ほかの締約国の原産材料を使った場合、自国の原産材料を使ったとみなす「原産地規則の累積制度」が設けられ、域内のサプライチェーン(部品供給網)構築を支援する。

知的財産や電子商取引などの分野で共通のルールもつくり、コンテンツやデータなどのデジタル情報は、国をまたぐ自由な流通を確保していく。

2020年11月15日(提供:内閣広報室)

中国の存在感高まるか

RCEPは、アメリカが離脱したTPP=環太平洋経済連携協定を上回る経済規模となり、新型コロナによって痛んだ経済の回復への寄与が期待されるが、当初交渉に加わっていたインドは協定の署名を見送った。このため、アジア・太平洋地域の通商分野で主導権を握りたい中国の存在感が高まるとの見方が出ている。

政府の試算によれば、RCEPにより日本のGDPは約2.7%押し上げられ、その効果は15兆円に相当する。

コロナ禍からの世界経済再開に伴う物流網の混乱や半導体不足などで、企業のサプライチェーン見直しが進むなか、輸出入や企業活動を促進する自由貿易のメリットを享受しながら、新たな経済秩序の維持に貢献していけるのか、日本には長期的な通商戦略が求められることになる。

【執筆:フジテレビ経済部長兼解説委員 智田裕一】
【図解イラスト:イラストレーター さいとうひさし】