つるんという感じで美味しい…口どけ滑らかな「栗きんとんわらび餅」

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名古屋市千種区に、秋の訪れを感じさせる栗を使ったオリジナルの和菓子がある。それが、濃厚な味わいの栗きんとんを、わらび餅で包んだ「栗きんとんわらび餅」。その絶妙な食感を生み出すのは若き3代目の技と勘だ。

名古屋市千種区の北東部を流れる香流川。そのほど近くにある和菓子店「栗の屋本家 本店」。

店のショーケースには「栗蒸し羊かん」(150円)や、「栗粉餅」(150円)、「栗きんとん」(190円)に、通常の3倍はある「びっ栗きんとん」(450円)などが並んでいる。

中でも、この時季の看板商品が「栗きんとんわらび餅」。

女性客:
そんなにないですよ、わらび餅の中に栗きんとんは。おいしいです。つるんという感じで

男性客:
口どけがすごく滑らかで、栗きんとんのパサつき感が全然なくて、季節感を感じる食べ物

作るのは、店の味を守る3代目の南谷隆之さん(23)。

南谷隆之さん:
栗きんとんわらび餅って、一般的ではない。うちのオリジナル商品で始めたもので、お店のアイデンティティといいますか…。生地(わらび餅)と、中の栗きんとんのバランスを重要視していて、食感が命

焦げつかないようヘラでかき混ぜ…父から受け継ぐ「栗きんとんわらび餅」

栗きんとんわらび餅は、約20年前に南谷さんの父・隆充さんが考案した。

父の南谷隆充さん:
うちは屋号が「栗の屋」ということもありまして、せっかくなので栗でわらび餅がやれないかなと…

2代目の隆充さんは、普通の栗きんとんでは硬すぎるため、試行錯誤しながら外のわらび餅に合う栗きんとんを作り上げ、栗きんとんわらび餅は誕生した。

父から受け継ぐ、食感が命の栗きんとんわらび餅。まず取り出したのは、主役となる栗だ。

水分量が少なく、身が締まっている熊本産の栗は味が濃いのが特徴で、水分を飛ばして炊く栗きんとんには最適だという。栗の屋では、作る菓子によって栗の産地や品種を変えている。

50分ほど蒸したら、熱々のうちに専用の機械で皮をむき、そぼろ状に。これを砂糖と一緒に炊き、”栗きんとんあん”を作る。

焦げつかないようヘラでかき混ぜながら…。栗菓子に特化した店だけあり、炊く量も膨大で毎日が体力勝負。
もっとも重要なのが、炊き上がりの見極めだ。炊き始めて35分、炊き上がりは手で確認する。

南谷隆之さん:
まだ柔らかいので、もうちょっと火をいれます。(栗は)とれる時期によっても全然違いますんで、触ってみるのが一番。最初は正直違いが判らないこともあったけど、やっていく中で覚えましたね

更に3分熱を加えて鍋から取り出す。しっとりとした柔らかさとほどよい甘味…。わらび餅に合った”栗きんとんあん”が炊き上がった。粗熱を取ったら、ひと口大に丸めておく。

自分にしか作れないお菓子を…修行に出ず父のもとで学び腕を上げた3代目

物心がついた頃には和菓子職人を夢見ていた南谷さん。高校卒業後に修業には出ず、すぐに家業に入った。

南谷隆之さん:
うちはオリジナルのお菓子が多いので、うちでしか学べないこと。自分にしか作れないお菓子を作りたかったので、自分で考えながらやる時間を大切にしたかった

父のもとで基礎から始め、高度な技術や店の味を徹底的に学ぶと、「栗きんとんどら焼き」など自身のオリジナル商品も手がけるほどに腕を上げた。息子の成長ぶりに父は…

父の南谷隆之さん:
本人が決めたので、親としては心強い面もあり、心配な面もありますけど。ここのところは安心して見ていられる感じがあります。ここから先は、自分のやり方を編み出してもらえるといいんじゃないかな

若くして才能を開花させた南谷さん。その技を惜しみなく「栗きんとんわらび餅」に生かしている。

スッと伸びてズッと落ちる感じがベスト…栗きんとんに合う弾力に

続いて、わらび餅を作る。栗の屋では、コシが強いものと歯切れが良いものなど3種類のわらび粉を混ぜて使っている。

まず少しずつ水を加え、硬いダマが残らないように手で確認しながらわらび粉を溶いていく。これを濾して、すっきりとした甘みの砂糖を加え、火にかける。

程なくして、わらび粉のデンプンが固まりはじめた。焦げつかないように注意を払いながら5分ほど混ぜ続けると、煮えてきた。

ここで熱湯を注ぎ一気に練るスピードを上げると、みるみるうちに生地が色づき、艶とコシが出てきた。ヘラから伝わる感触に集中しながら、栗きんとんに合う弾力を目指す。

南谷隆之さん:
栗きんとんはあんこほど柔らかくできないので、バランスをみてわらび餅のコシを強めにして炊きあげます。スッと伸びてズッと落ちる感じ。この感じがベスト

おいしそうな“わらび餅”が炊き上がった。熱々の状態でちぎり、表面にきな粉をまとわせたら手早く栗きんとんを包む。

毎年待ってくれるのは職人冥利に尽きる…感動与えられる和菓子作り続ける

最後に、きな粉をまぶせば完成だ。

南谷隆之さん:
楽しいですよ。(客から)おいしいと聞くと嬉しいですよ、その言葉だけで。もっともっと感動させられるお菓子を作りたいと思うので、それが向上心につながっている

南谷さんの手仕事が生んだ「栗きんとんわらび餅」(180円)。わらび餅の心地よい食感の後に、栗きんとんの濃厚な味わいが口の中に広がる。秋の訪れを感じる至福の逸品だ。

南谷隆之さん:
毎年待ってくれているのはすごくありがたい事で。その人の楽しみになっていることは職人冥利に尽きる

「自分にしか作れないお菓子を作りたい」。南谷さんは、これからも人に感動を与えられるオリジナルの和菓子を作り続ける。

(東海テレビ)