ゆれる鼻に、つぶらな瞳。真っ赤な顔をした“てんぐ”のキャラクター、その名も「てんぐちゃん」。張り子の鼻の部分が、ぶんぶんと動く。
地元の郷土史に魅了されて生まれたという「てんぐちゃん」の魅力を探った。
頭には“うな重” 個性的キャラはどう誕生した?
このキャラクターの生みの親は、浜松市に住む坂田吉章さん。さっそく取材に行くと、自宅の2階へ案内してくれた。そこにあったのは…
坂田さん:
こちらが作業場になります

部屋には“かぶと”をかぶったてんぐちゃんや、小さな手びねり人形のてんぐちゃんまで。様々なてんぐちゃんが、ずらり。
てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
もともと作ること自体はすごく好きだったんですけれども、創作意欲が今まで一番大きかったのが『遠州の郷土史』でした

浜松市出身の坂田さん。小学生の頃、京都で見た仏像や仏閣に魅了され、日本の郷土史に興味を持った。京都の大学ではデザインを学び、卒業後はWEBデザイナーとして働いていた。
てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
京都でWEBデザインの仕事をしていくなかで、勉強をかねて遠州地方の昔話とかを色々追っていたら、全部を網羅するように“てんぐ”の昔話がありましたので、土地のアイコンとして面白いかなと思い、てんぐのキャラクターを作りました

地元のお寺や神社を発信するブログのキャラクターとして誕生したのが「てんぐちゃん」だった。
(Q.お気に入りのてんぐちゃんはどれ?)
てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
浜松天狗屋の代表作でもある「鼻ゆれ天狗張子」。最初に商品化した物で、代表作としてお気に入りです

てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
てんぐは兜巾(ときん)という帽子をかぶっているんですけど、てんぐちゃんは遠州ならではのキャラクターなので、頭に“うな重”をかぶせたり、はんてんも浜名湖色だったり

「てんぐちゃん」ができるまで
そんな張子のてんぐ作りはこの部屋で、全ての作業を坂田さん1人で行う。
まずは紙粘土で型を作り、和紙を貼って、のりをつけたら、中の型を外す。胡粉(ごふん)と呼ばれる白い絵の具をつけては天日干しする過程を繰り返し、絵具で色を塗ったら完成だ。
てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
張子自体も遠州地方の文化のひとつでもあるので、遠州地方の歴史をたどるきっかけとして、楽しんでもらえればと思います

3Dプリンターでてんぐちゃんを「記録」
またある日、坂田さんは中区のワーキングスペースに姿を見せていた。てんぐの張子の型を3Dプリンターで作るためだ。なぜ、3Dプリンターを使い始めたのだろうか。
てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
これから何百年何千年経っても、「おらが町」のものとして張子が残ってくれたら嬉しいなと思っているので。データとして残しておけば、私がいなくなっても残るんじゃないかと

さらに、葉うちわにICチップを埋め込んだ現代的なてんぐちゃんも。スマートフォンをかざすと、おみくじが表示される仕組みだ。

新しいアプローチを続ける坂田さんとてんぐちゃんについて、この場所に集う仲間たちは…
クリエーター仲間:
(てんぐちゃんは)独自のキャラクター性もあるので、すごく見ていて楽しいキャラクターだなと思っています
別のクリエーター仲間:
クリエーター・アーティストという感じですね。グローバルにいろいろ広がっていくんじゃないかなと思っています

てんぐちゃん生みの親・坂田吉章さん:
私にとって、てんぐちゃんは本当に相棒といいますか、創作意欲の根源と言いますか。百年後とか千年後に見てくれた子供たちが郷土史に興味を持ってもらえたら、ロマンがあるなと思っております
坂田さんは独学で張子を学んだそう。
てんぐちゃんは毎月19日からインターネットでのみ販売していて、年始には個展も企画している。
若手作家の新たなアイデアで、てんぐちゃんがこれからどのように羽ばたいていくのか注目だ。

(テレビ静岡)