自民の予測議席は237か265か

FNNが10/23、24に行った世論調査による選挙戦中盤の情勢は「自民単独過半数が微妙」ということであった。一緒に調査をした産経新聞は26日の紙面で自民の議席を237と予測している。ただ同日付の朝日新聞は「自民過半数確保の勢い」という逆の見出しだった。議席数は251~279と幅を持たせてはいるが、真ん中を取れば265になり、産経と30近く差がある。なぜなのか。

FNN産経の電話調査に対し朝日は選挙区ではネット調査なので自民に強く出たのかと思ったのだが、翌27日に共同が10/23、24、25、26に行った電話調査による終盤情勢として「立憲伸び悩み」と打ったので、朝日がおかしいわけではないようだ。

ちなみに読売と日経が10/19、20に行った電話調査による「序盤情勢」は産経と似た感じである。10/19から10/26まで順次行われた各社の調査で自民苦戦から自民優勢に変わってきたのかもしれないが、そんなに短期間で有権者の意識が変わるものだろうか。

こう考えてみるとどうだろう。今回の選挙は自民にも、立憲を中心にした野党連合にも決め手がないように感じる。自民は不人気の菅前首相をおろして総裁選で盛り上がったが岸田新首相の支持率は期待したほど上がっていない。一方の野党連合も選挙区調整はうまくいったものの、共産党の政権への関わり方など課題はまだ多い。決め手がないから接戦区が多く、その場合予想は難しい。各社の予測の数字が分かれているのはそういうことではないか。

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無党派層は「判官びいき」する

現時点でまだ投票先を決めていない無党派層はたくさんいる。彼らはどういう動きをするのか。例えば「自民237立憲136」という産経の数字を見た「与党寄りの無党派層」は「こんなに自民が負けては可哀相だ」と「判官びいき」の行動をとって自民に投票しに行くだろう。一方「自民265立憲107」という朝日の数字(平井が計算)を見た「野党寄りの無党派層」は「立憲が増えないのは可哀相だ」とこちらも判官びいきの行動をとるだろう。

メディアの事前予測が投票行動に影響を与えることを「アナウンスメント効果」と呼び、強そうな候補、政党に投票することをバンドワゴン効果(勝ち馬に乗る)といい、弱い側に同情することをアンダードッグ効果(判官びいき)という。バンドワゴン効果はサーカスの楽隊に子供が群がること、またアンダードッグ効果は闘犬のかませ犬に同情することから来ている。

例えば民主党が政権交代を果たした2009年は多くの有権者が民主党という勝ち馬に乗り、民主は予測より議席を伸ばした。逆に2012年に自民が政権を取り返した時は、今度は自民という勝ち馬に乗り、自民が予測より議席を伸ばした。

みんなが「勝った」と言えるフシギな選挙

これに対し今回は「判官びいき」はあっても「勝ち馬に乗る」はないのではないか。産経「自民237立憲136」を見て無党派層が「立憲もっと勝て」と思うか。朝日「自民265立憲107」を見て「自民もっと勝て」と思うか。勝ち馬に乗るほど双方とも決め手がないのではないか。第3極の維新について両紙とも議席3倍増と予測していることが双方に決め手がないことを雄弁に語っている。

今回の選挙は投票率が下がるのではないかと見られている。ということは無党派層があまり投票に行かないということであり、そうであれば極端なアナウンスメント効果は出ないだろう。つまり前述の2種類の「判官びいき」効果もそれぞれ「ぼちぼち」しか出なかったらおのずと結果は予測できる。つまり2つの予測の数字の間の数字になるだろうということである。

試しに2つの予測を足して2で割ったら「自民251立憲122」という数字になった。なかなかそれらしい数字だ。

そしてこの数字は双方にとって悪くない。自民は25減だが、単独で安定多数。菅政権末期の与党過半数割れに比べれば「上等」だ。立憲は13増で120台に乗せていよいよ次は政権奪還を狙える。双方とも責任者はクビにならない。維新は3倍増で大喜び、他の野党も現状維持なら全員が「勝った」と言えるフシギな結果になるかもしれない。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】