背中に固い甲羅を持つアルマジロは、敵の攻撃からその鎧のような背中で身を守っている。しかし、そんなアルマジロの固い背中が「意味ないのでは?」と思える寝姿がTwitterに投稿され、話題となっている。
投稿された1枚の画像には、身を守る甲羅を下に“あおむけ”の姿勢で寝るアルマジロの姿。

柔らかそうなお腹を丸出しに、手足や尻尾までもが緊張することなく力が抜けているのが分かる。ライトの光がちょうどよく体に当たっており、ぬくぬくと温かそうだ。
これは静岡県の伊豆シャボテン動物公園で撮影されたもので、この様子には投稿者も「あまりの無防備さに笑ってしまいました」と話しており、「完全に野生を棄て去ったアルマジロ」と表現していた。

Twitterでも「無防備すぎて笑った」「自身の防御手段を完全に捨てて寛いでやがる…」「可愛い!」といったコメントが寄せられ、5万のいいねが付く話題となっている(11月2日時点)。
あおむけで寝る習性がある
こんなにもリラックスした無防備な寝姿には、癒されることだろう。しかし、これは動物園だからこそ見せる無防備さなのだろうか?普段からこの可愛らしい寝姿を披露しているのだろうか?
伊豆シャボテン動物公園・アルマジロ飼育担当の滝口優さんに話を聞いてみた。
ーーこのあおむけで寝ているアルマジロについて教えて。
名前はラグ。ムツオビアルマジロのオスで、性格は食いしん坊です。

ーー普段からラグくんはあおむけで寝ているの?
ムツオビアルマジロにはあおむけで寝る習性があります。ラグだけでなく、もう一頭(別の部屋で飼育しているムツオビアルマジロ)もあおむけで寝ているときがあります。

ーーライトでお腹を温めていたりする?
元々あおむけで寝る習性があるので、ライトでお腹を温める為に寝ているわけではありません。
ですが、最近は寒い日も多いのでライトの下で寝ていることもあります。
ーーどれくらいの時間あおむけで寝ているの?
朝ごはんを食べた後は満足して夕方まで寝ていますが、あおむけの時もあれば、うつ伏せで寝る
場合もあります。

安心できる場所だからこその寝姿
ーー野生のアルマジロもあおむけで寝ることはあるの?
ほかの動物たちの使った巣穴を再利用するので、安心できる場所と確信すればあおむけになって
寝ると思います。
ーーそもそもムツオビアルマジロとはどういった動物なの?
生息地域は南アメリカ。特徴は爪は頑丈で破壊力があります。巣穴を掘るのが得意です。食べるものは雑食性で、野生下ではシロアリ、果実、小動物など何でも食べます。動物園では、バナナ、リンゴ、馬肉、鳥肉、ウズラの卵などを食べています。大きさは約50cm、重さは約5770g。

ーー普段はどのように過ごしている?
餌をもらうときには活発に動き回り、その後はよく寝ています。あおむけの他、うつ伏せや、時々横向きで寝ている場合もあります。
お腹の防御力はほぼない
ーーちなみに、固い背中側、柔らかそうなお腹側のそれぞれの触り心地を教えて。
背中はやはり固くごつごつしていて、少し毛も生えています。小さな鱗が頑丈に張り巡らされて
いる感じです。お腹の方はプニプニで、触り心地はとても気持ちが良いです。場所によりすべすべもしています。
ちなみにお腹の防御力に関しては、お腹にも多少の筋肉はあると思いますが、ぽよぽよしていてほぼないようにも感じられます。

ーー飼育員としてこういったあおむけで寝ている姿を見てどう思う?
展示場の鍵を開けて入っても気づかない時は、そーっと近づいて無防備な寝姿を見てかわいい
なぁ、とニヤついています。

なお、伊豆シャボテン動物公園では2頭のムツオビアルマジロを飼育しているが、それぞれ別々に飼育しているのだそう。1頭で暮らしているラグくんは自分の周囲には危険がないと判断し、安心してあおむけで寝ているようだ。
飼育員が部屋に入っても、防御力がほぼないというお腹を出した寝姿を見せてくれているのは、飼育員たちへの信頼のあらわれなのかもしれない。