自動運転などに活用

日本版GPSの後継機を載せたH2Aロケットの打ち上げが成功した。

26日午前11時19分に、種子島宇宙センターから打ち上げられたH2Aロケット44号機。

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搭載された衛星は予定された軌道に投入され、打ち上げは成功した。
今回打ち上げられた衛星は、2010年に打ち上げられ設計寿命の10年を迎えた準天頂衛星「みちびき」初号機の後継機。

日本版GPSとも呼ばれ、車の自動運転などに活用が見込まれる。

現在は4機の衛星が日本上空を飛行しているが、さらに精度を向上させるため、政府は2023年には7機に増やす計画だ。

多岐にわたる活用事例

「みちびき」の7機体制が整うと性能がぐっと上がり、センチ単位の正確な位置情報が得られるようになる。
その活用例は、交通、レジャー、福祉、農業など多岐にわたる。

まず、様々な交通違反を宇宙からチェックできるようになり、安全運転の向上などが期待される。

レジャーでは、ゴルフボールのカップまでの距離をスマートフォンで正確に把握できるようになる。

福祉の面では、目が不自由な方が街を歩く際のアシストをしてくれる。
信号機の色の案内や登録ルートから外れた場合、警告音で知らせてくれる。

また、人手不足に悩む農業分野では、無人トラクターの実証実験がすでに行われている。

「環境・動力・水素」で日本の産業強化へ

三田友梨佳キャスター:
「みちびき」の活用はロケットの打ち上げに成功してこそです。
これについて、もの作りに詳しい早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに聞きます。

いまロケットは国家プロジェクトから民間の経済活動に代わっていますが、この分野で日本は世界と戦えるのでしょうか?

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
日本のロケット打ち上げの精度は非常に高く、もはや成功して当たり前のようになっています。
軍事用ロケットを持たない国で、これだけのレベルのロケットを実現できていることは素晴らしいことです。

一方、コストの面で課題があると指摘されていますが、日本のロケットはコスト以外の面で国際競争力をつけられるかもしれません。
それが地球への優しさです。

三田キャスター:
地球に優しいロケットですか?

長内厚さん:
大型ロケットに分類されるH2Aは、液体燃料ロケット推進剤は環境負荷が低い水素になっています。

一方、中国が衛星を打ち上げるロケットの「長征11号」などの固体燃料ロケットは、打ち上げの際、コストは低いのですが、推進剤にアンモニウムやアルミニウムなどの物質を使っていて、環境への影響が懸念されています。

中国でもこの環境負荷の低減が課題になっていますが、日本でも環境に優しい水素を燃料にしたロケットを使う、あるいは、固体燃料でもハイブリッド技術だとか環境負荷の少ない燃料の開発が進んでいて、環境に優しい技術が売り込みの戦略になるかもしれません。

三田キャスター:
今回はロケットですが、水素は地球に優しい動力としていま注目されていますよね?

長内厚さん:
水素で環境対策という意味では、自動車や船の水素エンジンなどの環境技術と同じ方向にありますし、様々な場面で水素の利用が増えればコストダウンに繋がるかもしれません。

H2Aロケットを含め、いま日本で開発が進んでいる新しい技術の多くは環境への配慮を織り込み、意識の高いものと言えます。

コストダウンだけが競争力を高める手段でなくなってきていることは日本には良いチャンスで、「環境」「動力」「水素」という現代のキーワードを掲げて日本が地球のために出来る事、そこで日本の産業を強くしていくことも考えていけると思います。

三田キャスター:
水素はエネルギー供給の多様化と脱炭素を実現する切り札とされていますが、そうした強みを活かして持続可能な宇宙開発が進んでいくことが期待されます。

(「Live News α」10月26日放送分)