三大疾病の1つである脳卒中。発症した場合は早期の治療が重要となるが、そのような中で「くも膜下出血なのか?」「脳梗塞なのか?」などをAIが予測診断するアプリケーションが開発された。

脳卒中は救急搬入数に占める割合が多い病気で、突発的な発病の傾向があり、「くも膜下出血」「脳梗塞」「脳出血」「主幹動脈閉塞」など、多くの病状へ分類される。救命はもちろん、片麻痺などの後遺症を抑えるためにも、迅速で、なおかつ最適な急性期治療が求められるという。

しかし現在、救急隊の判断が医療機関に共有されていない状態のため、受入病院到着後の診断によって、病状を特定している。

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このような状況を解消しようと、現役救急医が設立した千葉大学発のスタートアップ「Smart119」が、救急隊員の精度を高め、専門医や設備を持つ医療機関の迅速な治療を実現するために、脳卒中をAIで予測診断できるアプリを開発した。

これは、脳卒中の可能性がある救急患者約1500人の情報を収集して活用。このうち1200人のデータを機械学習させ、分類アルゴリズムを設計。そして、残り300人のデータで検証し、精度の高い結果が示されたという。

アプリは救急隊が使用することを想定。使い方は、診断専用ページから患者の容体(血圧、頭痛、痙攣、麻痺の有無など)や当日の天気の情報などを入力する。するとAIが脳卒中の可能性と、脳卒中の中で「くも膜下出血」「脳梗塞」「脳出血」「主幹動脈閉塞」などでどの可能性が高いかを判断するというものだ。

そして、受け入れ先の医療機関を自動選択することで、受け入れ要請が実施される。この情報を基に、受け入れ医療機関では、専門医の招集や緊急手術への準備を救急車到着前に整えることができる。

脳卒中予測アルゴリズム(画像提供:Smart119)
診断画面:この場合、脳卒中の可能性が85%。脳卒中の中で、主幹動脈閉塞の可能性が27%、くも膜下出血の可能性が56%となる(画像提供:Smart119)

現在は開発した段階で、本年中に千葉市消防局が保有する救急車への実装を見込んでいるという。

これを利用することで迅速な治療ができるようになるのであれば、ぜひとも早く実用化されてほしいが、AIの診断予測について実際に病院に勤務する医師はどう感じているのか? 開発したSmart119の担当者に詳しく話を聞いてみた。

迅速な対応で、患者の命が助かる

――なぜ開発することになった?

救急搬送される疾患の中で、脳卒中と急性心疾患は早く搬送し、専門医の治療を開始すれば、患者さんの命が助かる。また転帰(疾患・怪我などの治療における症状の経過や結果)がよくなる可能性が高まる疾患であるからです。


――そもそも脳卒中の中で「くも膜下出血」「脳梗塞」「脳出血」「主管動脈閉塞」を医師はどうやって判別している?

脳卒中の中の「くも膜下出血」「脳梗塞」「脳出血」「主管動脈閉塞」は、症状より推測し、画像検査で最終的に診断します。


――この種類によって、救命方法も大きく変わってくる?

はい、脳卒中の種類によって、治療方法は異なります。

天気を入れることで判別精度が向上

――入力する情報はこれまで医師や救急での判断材料になっていたもの?

はい、いままで脳卒中を判断するスケールがありました。一般的にそれらのスケールは今回のアルゴリズムの入力値より項目が多くなっています。今回の研究により脳卒中を判断するのに必要な項目を絞り込むことができました。


――天気を入力することが、判別にどう関係してくる?

元々医師の経験則から、天気によって脳卒中や急性心疾患の搬送数が変わるというものがありました。そこで、天気情報を入れて機械学習したところ、判別精度が上がることがわかったので、入力変数として使うことにしました。

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AIが出す予測診断は「医師の感覚値と同じ」と評価

――医療従事者にとってどんなメリットがある?

脳卒中である可能性が高い、また可能性が高い脳卒中のサブカテゴリについて事前に分かれば、手術など治療の準備をして搬送される患者を待つことができます。


――AIの診断を試した医師からはどんな声を聞く?

脳神経外科の医師に、いくつかのケースで入力値をいれてもらったところ、AIが出す予測診断は「医師の感覚値と同じ」との評価をいただきました。


――いつからどのように使われるの?

今期中に、千葉市消防本部の救急車に搭載されている救急情報システムに導入。データ入力すると、アルゴリズムの解析結果が表示されるようにする予定です。


脳卒中の予測診断アプリは、まず千葉市の消防局で導入される。多くの地域の救急車に導入されるようになって、より多くの患者の命を救ってほしい。