AsMama甲田氏(右)グリーンパパプロジェクト吉田氏(真ん中)
AsMama甲田氏(右)グリーンパパプロジェクト吉田氏(真ん中)
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先月27日、安倍首相の全国一斉休校の要請に、共働きやシングルの子育て世代はパニックになった。有休取得やリモートオフィスが可能ならまだいいが、どちらかが休まなければ一人でいられない幼い子ども、留守番が難しい低学年の児童を一日家においておくことになる。

今こそ知り合い同士で「子育てシェア」を

「日本全国の大人たちが力を合わせて、身近な人たちに対して『よかったら私が送迎するよ』『よかったらうちでみるよ、子どもたち同士遊ばせない?』ということを、子育てシェアで輪番託児、ストレスフリー託児で乗り越えればいいなと思っています」
知り合い同士による子育て共助の仕組み「子育てシェア」を提供する株式会社AsMama(以下アズママ)は、困惑する全国の子育て世帯に向け、昨日新たな取り組みを発表した。
「子育てシェア」サービスは、ネットを通じて子どもの送迎や預かってくれる人を探すマッチングアプリで、無料で登録できる。
今回発表されたのは、このサービスで初めて「預かるよ」を発信し、支援提供に至った人に褒賞を支給するというものだ。

新たな取り組みの狙いをアズママの代表取締役、甲田恵子氏はこう言う。
「27日夕方、政府が発表した小中高休校要請を受け、頼りどころを失った日本中の親子の困惑の様子を目の当たりにし、いまこそ当社が取り組んできた『子育てシェア』が、親子ともに最もストレスなく、孤独にならずに、いまを乗り切ることが出来ると確信しました。そこで、全国の保護者の実態を生の声で共有しあう一方、頼り合いに勇気をもって一歩を踏み出す人たちを奨励するために、新たな支援者に対して総額100万円を自社負担して褒賞することを決意しました」

「子育てシェア」
「子育てシェア」

甲田氏は2009年、これからの人口減少社会において地域や核家族が抱える課題を解決するには、地域の知り合い同士で安心安全に頼り合える社会基盤整備が必要だと考えアズママを創業した。システム利用料が一切かからず、全利用者に保険が適用されている「子育てシェア」を開発し、企業や自治体と連携しながら普及している。送迎託児の依頼には1時間500円~700円、食事提供300円などの謝礼ルールを設けていることで、頼む側も気兼ねなく利用できる仕組みとなっている。「子育てシェア」の登録者数は現在約7万3千人だ。

「企業は男性が柔軟に働ける環境を」

会見には、NPO法人グリーンパパプロジェクトの代表理事、吉田大樹氏もいた。
グリーンパパプロジェクトは、グリーンな資源(農林、食など)を通じてパパと家族の新しいライフスタイルを提案するソーシャルプロジェクトだ。
吉田氏は「現在、非正規で働く妻が必死に対応をしている状況が見受けられる」と指摘した上で、企業に対して男性が柔軟に働ける環境整備を求めた。
「正規で勤める夫には年次有給休暇以外にも、テレワークやフレックスタイムなど様々な施策が講じられているケースが多い。今回の事態を受けて、企業側も特に男性側が柔軟に働ける環境を優先して、乗り切る工夫をしてほしいです」

さらに吉田氏は、今回の事態をきっかけに、社会的な変化が訪れることを期待する。
「今回の休校の措置を受けてマイナス面が多く報じられていますが、この事態をきっかけに男性側が『いま自分でできること』は何かをしっかりと考え、行動に移せるようになったほしいです。また、若者から年輩まで各世代がともに考えながら、幅広い議論が起こり、社会的なうねりの原点となるように期待したい」

今こそ男性の働き方改革を

今回の事態を乗り切るために、男性・父親はどう行動するべきだろうか?
NPO法人ファザーリング・ジャパンの代表理事の安藤哲也氏は、こうアドバイスする。
「子どもの世話は母親が当たり前ではなく、父親でも『本当に仕事を休めないのか』『テレワークできないか』と考え、可能なら子どもの世話や家事をして家族を守ること。また地域でも、ひとり親や障がいがある子がいる家庭もあり、余裕がある人は手を差し伸べてあげて欲しい。今回の休校問題で男性も働き方の見直しや地域社会への貢献などを考えるきっかけになってほしいですね」

安藤氏は今回の要請は早計だったのではと疑問を呈しつつ、働く女性・母親だけが苦しんでいる状況を国・社会全体で変えるべきだと言う。
「学校等の休校で母親だけが大変な思いをしている点については、これまでやってきた女性活躍や働き方改革は何だったのかということ。子育てや介護がある女性社員がキャリアを継続できるためにも、父親・男性が子どものことで休める・帰れる社会を当たり前にしたい。そのこともこれを機に皆で考えるべきだろう」

この事態を女性活躍や働き方改革を進める大きなチャンスにすべきなのだ。

【執筆:フジテレビ 解説委員 鈴木款】

鈴木款
鈴木款

政治経済を中心に教育問題などを担当。「現場第一」を信条に、取材に赴き、地上波で伝えきれない解説報道を目指します。著書「日本のパラリンピックを創った男 中村裕」「小泉進次郎 日本の未来をつくる言葉」、「日経電子版の読みかた」、編著「2020教育改革のキモ」。趣味はマラソン、ウインドサーフィン。2017年サハラ砂漠マラソン(全長250キロ)走破。2020年早稲田大学院スポーツ科学研究科卒業。
フジテレビ報道局解説委員。1961年北海道生まれ、早稲田大学卒業後、農林中央金庫に入庫しニューヨーク支店などを経て1992年フジテレビ入社。営業局、政治部、ニューヨーク支局長、経済部長を経て現職。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。映画倫理機構(映倫)年少者映画審議会委員。はこだて観光大使。映画配給会社アドバイザー。