親子で営む中華食堂。長野県・上田駅の近くに店を構えて半世紀、確かな味と良心的な値段で人気だ。コロナ禍も親子で踏ん張る“町中華”を紹介する。

「安くてうまい!」がモットー 昔ながらの味を守る店主
熱々の麻婆豆腐をラーメンに、野菜たっぷりのあんかけ焼きそば。

上田駅のお城口側・天神通りにある「中華・モリタ」。手頃な価格でお腹いっぱい食べられる、いわゆる“町中華”だ。

客:
リーズナブルでボリュームもある
客:
いつも実家に帰ってきた感じで食べに来られるところだなと
主は森田高次さん(77)。ラーメンやあんかけ焼きそばなど、昔ながらの味を守っている。

長男の忠さん(43)は、四川料理の味を取り入れたメニューを担当している。

長男・忠さん:
これ担々麺、練りごまと豆板醤が主
店は今年で54年目。コロナ禍を、親子で腕を振るう自慢料理で乗り切ろうとしている。
ラーメンの価格は変えず…安さとうまさの裏にこだわり“自家製麺”
オープンは昭和43年。都内の中華料理店などで経験を積んだ高次さんが、24歳の時に実家である今の場所に店を出した。

当時は多くの飲食店がひしめき合い、競争は激しかったという。
森田高次さん:
卵で、24歳でしたから無我夢中で。どうなるのこうなるのって問題じゃない。朝8時半から夜中の2時まで頑張って、だんだんお客さんもついてきた

その後、景気低迷や郊外の店に人が流れた影響で、駅前に昔からあった飲食店はだいぶ減った。「モリタ」が荒波を乗り越えることができたのは、味はもちろんだが価格に理由がある。
しょうゆラーメンの価格は520円。これは消費税が10%になったからで、税抜き価格にするとワンコイン以下だ。

ここ15年ほど、実質的な価格はほとんど上げていないのだ。通ってくれる客のため、ラーメンは「ギリギリの価格設定」にしている。
森田高次さん:
常連さんが来てくれている。ラーメンに関しては、儲けなきゃいけないという考えではない。ひとつくらい安くてもいいじゃないかと
店の地下に安さの秘密があった。

森田高次さん:
これで作るんだよね
店の麺は40年以上、こだわりの自家製麺。仕入れるよりも安く抑えることができるという。

森田高次さん:
(自家製麺だと)つるつるで、のどごしがいい
客:
昔ながらの中華そばみたい。今、なかなかこういうのを食べられない
長男開発のメニューが新定番に 食べやすい辛さが魅力!
店は13年前、一気にメニューが増えた。長男の忠さんが新たな風を吹き込んだからだ。専門学校卒業後、一度は製造業についた忠さんだが…。

長男・忠さん:
物心ついたときからここにいたので、日常というか、心に残ってたものがあって。このお店を守りたいではないけど、自分もここでやっていきたい。1回、外に出て思ったのがきっかけ
父親の後を追って料理人の道へ。都内の四川料理店で修業を積んだ。

13年前に店に入ると、甘みが特徴のテンメンジャンを生かした辣醤麺(ラージャーメン、780円)や麻婆麺(750円)など新たなメニューを導入した。

客:
あとに残る辛さではなくて食べやすい辛さ
客:
いい味してる。(食べられるところが)意外と少ないんですよね
森田高次さん:
素晴らしいと思う、私にはできないことだから。このメニューだけでも食っていけるような、おいしいものを作っていけば、それはそれでいい

黙々と厨房で料理を作る親子。2人を見つめてきた母・あき子さんは…。
母・あき子さん:
あんまりしゃべらないんですけど、通じ合ってるんじゃないですか。息子が逆らわないから、うまくいってるんじゃないかな

コロナ禍で厳しいが、お客のために力を合わせて…
店は今、コロナの影響を受けている。
長男・忠さん:
客足が全然、途絶えちゃって…。半分、感覚では3分の1くらい
ランチと並び売り上げの柱だった夜の宴会は、1年以上も中止。上田圏域は感染者の急増で度々、時短要請の対象となり特に厳しい状況が続いた。それでも時短要請の期間も休まず店を開けてきた。

長男・忠さん:
常連さんがその中でも来てくれるので、変わらずに。「ワクチンをやっと2回受けたよ」と言って、また来てくれるお客さんもいる
この日の夜も…。
客:
電車通勤なもんで、駅から近いので助かっている
客:
安くて焼きそばが好きで、これからまだまだ続けていってもらいたいなと
森田高次さん:
こうやって来てくれれば張り合いもある。ありがたいわな

昔ながらの味を守る父親。修業して新定番を作った息子。コロナ禍も親子で踏ん張る“町中華”だ。
長男・忠さん:
80周年、目指します
――まだまだいける?
森田高次さん:
やりますよ!当然ね。辞める気はない、せっかくやったんだから。1日おき、毎日という客もいる。そういう方のためにも、頑張ってやらなくちゃ
(長野放送)