日本はあと数年で、国民の3人に1人が65歳以上となる超高齢社会に突入する。ここで喫緊の課題となるのが介護人材の確保だが、いま新型コロナウイルスの影響で就職活動の合同説明会が次々と中止されている。今後5年で不足する介護人材は34万人に上ると推定されている中で、介護現場の人材確保難はいよいよ深刻だ。
合同説明会中止は介護業界の死活問題

「介護の仕事は残念ながら、現時点では学生にとって関心が高い職種ではありません」
こう語るのは、若者の介護業界への参入・定着の支援に取り組み、日本最大級の介護領域のコミュニティを運営している株式会社 Join for Kaigoの代表取締役、秋本可愛氏だ。
「多くの企業は合同就職説明会などで、学生と直接話す機会を通じて、介護の仕事や自社に関心を持ってもらおうとしています。ですから最も就活生の活動量が高い3月に、学生との接点を持つ機会が失われるのは、介護・福祉の法人にとって死活問題です」
介護・福祉法人はいま、リスクの高い高齢者の命を守るため感染予防対策に追われている。さらに「全国一斉休校」が加わって、介護現場でも人員確保が難しくなってきた。今そこにある危機を乗り越えるため、採用活動を一旦止めざるを得ない介護事業者も出てきている。採用活動が遅れて人材採用ができないとなると、介護人材不足は今後ますます深刻になるのだ。
オンラインで就活生に出会う場を

「だからこそ介護・福祉法人がみんなで連携し、学生に介護・福祉の仕事にまずは興味を持ってもらう機会を作ろうと企画しました」
こうした状況に危機感を抱きJoin for Kaigoでは、「介護・福祉のオンライン合同説明会2021」と題した就活生向け説明会の動画公開サイトをつくった。
このサイトでは、全国の介護・福祉事業を運営する法人と連携して、情報を掲載、説明動画をまとめて公開している。合同説明会という直接会って情報収集ができる機会が失われ、不安な思いをしている就活生にとっても朗報だ。
サイトでは先月28日から掲載する法人の募集を開始し、これまでほぼ全国の大企業から小規模まで50法人の申し込みがあった。
サイトに申し込んだ社会福祉法人「長崎厚生福祉団」の千々岩源大さんはこう言う。
「今年の新卒採用がスタートする中、全国的に合同企業説明会が中止されて、学生にリアルな場でアプローチすることができなくなりました。そのような中、オンライン合同説明会の情報をTwitterで見つけ、リアルな場ではなく、ネット上でも同じような場を提供できるよい機会だと考えて、すぐに申し込みしました。これで多くの方にサイトを見ていただき、福祉の仕事、当法人に興味を持っていただければありがたいです」
超高齢社会で介護崩壊させないために
今後このサイトは、「まずはより学生のみなさんにとっての選択肢を増やすため、早急に100法人の掲載を目指す」(秋本氏)予定だ。
また、リアルタイム配信でのオンライン合同説明会企画や、介護現場の職員のリアルな声などの企画の実施なども検討するという。
秋本氏はいう。
「就活生はもちろんのこと、このサイトをご覧になった皆さんが、介護・福祉の仕事の新たな一面に気が付く、そんなきっかけとなれば嬉しいです。そして、何よりも1人でも多くの就活生が、納得して就職先を選ぶことができれば」
超高齢社会を迎える日本にとって、人材不足による介護現場の崩壊は何としても避けなければならない。そのためにもこうした若い介護事業者の取り組みに、国を挙げたバックアップが求められる。
(執筆:フジテレビ解説委員 鈴木 款)