FNN記者のイチオシのネタを集めた「取材部 ネタプレ」。今回は「ネタプレMORE」。取り上げるのは、政治部デスク・千田淳一記者が伝える「どうなる新政権の人事」。

安倍氏、麻生氏へ配慮した人事

政治部デスク・千田淳一記者:
10月1日、自民党役員人事が決定をし、岸田内閣の閣僚人事は週明けの発足に向けて調整が続いています。まず党役員人事です。

幹事長に麻生派の甘利明さん(72)、総務会長には当選3回の若手、細田派の福田達夫さん(54)を抜擢しました。
政調会長に総裁選を戦った高市早苗さん(60)、そして空席だった副総裁ポストを3年ぶりに復活させて麻生副総理(81)が就任することになりました。

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これらから岸田さんのさまざまな思惑が透けて見えます。

まず1つは「安倍前総理と麻生元総理への配慮」です。安倍さん麻生さんそして幹事長になった甘利さんの3人は、盟友関係にあり、その頭文字をとって「3A」と呼ばれています。

岸田さんは、ポスト菅に向けてこの「3A」との連携をはかってきました。その象徴となるのが、6月に開かれた岸田さんが会長を務める議員連盟の会合です。ここに3Aが勢揃いしました。安倍前総理、麻生副総理そして甘利税調会長、岸田さんの4人です。

こうした作戦の成果なのか、今回の総裁選で岸田さんは安倍さんの影響力が強い細田派、そして麻生さんが率いる麻生派から一定の支持を受けて、特に決選投票ではこれが大きくものをいい、ライバルの河野さんを圧倒しました。

そして、今回の人事にはその3Aへの配慮が表れています。甘利幹事長を通じて今後も安倍さん麻生さんとの関係を密接にコミュニケーションを取ろうという狙いも見て取れます。

そして、他にも安倍さん麻生さんへの配慮がうかがえます。安倍さんが強く支持をしていた高市さんを総選挙の選挙公約を取り仕切ることになる政調会長に据えたのもそうです。

さらに、閣僚人事にもそれは強く表れています。財務大臣には、9年近く務めた麻生さんの後任に鈴木俊一さん(68)を起用しましたが、実は鈴木さんは麻生さんと密接な関係にあります。

鈴木さんは鈴木善幸元総理の息子で、鈴木さんのお姉さんが麻生さんの奥さんなので、麻生さんは義理の兄にあたることになります。

こうした関係から、麻生さんが財務省で築いてきたものを壊さないようにするという配慮も見てとれます。

また、内閣の要となる官房長官には細田派の松野博一元文部科学大臣(59)の起用が内定しました。実はこの官房長官と幹事長というのは特別な存在なんです。

官房長官は、政府内の人事や官邸の機密費など巨大な権力を持っている内閣の要なんです。そして、幹事長ポストも二階さんがそうだったように、選挙で議員を公認する権利や党のお金を握る要となります。

岸田さんとしては、この権力とお金を握る最重要ポストを麻生派と安倍さんの影響が強い細田派に託したということになります。

河野さんは事実上の“冷や飯人事”

政治部デスク・千田淳一記者:
一方で、総裁選の最大のライバルだった河野さんは、今回「広報本部長」という役職に就きました。

加藤さん、名前だけを聞くとそれなりに重要ポストのように見えると思いますが、どう見えますか?

加藤綾子キャスター:
外に向けて党の顔として活動されるっていうようなポストなのかなと思いますが、そうじゃないんですか?

政治部デスク・千田淳一記者:
ここ最近に広報本部長を務めた方たちを見ていきます。この中で総理候補と言われるような印象の方は小池さんを除いてはいないですよね。

加藤綾子キャスター:
そうですね、ということは…。

政治部デスク・千田淳一記者:
つまり、広報本部長はそれほど重要なポストではなく、河野さんの発信力を生かすという大義名分の元での事実上の“冷や飯人事”だとみる向きが多いそうです。

一方、岸田カラーが現れたのが、当選3回の若手、福田達夫さん(54)を党の最高意思決定機関である総務会を取り仕切る「総務会長」に据えたことです。この総務会長というのは党の重鎮が就くことが多いです。

福田達夫さんは、祖父の福田赳夫さん、そして父親の康夫さんがともに総理大臣というサラブレッド中のサラブレッドですが、当選3回での総務会長抜擢というのは異例中の異例です。

では、なぜ福田さんを抜擢したのかと言うと、福田さんは今回の総裁選で派閥にとらわれない「自主投票」を訴えた若手・中堅のおよそ90人のグループ「党風一新の会」で中心的な役割を果たしました。

今回の人事は、岸田さんが掲げた若手登用を実現しつつ、福田さんが中堅・若手の不満をうまくくみ取った手腕への評価とも言えそうです

“自民党は変わった”と示すのか

政治部デスク・千田淳一記者:
そして、今後岸田カラーが発揮されるか注目となるのが、女性閣僚はこれから何人入るかです。

加藤綾子キャスター:
岸田さんはイットに出演した際に5人以上起用すると言っていましたよね。

政治部デスク・千田淳一記者:
となると誰が入閣するのかですが、菅内閣の上川法務大臣(68)と丸川オリンピックパラリンピック担当大臣(50)が引き続き入閣するかどうか、それから総裁選で戦った野田聖子さん(61)が入閣するのかどうか、さらに東京オリンピックパラリンピック大会を取り仕切った橋本聖子さん(56)が再入閣するかどうかも注目です。

そして、小泉さん(40)ですが、まさに敵陣営の“切り込み隊長”ということもあったわけですが、総選挙を前にして有権者の人気も活用したいという思惑も考えられるので、小泉さんがこれからどういうポジションで処遇されるのかが一つのポイントとなってきます。

加藤綾子キャスター:
今見てみると、岸田派の方はいないんですか?

政治部デスク・千田淳一記者:
そうなんです。まさに岸田派に加えて二階派もいないんです。岸田さんの自身の派閥も、それから二階派をどういう形で処遇するのかということも注目点となります。
週明けの新内閣発足に向けて岸田さんが自民党は変わったというカラーを示すのかどうか注目点となります。

加藤綾子キャスター:
齋藤さんいかがですか?

明治大学教授・齋藤孝さん:
総裁選で戦ったライバルの登用はもう少しあるかなと思いましたが、甘利さんが幹事長になるということであると、甘利さんが以前抱えている問題があるわけで、それはすっきり説明してほしいというのはありますね。

岸田さん、やっぱり総理大臣ということであれば、個としての強さっていうのを出すような、人事以外でもリーダーシップを見せた方が改革の機運が盛り上がると思います。

加藤綾子キャスター:
人の話を聞いて、そして発信力も問われてきそうですね

(「イット!」10月1日放送より)