あなたは「エコーチェンバー」の中にいる?

Twitterなどで趣味が合う人をフォローしていると、自分の意見に対して似た意見が返ってくることがあるだろう。

そんな状況で自分と似た考えや思想が集約された結果、まるで自分の意見が社会全体の意見のように錯覚してしまうことを「エコーチェンバー現象」と呼ぶそうだ。

あなたは「エコーチェンバー現象」に囚われ、偏った意見に染まっていないだろうか?自分を取り巻く情報や意見の偏りは自覚しにくいものだが、東京大学教授で計算社会科学者でもある鳥海不二夫氏は、Twitterでの偏り具合が一目でわかるツール「エコーチェンバー可視化システムβ版」を9月27日公開した。

このシステムの使い方は、まず「Twitterにログイン」ボタンを押して、次に「連携アプリを認証」をボタンを押す。

そして「エコーチェンバー可視化」を押すと、あなたが見ているタイムラインやフォローしているユーザの偏り度合いを分析し、データとグラフとして表示されるのだ。

出典:鳥海不二夫教授のnote
この記事の画像(6枚)

最上位に表示される「エコーチェンバー度」とは、自分も含めたタイムライン上の人が、Twitter全体と比べてどのくらい偏った話をしているかを数値で表したもので、数値が高いほど偏っていることになる。

さらに、この数値を他ユーザーと比較したグラフも表示される。記事執筆時点では「平均エコーチェンバー度」は3.41となっており、筆者も試したところ3.03で「偏りは標準的」と表示された。

出典:鳥海不二夫教授のnote

同システムは他に、フォローしているユーザーがリベラルか保守かを示す党派性をグラフ化したり、タイムライン上のユーザーが興味のある言葉をワードクラウドで可視化するなど様々な情報を表示する。

出典:鳥海不二夫教授のnote

鳥海教授は自身の分析結果を見本にして解説ページを公開しているのだが、タイムライン上のユーザーが興味のある言葉をよく見ると、「ワクチン」「感染」「検査」などの言葉が並んでいる。

この結果に教授は「ワクチン関連,エンジニア,研究者などがタイムラインにいることが推測されます.偏ってる!」と自己分析した。

また、もしタイムラインに全く偏りがなければ「エコーチェンバー度」はゼロになるのだが、教授は「個人レベルで完全に偏りのないタイムラインを作ること自体が不可能なのかもしれません」としている。

なぜ偏りをゼロにするのは難しいのか?そもそもどうして、このシステムを作ろうと考えたのか? 鳥海教授ご自身に直接聞いてみた。

カロリーみたいに「偏り」も意識した方が良い

――なぜ「エコーチェンバー可視化システム」を作ろうと思った?

計算社会科学という研究テーマで、Twitter等ソーシャルメディアのデータを分析しているのですが、様々なデータの分析をしていると、特定の情報だけを見て判断を行っているユーザが一定数いるように見えるため、自分がどのくらい偏った世界にいるのか可視化できると良いのではないかと思ったためです。

現代社会は情報があふれており、一種の情報飽食な時代になっています。一人当たりの情報の可処分可能時間を考えると、興味のある情報を消費するだけでも情報取得に費やす時間が終わってしまいます。

自分の興味のある情報だけで「お腹がいっぱい」になってしまっているといえるでしょう。そのため、放っておくと自分の好きな情報だけを見るようになってしまい、自分がバランスよく情報を見ているのかどうかの判断を客観的に行う方法がありません。

そこで、このアプリで、食事をするときにカロリー表示を見ることがあるように、Twitter上での偏りを見ることで自分がどんな情報を摂取しているのかの理解を深められればと考えています。

高カロリーの食事をとってはいけないわけではありませんが、自分が高カロリーの食事をとっていることは意識した方が良いように、自分が見ている世界が、社会全体においてどのような立ち位置なのかが理解できれば良いかなと思って作ったアプリです。

「エコーチェンバー度」は低いほどいい?

――やっぱり「偏っていない」ほうがいいの?

偏っていることを認識していることが大切だと思います。趣味で使っているツイッターアカウントなどは偏っていて当たり前ですので、それ自体が悪い事とは思いません。

ただ、それが世界のすべてだと思ってしまうと、実際の社会と乖離してしまうと思いますので、その点を意識してもらえれば良いかなと思います。


――「完全に偏りのないタイムラインを作る」のはなぜ不可能?

日本にはTwitterのアカウントが4500万あると言われていますので、それを満遍なくバランスよくフォローしたりタイムラインを観たりすることは不可能です。


――公開してどんな反響があった?

「普通」という声が一番多かったです。中には「自分はこんなに偏っていない(党派性はない)。これはおかしい」という方がいて、「おお、なんと見事なエコーチェンバーの中!」と思いました

自分が普段、どんな情報に触れているかを意識することはほとんどないだろう。あなたも一度、このシステムで自分が触れている情報の偏りを可視化してみてはいかがだろう?

なお、筆者は自分の「エコーチェンバー度」を見るとどことなく恥ずかしい気持ちになったが、鳥海教授は「タイムラインが偏っていたり、偏っていなかったりすること自体が恥ずかしいことではないと思います。単に、ああ、そうなんだ、と思うためのアプリですので」と話していた。