人と人をつなぎながら、埋もれがちなアート作品に光を当てる新潟・上越市の小さなお店を取材した。

個性的な絵や雑貨 障害のある人が制作

「ふふふのお店」は、新潟・上越市西城町で2021年3月にオープンした。
ユニークな名前の店には、豊かな色彩の絵やかわいい絵柄のマグカップ、さらにはリアルな動物のフェルト作品など、さまざまな商品が並ぶ。

ふふふのお店(新潟・上越市)
ふふふのお店(新潟・上越市)
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店長の坂野健一郎さんに、商品について説明してもらった。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
このタイルトレーは、高田特別支援学校の生徒が協力して作っている

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
このトラは、いろいろな理由で学校に行きづらい中学生が作っている。なかなか学校に行けない日、その時間を使って自分なりの表現をしている

「ふふふのお店」では、心や体に障害のある人が制作したアートや雑貨を中心に展示販売している。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
障害や福祉は、イメージ的に“かわいそう・大変そう”であったり、“障害があるのに頑張っている”みたいな言い方がけっこうある。そうではなく、純粋に「楽しい」とか、「もっと作品を見てみたい」とか、「どんな人が描いているんだろう」という切り口から、社会との接点ができていったらいいなと思っている

「ふふふのお店」について語る店長の野健一郎さん
「ふふふのお店」について語る店長の野健一郎さん

アーティストが絵を描きながら店番

「ふふふのお店」は、上越市を中心に福祉施設を運営する社会福祉法人「みんなでいきる」がオープンさせた。
きっかけは、2020年に開いた障害者によるアート展で、その作品を商品として販売したことだった。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
販売会で手応えを感じて、いつでも作品を見ることができて、購入できる場所をつくった

お客さん:
元気がもらえるような気がして。明るい気持ちになる

店へ週に数回来ている佐藤葉月さんは、作業台でペンを手にすると絵を描き始めた。

絵を描きながら店員も担当する佐藤葉月さん
絵を描きながら店員も担当する佐藤葉月さん

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
アートの発信拠点なので、(お客さんに)アーティストが実際に作品を作っている場面を見てもらいたくて。佐藤さんに、絵を描きながら店員をしてもらっている

佐藤さんは、円と曲線を組み合わせた絵を描いた。

佐藤さんの作品
佐藤さんの作品

佐藤葉月さん:
“自閉症スペクトラム”という障害があって、人とコミュニケーションが取りづらく、20代後半から引きこもり気味だった

佐藤さんは、「ふふふのお店」で店番をしながら描くようになって、心の変化を感じていた。

佐藤葉月さん:
やりがいというか、生きがいというか。アートが(会話の)糸口になって、少しずつ話せるようになった

店の認知度アップへ “ゆるく”動画配信

「ふふふのお店」では、商品が売れると75%を作者に、5%をフードバンクに寄付している。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
障害がある人の表現活動が支えられるだけでなく、誰かを支えることにつながったらいいなということで、(売り上げの一部を)フードバンク上越に寄付している

しかし、店には課題もある。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
新型コロナウイルス(の特別警報)で、特に最近は客足が減った

ふふふのお店・坂野健一郎さん
ふふふのお店・坂野健一郎さん

そこで、店の存在をより多くの人に知ってもらおうと、店長の坂野さんは動画配信を始めた。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
表現を発表したいという人は、コロナ禍にかかわらずたくさんいる。イベントが中止になったり、移動が制限されたりしているので、オンラインの技術を使っていろんな人に発信する。そして、この店も一緒に知ってもらいたい

月に一度、坂野さんがナビゲーターを務める配信は、店にゆかりのあるアーティストと30分ほど雑談する“ゆるさ”を楽しんでもらう構成だ。
この日のゲストは、心に障害があり、“情報資格試験”というアーティスト名で抽象画を描く男性だった。

作品への思いを語る情報資格試験さん
作品への思いを語る情報資格試験さん

情報資格試験さん:
(作品で)私の存在を認められたい。「こういう人間もいるんだよ」というのを見てもらいたい。もし、「このお店、あしたから閉店です」と言われたら、ショックで眠れなくなっちゃうかもしれない

障害のない人も…アートを楽しむみんなの店

こうした作品発表の場として店を利用するのは、障害のある人だけではない。
来店した高校生の2人組。美術大学への進学を考える横田光希さんは、ペン画を店で展示販売してもらっている。

横田光希さん:
(作品を見た)感想をもらうと、次の作品への意欲が湧く

美術大学への進学を考える横田光希さん
美術大学への進学を考える横田光希さん

一方、もう1人の高校生・松尾達郎さんが店長の坂野さんに見せたのは、手作りのエレキギターだった。

松尾達郎さん:
誰も見たことがないものを作りたくて、父の職場のゴミ箱にあった木材を拾ってきて(エレキギターを)作った

独学でエレキギターを作成した松尾達郎さん
独学でエレキギターを作成した松尾達郎さん

このエレキギターは、松尾さんが独学で、しかも木の廃材を利用して作ったのだという。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
地域に埋もれている表現をもっともっと見てみたいというのはある

そこへ、高田特別支援学校の教諭・岡部清人さんが、商品を納めにやってきた。
高等部の生徒が陶芸を学ぶ中で制作した器などをこの店で販売することで、次の活動費用にしている。

生徒が制作した作品を納品する岡部清人さん(左)
生徒が制作した作品を納品する岡部清人さん(左)

高田特別支援学校・岡部清人教諭:
授業で生徒に売れたことを話すと喜ぶ。みんな、それを励みにして作っている

店番をしながら絵を描く佐藤葉月さんも納品の作業をお手伝いしていた。

佐藤葉月さん:
お値打ち価格なので、皆さんぜひよろしくお願いします

先ほどの高校生2人組、横田さんと松尾さんも作業の輪に加わった。

ふふふのお店・坂野健一郎さん:
いずれ作家の皆さんで、店番も全部組んでもらって、いろんな人がいろんな使い方を考えて、楽しく過ごせる場になれば

アートを楽しむみんなのための、みんなの店が人をつなぐ。

(NST新潟総合テレビ)

NST新潟総合テレビ
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