SDGsが採択された9月25日を含む約1週間は、国連が定めるSDGs週間。
ターゲットの14番目「海の豊かさを守ろう」について、岩手大学では「ある素材」の研究が始まっている。

廃棄するコンブがプラスチックに

野中翔記者:
岩手大学の研究室では、自然の中に存在する微生物を使って、未来に向けた画期的な素材を研究しているそうなんです

岩手大学農学部の山田美和准教授は、微生物を用いる新たな技術を研究している。その一つが、「生分解性プラスチック」だ。

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一般的なプラスチックが石油からつくられるのに対し、生分解性プラスチックは、植物など生物由来の原料から作られ、最終的に水や二酸化炭素に分解される。

研究中のプラスチックの原料を見せてもらった。何やら冷凍されているが…

修士1年・阿部汐里さん:
これはコンブですね。三陸産のコンブです

プラスチックの原料は…コンブ?
プラスチックの原料は…コンブ?

この研究室では、原料に県産のコンブやワカメを使っている。
しかも、これらは廃棄される素材。県内では、加工する時に余る部位など年間約5,000~6,000トンのコンブやワカメが廃棄されていて、資源は豊富だ。

修士1年・阿部汐里さん:
2~3mm四方のサイズに乾燥させて破砕したものがこんな感じ。これを培地に添加して菌を育てる

海藻を破砕し乾燥させたもの
海藻を破砕し乾燥させたもの

大船渡の海で発見された微生物から抽出

自然界に存在する微生物の中には、植物の成分を餌に、体内にプラスチックの一種「ポリヒドロキシアルカン酸」を蓄積する種類が存在する。

山田准教授は、県内の海で海藻の成分を餌として食べ、プラスチックを蓄積する微生物を見つけた。

岩手大学 農学部 応用微生物学研究室・山田美和准教授:
海藻の成分は、陸上の植物の成分と全く違う。今回は、大船渡の海から3年ぐらいかかり、ようやく見つけた菌です

発見した微生物について語る山田美和准教授
発見した微生物について語る山田美和准教授

微生物が溶け込んだ培養液にコンブやワカメを加えると、2~3日でプラスチックが抽出できる。

修士1年・梅林勇気さん:
3~4リットルの培養液から、このくらいの量のプラスチックが抽出される

培養液から抽出されたプラスチック
培養液から抽出されたプラスチック

現在の研究では、乾燥させたコンブ50グラムから、約1グラムを抽出できるという。
研究室では、繊維関連の製品を製造するトヨタ紡織(愛知県)と共同で、食品の包装に使うフィルムなど用途に応じて加工する研究を続けている。

野中翔記者:
実際につくられたプラスチックを引っ張ってみます。引っ張っても、しっかりしています

引っ張っても簡単にやぶれることはない
引っ張っても簡単にやぶれることはない

海でも分解…環境に優しく

また、このプラスチックは海藻が原料ということで、環境に優しい性質もあるという。

岩手大学 農学部 応用微生物学研究室・山田美和准教授:
実は、海の環境でも良好に分解することが知られている。なかなか海での分解性も確認されているものはなく、この微生物プラスチックの良い点の特長だと思う

一方で、コストや十分な量をつくるための生産効率、石油が原料のものに比べ、硬くもろい材質など、実用化へは多くの課題が残る。
それでも、プラスチックごみの問題を解決する鍵になるかもしれない。研究は続く。

岩手大学 農学部 応用微生物学研究室・山田美和准教授:
微生物がつくるので、途中で化学合成の技術などが必要ない。うまくいけばだけれども、全て環境に負荷をかけない技術になればよいと期待している

(岩手めんこいテレビ)

岩手めんこいテレビ
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