長くプロ野球の「チームドクター」を務めてきた長野・千曲市の吉松俊一医師。
88歳になる今も診療を続けながら、同世代の仲間と野球も楽しんでいる。元気の秘訣を聞いた。

昭和8年生まれ 88歳の現役整形外科医

上山田病院・吉松俊一医師(88)
どうですか、お加減は?だいぶリハビリ長いけど、少しずつ良くなっている?

患者:
おかげさまで、よくなってきました

千曲市の上山田病院の整形外科医・吉松俊一さん。昭和8年6月生まれの88歳。今も週2日、診療をしている。

吉松俊一医師
吉松俊一医師
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上山田病院・吉松俊一医師(88):
年齢が高くなった人たちにも夢を持たせたいというのが僕の考え。めちゃくちゃに明るい形でね。それが僕のモットー

吉松さんには診療の他に、もう一つ、続けているものがある。大好きな野球だ。

学生時代から続ける野球 今も同世代の仲間たちとプレー 

吉松俊一医師:
いつもはもっと打ってる。練習しないとだめだね

現役で野球もプレー
現役で野球もプレー

70代・80代のメンバーでつくるシニア野球チーム「生涯球友クラブ」で週に一度、練習に励んでいる。

吉松俊一医師:
(野球は)自分がうまくいかなくても、勝つか負けるかになると他の人が頑張って勝つこともあるし、自分がヒーローになれることもある。
(Q.チームプレーがいい?)
いいね。勝っても負けても。終わって宴会やるのもいいし

生涯球友クラブのメンバー
生涯球友クラブのメンバー

学生のころから熱中していた野球。医師になってからも、吉松さんの人生に大きな影響を与えてきた。

「ミスター」こと長嶋茂雄さんに、「世界のホームラン王」・王貞治さん、そして「鉄人」こと衣笠祥雄さん。
ビッグネームたちとの写真は、吉松さんがいかに球界で重要な役割を担ってきたかを物語っている。

長嶋茂雄さんと吉松医師(提供:吉松医師)
長嶋茂雄さんと吉松医師(提供:吉松医師)

1970年代、巨人軍の2軍の練習場に通っていた吉松さん。
最初は見学だけだったが、ケガをした選手を休ませるよう進言する手紙を出したところ、上層部の目に留まり、やがてチームドクターに任命。

「チームドクター」として名選手たちを診察

最初に診療したのは、キャンプで肉離れを起こした現役時代の王貞治さんだと言う。

王貞治さんと吉松医師(提供:吉松医師)
王貞治さんと吉松医師(提供:吉松医師)

吉松俊一医師:
当時はキャンプでけがをしても絶対休めないというやり方だった。『王さん、肉離れは大したことないと思っちゃいけない、思い切って休んでください』と。だから王さん、キャンプは全然(練習に)出なかったね

肩や肘に故障を抱えやすい野球選手。それをいかに防ぐかが吉松さんの仕事だ。

衣笠祥雄さんと吉松さん(提供:吉松さん)
衣笠祥雄さんと吉松さん(提供:吉松さん)

吉松さんは巨人の後、セ・パ両リーグでチームドクターを務めた。
大杉勝男、江夏豊、落合博満、名立たる選手がオフになると、吉松さんのもとで治療を受けたと言う。
また、度々渡米してメジャーリーグを視察。肘のアイシングや最新手術を日本球界に広めた。

高校球児を診察 1990年
高校球児を診察 1990年

吉松俊一医師(1990年当時):
肩硬いな、肩の柔軟性つけないと

得られた知識や研究の成果は、高校球児などスポーツをする県内の子どもたちの治療に役立てられた。

吉松俊一医師(1990年当時):
腕で投げるんじゃなくて、腰のひねりで投げる意識が大事

1990年の寿野球大会
1990年の寿野球大会

スポーツドクターとして活動する一方、吉松さんは「野球で健康維持を」と40歳以上の選手による「寿野球大会」を発案。これまでに40回以上、開かれている。

吉松医師「野球のおかげ。なかったらぶらぶらしている」

冒頭で紹介した「生涯球友クラブ」も、10年ほど前に吉松さんが立ち上げた。

吉松俊一医師(88):
投げた後は(膝は)どう?痛い?

82歳のメンバー:
痛みは感じないけど、ふんばりは効かない

チームでの役割は、監督兼選手兼チームドクター。メンバーたちの体の調子も気を使っている。

82歳のメンバー:
僕の場合は野球しかないので、野球のおかげで毎日、元気でおれる。先生がおらないとチームがバラバラになっちゃう

84歳のメンバー:
野球の指導の先生でもあり、病気の関係で指導していただける先生であり、張り合いあるありがたい存在

吉松俊一医師(88):
みんなで集まって、お互い褒め合って『ナイスバッティング』なんてね。野球のおかげだね、プロ野球の12球団を診られるようになったし。野球がなかったら、ただぶらぶらしてるわね

好きな野球を続けるために、健康維持にも気を使っている。吉松さんは3年前、脳梗塞を患った。以来、「大股で歩くこと」を日課にしている。

万歩計も常に持ち歩いている。

大股歩行とキャッチボールが日課…きっかけは3年前の脳梗塞

吉松俊一医師(88):
(大股だと)足が鍛えられる。それが歳をとればとるほど出来なくなる。意識しなくちゃできない。一人でも生きていくなら、いつまでも歩ける方がいいわけ

さらに…

日課のキャッチボール
日課のキャッチボール

長男・俊紀さん:
こちらも健康度が見えるので、これくらい元気なら安心だなと

キャッチボールの相手は、長男で同じ整形外科医の俊紀さんだ。

長男の俊紀さん
長男の俊紀さん

長男・俊紀さん:
信じられない元気さです、うらやましい。自分もいつかこうでありたいと思いますが、夢物語ですね。こんなに元気な88を迎える自信はない。大きな大きな目標

88歳 吉松医師の「元気の秘訣」と「今後の目標」

診療を続けながら、大好きな野球にも打ち込む吉松さん。元気の秘訣と今の目標を聞いた。

(Q.元気の秘訣は?)
吉松俊一医師(88):
やっぱり歩行だね、歩くこと。それからメンタル的にも、マイナスは忘れて常にプラスに。嫌なことがあっても『いいよいいよ、そんなことは』という生き方をして、そうするとすぐ楽しくなるから

(Q.今の目標は?)
吉松俊一医師(88):
100歳を超えて元気があればいいなという気持ち。毎日毎日、そんなこと思いながらね。難しいこと考えずに、野球やりながら市の役に立ちながら生きられれば、それも運だと

(長野放送)

長野放送
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