大きなリュックにぶかぶかの防護服

9月13日、中国福建省にある病院で撮影された動画が中国のSNSで広がった。そこには小さな体で大きなリュックを背負い、ぶかぶかの防護服を着て歩く1人の子供が映っていた。動画の投稿者はこの病院に勤務する看護師で、看護師によると福建省の莆田(ほでん)市で4歳の男の子が新型コロナに感染し家族と離れて1人で病院に入院する際のものだという。

この病院がある福建省莆田市の担当者は「中国の防疫の規定によって、新型コロナに感染した患者は隔離や治療に関して付き添いは許されない」と説明していて、これは小学生だけでなく未就学児も含まれるという。この規定があることから、撮影された4歳児も例外なく親元を離れて1人で入院することになった。福建省衛生当局によると莆田市では現在、新型コロナウイルスの陽性者は子供が多くなってきているという。

「子供たちはとても勇敢だった」

撮影をした看護師は地元の新聞社の取材に対して、「とても心が痛んだ。私たちは子供たちを病院で長い間待っていた。その理由は1人の子供が家で2時間泣き止まず、両親と医療スタッフの慰めでやっと家を離れたからだ。救急車から防護服を着た白い姿の子供たちが次々と降りてくるのを見ていると目から涙が溢れてきた」と話している。

この日、入院したのは他には5~6歳くらいの子供で、どの子もとても勇敢だったという。看護師たちは「入院する子供たちが、新しい環境に来てパニックにならないように自分の子供に話すように接し、番号で呼ぶのではなく名前を呼んで親しくするようにした」と子供達への配慮を見せた。

子供たちが着ていた防護服についても言及し、「あの防護服は大人でも蒸し暑いと感じるので子供はなおさらだ。その上、熱を出している子供もいた。しかし彼らはずっと防護服を着ていてマスクも全員はずしていなかった。とても強いです!」と称えた。

中国・福建省の病院で4歳児が検査を受ける動画 (中国のSNS:ウェイボより)
中国・福建省の病院で4歳児が検査を受ける動画 (中国のSNS:ウェイボより)
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さらに、看護師によると「一番小さい子はまだ4歳だがCT検査では全然泣いたり騒いたりしなかった」という。また、別の医師も「親もいない見知らぬ怖い病院に独りぼっちでいる子供を見ていると本当に心が痛んだ」と話し、「小さすぎる子供は自分でCT検査台に上がれないので自分が抱いてベッドに置いて検査を終えた」と語った。

厳しい隔離政策には慣れているはずの中国社会でも、幼い子供が独りぼっちで隔離される姿には衝撃が広がった。中国版ツイッターには「かわいそう」「涙が出る」と言った言葉や「心が痛む」「早く回復するように」などといったコメントが多数寄せられた。

親元を離れて病院に向かう子供(※上記とは別の子供)中国SNS:ウェイボより
親元を離れて病院に向かう子供(※上記とは別の子供)中国SNS:ウェイボより

12歳以下の子供が感染拡大防止における弱点に

中国では9月15日までに人口の約7割にあたる10億人を超える人がワクチン接種を終えたと発表されたが、12歳以下の子供はまだワクチン接種を受けていない。

市の担当者は今回、子供たちを中心に感染拡大が広がっていることについて「12歳以下の子供が感染拡大防止における弱点を露呈した」と指摘した。16日に行われた中国衛生健康委員会の記者会見では「まだ予防接種を受けていない12歳以下の子供も考慮に入れるべきだ」と、12歳以下のワクチン接種も考慮すべきとの発言も出てきた。

国民に有無を言わさず社会に大きな犠牲を強いる中国の“ゼロコロナ政策”。感染した場合はたとえ4歳児でも徹底した隔離対策をとる。実際に子供にそこまで厳しい隔離が必要なのかは判断が分かれるところだが、新型コロナを徹底的に抑え込む政府の方針を多くの中国人が支持しているという。

一方、現在の日本では幼い子供が感染しても中国のように子供と親の隔離を強制する政策はない。そして、家庭内感染のリスクが高まりつつあるのも事実である。東京都の新型コロナの専門家会議では9月、保育園や学校の部活動などでの子供の感染が多く報告された。

新学期が始まり子供からの家庭内への感染拡大についても危機感が示されたが、日本で中国と同じような対策をとるのは現実的には困難だ。アメリカの製薬大手ファイザーは5歳から11歳の子供についてもワクチンの効果が確認できたとして、近く米当局に接種年齢を拡大するよう申請する。

ワクチン接種が認められるまで、幼い子供の感染をどう防ぐのか、日本にとっても大きな課題となる。

【執筆:FNN北京支局 河村忠徳】
【表紙画像:中国SNSウェイボより】

河村忠徳
河村忠徳

「現場に誠実に」「仕事は楽しく」が信条。
FNN北京支局特派員。これまでに警視庁や埼玉県警、宮内庁と主に社会部担当の記者を経験。
また報道番組や情報制作局でディレクター業務も担当し、日本全国だけでなくアジア地域でも取材を行う。