プラスチック製品の削減が日本でも進められている。

レジ袋は有料化され、マイバッグを持つようになり、プラスチック製のストローは紙ストローへと変わりつつある。

そんな中、ベトナム製の「草ストロー」の普及活動を行っているのが、東京農業大学3年生の大久保夏斗さん。合同会社HAYAMIの代表取締役も務めている。

合同会社HAYAMIの代表取締役・大久保夏斗さん(画像提供:合同会社HAYAMI)
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2020年5月に起業したばかりで、コロナ禍に走り続けている大久保さんに、草ストローとの出会い、SDGsや環境問題について聞いた。

「草ストロー」は土に還る

左から)13センチ、20センチの草ストロー

HAYAMIが輸入する草ストローは長さ20センチ(20本入り/400円・税込)と13センチ(20本入り/280円・税込)の2種類。業務用では500本入りで20センチ(3500円・税込)、13センチ(3250円・税込)の取り扱いもある。それらはすべてベトナムで作られている。

無添加・無農薬・保存料不使用の完全自然由来の製品で、高温殺菌やUV殺菌を行っており、衛生検査を通過しているため、日本でも安心して使える。

カヤツリグサ科のレピロニア(画像提供:合同会社HAYAMI)

原料はベトナム・ホーチミンの農村で栽培されているカヤツリグサ科のレピロニア。丈夫な草で丈は2メートルを超えるという。もともとはこの草を編んでバッグなどをつくり、観光客向けに販売していたというが、派生して草ストローも生まれたという。

草ストローの原材料で作った工芸品(画像提供:合同会社HAYAMI)

「レピロニアの茎の部分をカットして、中の節のようなものを取り除いて空洞にして使います。イメージは竹です。自然のものなので多少ばらつきがあり、口径は4~7ミリあるのですが、飲み物を飲む際には問題ないです」

HAYAMIの草ストローには「地球にも人にも優しい」「ベトナムの農村地帯の雇用支援」「使用感の良さ」という3つの特徴がある。

動物の飼料にもなる(画像提供:合同会社HAYAMI)

完全生分解性の草ストローは自然の力で土に分解される。公園の草木が枯れて土に還るように、使用後は堆肥にしたり、動物の飼料にしたり、ごみゼロを目指す循環サイクルを構築させている。

ベトナム・ホーチミン市郊外の農村で手作りで作られているため、現地の雇用創出にもつながる。さらに、エコだけでなく、飲み物を飲む際に気持ちよく飲めるような「使用感」にもこだわっているという。

ホーチミン郊外の農村で草ストローは作られる(画像提供:合同会社HAYAMI)

「使用前は乾燥しているので手で潰したらパリッと割れてしまうこともあるのですが、水分を含むと割れにくくなります。紙ストローより耐久性が高く、シワシワになったりしないため、長時間使用することができるのも良さ」

耐熱性もあるため、温かい飲み物を飲む際にもこのストローを使うことができる。

起業して1年。コロナ禍ということもあり、「本当はベトナムに行く計画をしていたのですが、難しいです。ベトナムではロックダウンとなることもあり、草ストローの供給も大変なぐらいなので、行けるようになることを祈るしかないです」と大久保さんは話す。

コロナ禍での起業は大変だった

大久保さん自身が環境問題を意識したのは、高校生の時。「SNSでウミガメの鼻にプラスチックストローが刺さっていた動画を見て、環境問題や海洋プラスチックごみの問題の深刻さを知った」という。

当時は小中高と続けていたサッカーにのめり込んでいたため、アクションを起こせなかったようだが、大学生になると3歳上の兄が大久保さんと草ストローをつないだ。

(画像提供:合同会社HAYAMI)

「バックパックをしていた兄が2019年頃にベトナムで草ストローを見つけて、帰国後に教えてくれて。高校生の時にアクションを起こせなかったこと、紙ストローが個人的にはしっくりこないこともあり、起業を決めました。草ストローは個人があまりエネルギーを使わなくても、環境問題への貢献や意識するきっかけにもなると思っています」

こうしてHAYAMIを起業し、大久保さんの他に、兄の大久保迅太(はやた)さん、ベトナムでの事業をサポートするミンさんの3人でスタートした。

ゼロからの起業も苦労したそうだが、この1年は特にコロナの影響もあり、営業活動が一番大変だったという。

「通常のストローよりも値段が少し高い。コロナ禍で飲食店も経営が難しい中、導入してもらうとなった時に、受け入れてもらえないことも多かった。自分たちが考える草ストローに込めた“ストーリー”を理解してもらうことも苦労しました」

飲食店で使われる草ストロー(画像提供:合同会社HAYAMI)

現在は全国で約180店舗の飲食店で草ストローが使われているという。そうなるまでには、学業とビジネスを両立させながら、普及活動を続けてきたからだ。

「コロナもあって直接の営業が難しく、3000店舗近くに電話やメールなどを中心に連絡しました。興味を持っていただいた飲食店の方々とお話して導入を決めてもらったり、メディアでの露出をきっかけに決めてくれる人も多くなりました」

(画像提供:合同会社HAYAMI)

実際に導入を決めた飲食店からは「見た目が緑色で珍しいので、『これなんですか?』とお客さんから聞かれてコミュニケーションのきっかけになったという声もあります」と好評のよう。

大久保さんは「飲食店も環境問題やプラスチックに関する意識について説明する機会を得たり、『エコなだけじゃなく、農村支援にもつながるのはいいよね』と言っていただけることも多くて嬉しいです」と話した。

今後の課題は「使用後」の扱い

2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚を上回るとされている。そんな状況に危機感を持っている大久保さんたち。そこで、HAYAMIでは4つのSDGsを掲げている。

「(1)貧困をなくそう」(農村地域の雇用創出)、「(12)つくる責任、つかう責任」(使用後は土に還る)、「(14)海の豊かさを守ろう」(海洋プラスチックごみの削減)、「(15)陸の豊かさも守ろう」(現地NGOと協力して持続的な農業開発を目指す)。

中でも、「つくる責任、つかう責任」として、今後は草ストローを広めて認知度を高めながらも、「使用後」に力を入れていきたいと大久保さんは言う。

分解中の草ストロー(画像提供:合同会社HAYAMI)

自宅や飲食店付近に畑などがあれば、土に還すエコ活動ができる。しかし、それが難しい環境もあり、草ストローを生ごみとして出さざるを得ないこともある。

「ただのゴミにしてしまうのか、使用後の草ストローを回収するのか。回収するにしても課題は多くあります。使用後に焦点を当てて活動していくことにも力を入れていきたい」と、処理の方法への課題により注力していきたいと話した。

現役大学生ながら実際に行動を起こし、環境問題解決に向けて取り組んでいく大久保さんは、次のステップへと走り出している。2021年3月にはサボテンから作った植物性の革の財布の販売も開始。「Re:nne」と名付け、メキシコのスタートアップと連携した。

「Re:nne」のサボテンレザーの財布(画像提供:合同会社HAYAMI)

サボテンレザーは、成長に水をほとんど必要としないノパルサボテンを原材料とし、栽培・製造工程でも負担が少ない。化学物質を使用しない100%オーガニックであり、最大55%が生分解性素材で作られているため、プラスチックのようにゴミとして残らないという。

SDGsは2030年までに普遍的に取り組む”持続可能な開発目標”。その目標である2030年に向けて大久保さんは「アクションを起こすことが一番ですが、無理せずに興味を持ったことに取り組んでほしいです。プラスチック製品を使うことをやめてみるとか、日常の中でもアクションを起こせることは多いので、重く考え過ぎずに、時々マイバッグやマイボトルを忘れちゃうこともあると思いますが、“意識”することは大切なのかなと思います」と語った。

「SDGs」と聞くとどこか壮大なテーマで、大きなことを為さなければいけないと考えてしまう。けれど、日常で使うものを“エコ”なものに変えてみる。そうした意識を持ったり、行動してみるだけで私たちもSDGsに貢献できるのかもしれない。