自民党総裁選(17日告示、29日投開票)に立候補を表明した高市早苗前総務相は、9月12日、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」(日曜・午前7時30分~8時55分)に出演し、首相に選出された場合に最初に手をつける政策を問われ、「危機管理投資イコール成長投資に予算の比重を移す」と強調した。
具体例として新型コロナウイルス感染症対応を挙げ、「治療薬とワクチンを日本で作るための投資に国費を使う」と述べた。
高市氏は、物価上昇率2%を達成するまで、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を凍結すると主張している。
麻生太郎財務相が高市氏のこの主張に否定的な考えを示したことを受けて、番組レギュラーコメンテーターの橋下徹氏(元大阪市長、弁護士)が「麻生さんとも戦うか」と質問した。
高市氏は「財務当局がプライマリーバランスにこだわったことで、安倍内閣の機動的な財政出動が中途半端に終わった」と指摘。
「強い経済を作らないと、全世代が安心できる社会保障はできず、雇用の場も創出できない。税収増にも結びつかない」と麻生氏に反論した。
番組では、同じく立候補を表明した河野太郎規制改革相が「脱原発」、「女系天皇容認」の持論をトーンダウンさせていることを伝えた。
これについて、高市氏は「ほかの立候補予定者の批判は一切しない」としつつ、「内閣総理大臣は過酷な仕事で、国会論戦にもさらされる。もしも自分の信念と違うことを説明しようとすると、相当大変だ。譲れないところは譲れない、信念を持っていかないと国会論戦には耐えられないし、国民に自分の言葉で語りかけることが難しくなるんやないかな」と述べた。
一方、番組には加藤勝信官房長官も出演した。加藤氏は、総裁選について「リーダーが変われば政治は変わる。大事な選挙だ」と語った。
加藤氏が所属する竹下派は6日、「まとまって対応する」ことを確認したとされる。番組で派閥として「ひとつでまとまっていけるか」と問われた加藤氏は、「まとまるというのは同じ人をということだけではない。仮に(支持候補が)違っても、お互い理解しながら進んでいこうと、幅広い意味だと、私は理解している」と説明した。
総裁選には、河野氏、高市氏のほかに岸田文雄前政調会長が立候補を表明している。
加藤氏は「党主催の討論会などで、経済対策やコロナ対策を含めて(各候補の主張を)聞いて、判断していきたい」と述べ、支持候補を明らかにしなかった。
番組では、高市氏が「私みたいにちょっととんがっているというのか、なんとなく地上波(テレビ放送)を見ていると、私は右翼扱いをされている気がしてしかたがない。こんなに優しく生活者に寄り添った政策をいっぱい構築しているのに、なぜなのだろうと思う」と首をかしげる場面もあった。
以下、番組での主なやりとり。
松山俊行キャスター(フジテレビ政治部長・解説委員):
安倍晋三前首相の影響というものが、今回の総裁選の1つの側面だ。そうした中で河野氏が3人目の正式出馬表明の記者会見をしたが、持論を封印したのではないか、と言われている。男系天皇維持、原発容認では、安倍氏や高市氏は近い考えを持っていると言われる。岸田氏も比較的近い考えを示している。一方、河野氏は、これまで脱原発や女系天皇容認の持論を述べていた。出馬の記者会見では、安倍氏への意識もあるのか、保守層を取り込もうとしているのか、安倍氏に近づいてきているような印象を受ける。
高市早苗前総務相:
個人的に政治家として思うのは、私は割と幅広く皆さんに愛してもらおうというよりは、日本の未来のために今これをやっておかなければ間に合わないという思いで次々議員立法をやってきた。内閣総理大臣は過酷な仕事で、国会論戦にもさらされる。もしも自分と信念と違うことを明確に説明しようとすると、相当大変なことだ。
松山キャスター:
エネルギーいる。
高市前総務相:
私みたいにちょっととんがっているというのか、なんとなく地上波(テレビ放送)を見ていると、私は右翼扱いをされている気がしてしかたがないが...。
松山キャスター:
保守という見方が強まっている。
高市前総務相:
こんなに優しく生活者に寄り添った政策をいっぱい構築しているのに、なぜなのだろうと思う。しかし、譲れないところは譲れない。ここは信念を持っていかないと、国会論戦には耐えられないし、国民に自分の言葉で語りかけることが難しくなるんやないかなと思う。
松山キャスター:
今回の総裁選、3候補が出馬表明しているが、争点はどこにあるのか。3者とも保守主義を掲げている。河野氏も記者会見で保守主義ということ、中庸で温かいものだということを強調していたが、(総裁選の)争点が見えづらくなっている感じがする。どう差別化を図っていくつもりか。
高市前総務相:
私が主に訴えているのは、短期的にはいま本当に困っている人をどう救うかということ。感染症で医療現場、保健所、救急現場は大変な状況だ。企業、事業者を全部つぶしてしまったら、感染症が収束して、(経済が)V字回復する時になんにもならない。さまざまなところに財政的な手当てをしなければいけない。日本経済の建て直し(が重要)。日本が直面するリスクを先取りして必要な法制度整備、研究開発を進める。この辺を一番強調していきたい。危機管理投資イコール成長投資だ。ほかの国も絶対に直面する。これだけデジタル化が進んでいたら電力不足も絶対に起こる。気候変動により、土木建築と農業(のあり方)も変わってくる。自給率をどうするか。感染症発生後、中国にマスクの7割を依存していた。さまざまな医療機器も足りなくなった。国産体制をどう構築していくか。日本には政治に強制力はない。もし治療薬、ワクチンを日本で作ってもらえるなら、そのための投資、国費を使ってもいいとと思う。いま本当に必要な危機管理投資を先手打ってやっておく。これにより海外にも展開できる製品、技術、サービスができる。イコール成長投資にもなる。必ず税収としても取り戻す。多くの人に所得や雇用の場を増やしたい。
松山キャスター:
もし首相になったら、まず最初に何に手を付けるか。
高市前総務相:
危機管理投資イコール成長投資だ。ここに予算の比重を移させてもらう。
橋下徹氏(元大阪市長・弁護士):
プライマリーバランスについて、麻生財務相が反対だという声を上げている。麻生大臣とも戦うということか。
高市前総務相:
財務当局が。あれだけプライマリーバランス(の黒字化目標)にこだわったことで、安倍内閣の時に機動的な財政出動が中途半端に終わった。強い経済を作っておかないと、全世代が安心できる社会保障はできない。雇用の場も創出できないし、税収増にも結びつかない。
松山キャスター:
17日に自民党総裁選が告示される。現在3人が立候補を表明している。加藤官房長官はどういう基準で支持するのか。
加藤勝信官房長官:
党主催の討論会などで経済対策、コロナ対策を含めてどういう形で、今をどう評価して、どうやろうとしているのかをしっかり聞いて判断していきたい。党員はみな同じ気持ちだと思う。リーダーが代われば、政治は変わっていく。そういう意味で非常に大事な選挙だ。
松山キャスター:
加藤さんの派閥(竹下派)は「1つでまとまって」ということを方針として出しているようだが、まとまっていけるか。
加藤官房長官:
まとまるというのは同じ人をということだけではない。仮に(支持する人が)違っても、そこはお互い理解しながら進んでいこうと。幅広い意味だと私は理解している。
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