都の5施設で毎年7億円以上の赤字

1年の延期を経て開催された東京オリンピック・パラリンピックが閉幕した。

大会の舞台として様々な競技会場が建設されたが、東京都は6会場を恒久施設として約1400億円かけて新たに建設した。閉幕後も国内外の大会の会場などとして使用することを想定したのだが、4年前に東京都がだした今後の収支を見てみると、6施設のうち黒字が見込まれているのは、バレーボールや車いすバスケの会場となった有明アリーナのみ

都の5施設の赤字総額は毎年約7億3000万円
都の5施設の赤字総額は毎年約7億3000万円
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それ以外の、東京アクアティクスセンター、カヌースラロームセンター、海の森水上競技場、大井ホッケー競技場、夢の島公園アーチェリー場の5つの施設は、そもそも赤字となる見込みだ。5つの施設の赤字総額は毎年約7億3000万円ずつ生み出されると見込まれている

今後はこれらの施設がいわゆる「負のレガシー」とならないようにできるだけ施設を活用し、
いかに収益を上げるかが課題となる。

大会費用は当初の2倍以上に

巨額の赤字が懸念されるなか、大会全体にかかった費用はいくらなのか。

2013年1月に東京オリンピック・パラリンピック招致委員会がIOC=国際オリンピック委員会に提出した「立候補ファイル」には、大会経費として大会組織委員会、東京都、国で計7340億円と試算されていた。

しかし、この試算には、大会が1年延期されたことでコロナ対策費など追加経費が重なり、2020年12月に公表された最新の経費では、大会組織委員会、東京都、国で計1兆6440億円となった。

大会費用は1兆6440億円で当初の2倍以上に
大会費用は1兆6440億円で当初の2倍以上に

つまり、昨年末の時点ですでに当初の費用の2倍以上となっている。これはあくまで経費、つまり支出なので、最終的な収支は収入分も踏まえて算出される。

“決算”は来年度 2兆円以上の赤字と試算

1年の延期を経たこの大会の最終的な赤字はいつわかるのか。
武藤事務総長はこのように発言している。

大会組織委員会・武藤敏郎事務総長:
仮設施設の取り壊し、あるいは借りた場所の作られている施設の原状回復というのが、来年3月くらいまでかかるものがある。おそらく、決算を行うことができるのは来年の4月以降にならざるを得ないと思っている。

最終収支が明らかになるのは“来年4月以降”
最終収支が明らかになるのは“来年4月以降”

つまり、最終的な収支は来年にならないと明らかにならないという。

すでに大会の収支を独自に算出している関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算によると、
大会組織委員会、東京都、国の3者で計『約2兆3713億円』の赤字になるという。

宮本名誉教授は『(最終的に積み上がった経費総額)-(税収増加分)=赤字』という計算式で試算しており、税収増加分を計算しても2兆円を超える巨額の赤字となると試算した。

その内訳は、大会組織委員会が約900億円、東京都が約1兆4077億円の赤字、国が約8736億円の赤字となっていて、東京都の赤字分に限って見ると、都民1人あたりで換算すると約10万円負担することになる計算だ。

都民1人あたり約10万円の負担に
都民1人あたり約10万円の負担に

費用見積もりの甘さ 都が補てんか

大会を開催することによる経済効果も見込んで、赤字覚悟で施設などは建設されていて、そもそもの見積もりの甘さも指摘されている。

そして、大会組織委員会は約900億円の赤字、これは原則無観客での開催となったことで、そのほとんどが入ることがなくなったチケット収入分だ。

東京都や国は税収でまかなうとしても、大会組織委員会の場合は財源も限られているので、
このチケット売上げ分の赤字を補てんできないとみられている。

組織委幹部「都が払えないわけはない」

原則としては、大会組織委員会が払えない場合は東京都が補てんし、東京都が補填できない場合は国が補填することになっている。

赤字は誰が払うことになるのか?
赤字は誰が払うことになるのか?

武藤事務総長はこの費用負担の問題について、「開催都市が費用を負担するのが基本になるが
組織委員会と東京都と国で話し合いをして決まる」
との立場を示している。

ただ、丸川五輪相は5月に「東京都の財政規模をふまえると、都が財政的に補てんできない事態はおよそ想定しがたい」と話しているほか、大会組織委員会の幹部も、「チケット減収分900億円を考えれば、(大会組織員会の赤字は)1000億円ぐらいになるだろう。東京都が1000億円を払えないわけはない」と話すなど、東京都が補てんするという見方も強まっている。

赤字は「都が補填」の見方が強まっている
赤字は「都が補填」の見方が強まっている

これだけの赤字が出ることが予想される今大会。大会を開催したことの価値を高めるためには、今後、東京大会でのレガシーをどう高め、どう引き継いでいくかにかかっている。

(経済部 東京オリンピック・パラリンピック担当 秀総一郎)

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秀 総一郎
秀 総一郎

フジテレビ報道局経済部記者。経産省・公取委・エネルギー・商社業界担当。
1994年熊本県生まれ 幼少期をカナダで過ごす。
長崎大学卒業後、2018年フジテレビ入社。
東京五輪、デジタル庁担当を経て現職。