深い山に囲まれた、富山市八尾町大長谷地区で狩猟を営む石黒木太郎さん(29)は、「美味しいジビエ肉を捕ってくる」と評判の猟師。
年間に約60頭のクマ、イノシシ、シカを仕留めるという。
自ら仕留め、自らさばく。29歳の猟師

富山県では狩猟の高齢化が進み、人里に現れる有害鳥獣の駆除に駆り出される顔ぶれも多くは高齢者だ。29歳の石黒さんの存在は珍しいと言える。
民家もまばらな集落を案内してもらうと、こんな話から始まった。
石黒木太郎さん:
このへんだと地元の人たちもクマが出たからと言って大騒ぎすることもなくて、おったぞという感じ。ある程度クマと共存できている
石黒さんの猟の本番は冬だ。見せてくれた映像には、葉を落とした木の幹をよじ登る一頭のクマが映っている。ハンター仲間と巣穴から追い出したら、登ったという。

クマは冬眠中のせいか、動きが鈍いように見える。何発か銃声が聞こえると、クマは雪の上に横たわっていた。あらためる石黒さんはひとこと、「でかいな」とつぶやいた。
獲物は、専用の冷蔵設備を備えた処理施設に運ぶ。この施設も5年前、自分で作った。富山県で初の、個人のジビエ専門の処理施設だ。

クマやイノシシなどの毛皮をはぎ、塊肉にする。この日はレストランから頼まれたクマの肉を薄く切り落としていた。

石黒木太郎さん:
肉の質は猟師によって変わる。だから、たまたま食べた肉がすごく臭い肉だったということがある。捕獲や血抜きの失敗で、肉のおいしい、おいしくないが決まることがないようにしている。
野生の動物が臭いとか固いというのは、こちら側の努力が足りないだけ

動物たちの命をいただくうえで、できる努力は惜しまないという思いは強い。
新鮮なジビエが地元レストランで人気
肉はジビエレストランなどに届ける。獲物を獲るだけではなく、肉の処理と販売まで担う。
同じ大長谷集落でレストランを営む森恵美さんは、石黒さんの肉を使っているひとり。クマのミートソースは、店の人気メニューだという。

村上山荘・森恵美さん:
石黒さんのは間違いない肉なので、安心して使っている

「クマはすごい生き物」
自身の仕事が評価される一方で、こんな思いもある。
石黒木太郎さん:
僕はクマを尊敬しているというか。すごい生き物だなと思っている。今は、クマは悪者にされがちだが、本当にすごい生き物。こういう生き物が日本にいるっていうのがすごい

大長谷集落は、かつて1,500人が暮らしていたが、今はわずか40人あまり。石黒さんは、この地で猟師を続けたいという。
石黒木太郎さん:
人は、もう少し自然の恵みで生かされているという感覚を取り戻すべきだと思う。僕がここに住んでこういう生活をしていることが、一番のアウトプットというか表現というか。それを見たときに、自分も田舎に住んでみようかなとか思ってくれたらすごいうれしい
(富山テレビ)