武装勢力タリバンが首都カブールを制圧し、混沌とするアフガニスタン情勢。現地に派遣された自衛隊機は、日本人1人とアメリカから要請されたアフガニスタン人14人を国外に輸送したが、ミッションは困難を極めた。

BSフジLIVE「プライムニュース」では現地情勢を熟知するゲストを迎え、日本政府の対応と情勢の行方について徹底検証した。

現地に日本人はごく少数。日本に協力したアフガニスタン人の退避が重要

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長野美郷キャスター:
8月30日時点までの経緯。7月8日、アメリカのバイデン大統領が米軍撤退の時期を8月末としました。すると、武装勢力タリバンが国内で勢いづき各地を制圧。8月15日には首都カブールを陥落させ、同日日本は大使館を閉鎖。17日には職員12人がイギリスの軍用機で国外に退避。
日本政府は自衛隊の輸送機3機を派遣し、24日と25日に隣国パキスタンの拠点空港に到着。26日にカブールの空港付近で過激派組織イスラム国による自爆テロが起き、退避活動が一層困難となる中、27日に自衛隊によって日本人1人が国外に退避。アメリカの要請でアフガニスタンの旧政権関係者14人も退避させています。

反町理キャスター:
一連の退避オペレーション以降でも、現地にいる日本人がアフガニスタンの外に出たいとなったとき、その責任を日本政府が負うべきかどうか。

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
今回、僕が政府に対して意見具申をしたのは、日本人ではなく日本のために働いてくれたアフガニスタン人と家族を救うといこと。最初から日本人はいない、いてもごく少数とわかっていた。最初に意見具申したのはカブール陥落数日前。だが、陥落時に大使館の日本人スタッフが全て退避するとは思わなかった。カブール空港にはその時点で米兵が6000人入っており、必ず守る。机1個でいいから誰か空港に残し、アフガン人スタッフの救出を図るべきだったが、残念ながらそうしなかった。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
JICAの現地事務所や大使館の現地職員を含めたいろんな方についての退避準備は、数日前というレベルではなくもっと以前から行い、約500人をリストアップしていた。100%ではないが。

反町理キャスター:
そのうち何人が国外に脱出できたんですか。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
まだゼロです。チャーター機等で連れてくる準備をしていたが、タリバンが予想以上に早く来てしまい計画が発動できなくなった。

写真家 長倉洋海氏

写真家 長倉洋海氏:
大使が8月15日、大使館職員が同17日という退避が早すぎた。カブールにタリバンが入っても戦闘が激しく始まったわけではない。他国のように大使館を空港に移し、様子を見ながらリストにあった約500人を待つべきだった。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
当時は大使館員の命が最優先だった。米軍が空港をしっかり管理できるという状況が分かり、もう一度戻ってリストの約500人といった方々の退避オペレーションに入った。8月23日に大使館の人間と日本からの人間が入っている。

退避が必要なアフガニスタン人には命の危険がある。「命のビザ」発給を

反町理キャスター:
リストアップされた約500人の内容について。

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
今対象となっているのは全てアフガニスタン人、大使館とJICAのスタッフ。ほかに日本のODAを使って人権教育や女性の権利について働いてくれたNGO。そして、日本への国費留学生でその後、アフガニスタンに戻っている人。

反町理キャスター:
その人たちはタリバン政権になると、国外に逃げないといけない?

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
タリバンにとっては殺害の対象。自由主義の中で、政府運営や選挙のやり方を学び、ジャーナリストや教員になった人もいる。外務省は全部受け入れてくれたが、NGOと留学生に関しては家族の帯同ができなかった。責めているのではなく、今回、自衛隊は無理して飛んでおり限りがあった。その約500人をバスで空港まで輸送しようとした。現場の日本人職員は頑張った。だが、あの自爆テロが起こってしまった。

反町理キャスター:
なるほど。

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授 米国発給の「命のビザ」画像

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
なぜ初動が遅れたか。問題は誰もアフガニスタン人の退避を考えなかったこと。メディアも含め日本人全体の問題。アメリカは、こうした方々が退避時にタリバンを納得させるために「命のビザ」をSNSベースで発給している。日本政府にもこれを即座にやってくれと8月16日に意見具申をした。

反町理キャスター:
日本政府の反応は?

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
カブール空港にいる日本人の係員が、NGOからの要請に応じ、インターネットのテレビ通話で本人を確認してリストに載せるということをやってくれた。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
500人よりもっと多くの日本関係者をどうやってアフガニスタンから外に出すかというのが次のオペレーションで。日本だけでできる話ではなく、G7プラスアルファでその辺の話を始めている。国際社会が連携しながらタリバン側と調整しないといけない。

現状の自衛隊法を適用した活動には限界がある。憲法含め再考する必要

反町理キャスター:
今回のように海外で政治に関与したオペレーションを行うとき、現地の政変で現地協力者を国外に救い出すにあたって、日本の法的な枠組みにはどんな問題があるか。

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
自衛隊を派遣する際、自衛隊法第84条の4は邦人がすべての起点になる。ところが今回の対象は、ほとんど全て日本のために働いてくれたアフガン人とその家族。これを救うため決断してくれた官邸には感謝します。ただ法改正のためには当然、憲法解釈をどう変えるかという議論になる。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
今回の輸送で使える自衛隊法84条の3には在外邦人「等」の輸送とある。日本人が1人でもいれば、いくらでも外国人を運べるというのが今の国会答弁。84条の4は、活動地域が安全でなければ使えない。84条の3になるともっと権限があり、バリケード排除や救出のために武器を使える。だが、憲法9条の関係で縛りが多い。

写真家 長倉洋海氏:
もちろん憲法の縛りもあると思うが、今回に関してはもう少し早く動けば、約500からの人を乗せて飛び立てた。法律の条文にしても解釈にすごく幅がある。政治家や外務省含め、どう弾力的に解釈するか。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
今後のポイントは、邦人や現地職員等をいかに空港まで運ぶか。今回、84条の4でそれはできなかった。カブール市内の一定のエリアの治安をアメリカが守っていたら、今回の退避オペレーションは変わった。法改正を含めそういう部分をできるようにしなければ。84条の3について要件の整理や緩和も必要。

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
自衛隊に関して問題は2つあり、上官責任が日本の法制度では大変曖昧なこと。そして国外犯規定、つまり自衛隊も含め日本人が海外で犯す業務上過失致死が刑法の管轄外であること。この法の空白をなくすには、自衛隊法の改正では済まない。自衛隊をどう憲法で位置づけるか。これ以上逃げてはいけない。

写真家 長倉洋海氏:
国際法上のことで考えると、武装勢力が一つの国の首都を制圧したことを国連はもちろん認められないと言っている。それをどうして交渉相手として認めるのか。力で制圧した側が交渉相手だというのは、自分のことしか考えていない発想。もちろん日本人や関係者のことは大事だが、国際法を踏まえた対処も考えなければ結局、堂々巡りになる。

タリバンの融和的な発言は信用しきれない。他国と連携し対応していくべき

長野美郷キャスター:
タリバン報道官は「すべてのアフガニスタン人に恩赦。女性は社会で非常に活動的に」と発言。しかし、国連高等弁務官は「タリバンが深刻な人権侵害を行っている」と発信。過去に政権を担ったタリバンと今回は違うものか、それとも本質は同じか。

写真家 長倉洋海氏:
タリバンはいくつもの組織の集合体。カブールの指導部が融和的なことを言っても、内部で齟齬が出てくる。タリバンの一番の問題点は、1万人近くの外国人勢力が入っていること。給料をもらって活動している。彼らの収入源の3分の1から半分はヘロインの巨大な売り上げ。そして、テロによって恐怖を煽ることでの支配。世界のイスラム教徒のほとんどはおかしいと思っている。

長野美郷キャスター:
日本に対するタリバンの姿勢。FNNの取材でタリバン報道官は「日本人と日本に関係するアフガニスタン人は必要、退避を望まず安全を保証する。日本と友好的であり続け良い外交関係でいたい」と。これは信じられますか。この国とどう向き合えばいいか。

佐藤正久 自民党外交部会長 元外務副大臣:
なかなか100%信用はできない。人権の問題にしても穏健派から強硬派までいて、一枚岩ではない。例えばカタールのような、ごくわずかの友好国と連携していくことが大事。

伊勢﨑賢治 東京外国語大学教授:
今までタリバンは、武装組織として戦い麻薬のお金で給料を払ってやってきた。しかし、これから行政を運営しなきゃいけない。今は全部止まっている。外貨準備金もアメリカの銀行に入っており凍結されている。タリバン兵が待遇の悪さに反発し政権が崩壊すれば、苦しむのは民衆。内戦状態になれば最悪の事態。それを避けなければ。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月30日放送