地震、台風、水害…。

日頃からいつ起こるかわからない災害への備えをしている人も多いだろう。しかし、例えばいざ火災が起きたときに、逃げ方をしっかりと把握している人はどれくらいいるだろう。

「自分は大丈夫」と思っていても、実際に起きたときにはパニックになってしまうかもしれない。

災害時の自身の経験と仕事としてなじみのある「タオル」を防災グッズとして商品化したのが、いまばりレスキュータオル株式会社の宮崎陽平さん。2013年にコンパクトで携帯性がよく、火災避難時に口を覆える濡れタオル「火災避難用レスキュータオル」を生み出した。
改めて火災が起きたときの逃げ方とともに紹介したい。

火災の時の逃げ方をおさらい

総務省消防庁のサイトによると、火災報知設備の警報を聞いたとき、服装や持ち物にこだわらず、冷静にできるだけ早く避難すること。

煙の中を逃げるときは姿勢を低くして、ハンカチやタオルで口・鼻をふさいで煙を吸い込まないようにする。空気を遮断して炎の勢いを抑えるため、特にマンションなどでは出入り口のドアを閉める。

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またデパートや旅館、ホテルなどで火災に遭った場合、避難階段を使用して逃げること。エレベーターは閉じ込められる危険性があるため非常口や避難経路を確認する習慣をつけておくことが大事だという。

外出時に限らず、家の中でも平常時から火災が起きた場合に備えて、避難ルートを確認しておくことが自身や家族の身を守るすべとなる。

ちなみに火事の場合は「119番」。パニックにならず、住所や様子を伝えられるようにしておきたい。

パウチの中は筒状のタオル

そんな火災時に使える「火災避難用レスキュータオル」を開発した宮崎さんは2004年、出張中のホテルで地震に遭い、着の身着のまま逃げ出した経験がある。それがきっかけで、改めて災害時の避難について確認したという。

1896年に創業した今治市のタオルメーカー「みやざきタオル」とも関わりのある宮崎さんは、なじみのあるタオルと地元・愛媛県今治でタオルが有名なことを踏まえて、火災時に避難を補助する「いまばりレスキュータオル」(550円・税込)を生み出した。開発にあたって県産業技術研究所繊維産業技術センターの協力を受けた。

当初は缶詰の中にタオルを入れていたというが、災害時に持ち運びなどが不便だった。最終的には縦19センチ、横12センチの薄くて軽いアルミパウチに変更して2013年から発売を開始した。

さらに、パニックになっていてもワンアクションでタオルを取り出せるように、上下左右に10カ所の切り口を入れるデザインを施した。

アルミパウチの中には清潔な精製水に浸る今治で織った、綿100%の吸水のよいタオルが一枚入っている。このタオルは地元の消防団や消防士らにアドバイスをもらい、手がすっぽりと包まれる筒状にした。

火災時、ハンカチやタオルを口や鼻に当てていると、熱風を手の甲に受け、やけどする恐れもあることから、タオルの中に手を通して使える形状にしたという。

期限が切れたら日常で使って

108度で8分のレトルト滅菌をしているため、アルミパウチの中は無菌状態。当初は3年だった品質保証期間も、品質検査に合格し2017年頃には5年に延長した。

実際に使用されたケースを宮崎さんは「聞いていない」としながらも、「使われないまま期限が切れた方がいいものでもある」と話す。

保証期間が3年の時は「期間が過ぎたらどうすればいいのか?」という問い合わせもあったようだが、もし、品質保証期間が過ぎてしまったら、そのタオルは布巾などとして日常生活で使ってもらいたいそう。

今治で織った綿100%の吸水のよいタオル
今治で織った綿100%の吸水のよいタオル

発売から8年経ち、20万枚ほどのオーダーを受けたという「火災避難用レスキュータオル」の多くは企業や自治体が防災用の備品として購入しているケースが多い。

また、“火災避難用”としているが、清潔な精製水と滅菌処理されているタオルのため、水が貴重な災害時やアウトドアの時にも体を拭いたりするタオルとしても利用できると宮崎さんは話す。

過去には災害時やアウトドアでも使える「シャワータオル」なども検討していたそうだが、本業のみやざきタオルの方が忙しくなったため、今はストップしているそう。

普段からタオルやハンカチなどを持ち歩いていることもあるだろうが、「火災避難用レスキュータオル」もカバンに忍ばせておいたり、自宅の寝室などに置くことで「いざ」というときに役立つことがあるかもしれない。

イラスト=さいとうひさし

プライムオンライン編集部
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