軽症・中等症向け「抗体カクテル療法」
厚生労働省は、新型コロナウイルスの重症化を防ぐ効果があるとされる「抗体カクテル療法」について、外来患者にも使用を認めることを自治体に通知した。
この記事の画像(4枚)新型コロナの軽症や中等症患者向け治療の「抗体カクテル療法」は、2種類の抗体を混ぜて点滴で同時に投与するもので、入院患者などに限って使用が認められていた。
しかし、感染が拡大し、自宅療養者が急増していることを受け、厚生労働省は外来患者にも使用を認めることを自治体に通知した。
投与後の病状悪化に緊急対応できるなどの一定の要件を満たした医療機関が対象となる。
「発症7日以内、軽症・中等症1」に有効
三田友梨佳キャスター:
アメリカの大学病院で新型コロナウイルスと向き合っている内科医の山田悠史先生に聞きます。
「抗体カクテル療法」が外来患者にも広がることについて山田先生はどうお考えですか?
マウントサイナイ大学病院勤務・山田悠史医師:
「抗体カクテル療法」の使用の根拠となった試験が示した主な効果は入院を防ぐ効果でしたので、米国ではそもそも外来でしか使用が認められていません。
これまで日本で入院に限られていたのは、この薬が注射薬であり、外来での管理が難しいという判断だったと思いますが、感染早期の軽症者に対して有効性を発揮する薬であり、現状病院以外で療養する方も増えてきていますので、この薬が外来で活躍する場面は数多くあると思います。
三田キャスター:
アメリカでは入院を防ぐために外来でのみ使用されているんですね。
この抗体カクテル療法を感染早期の軽症者に投与するとどんな効果が期待できるのでしょうか?
山田悠史医師:
この薬が有効と考えられる患者さんにはいくつかの条件がありまして、具体的には発症から7日以内で感染から時間が経っていないこと、酸素を必要としないような軽症または中等症であること、そして肥満や慢性的な肺疾患などの重症化リスクがあることです。
これらの条件を満たした方に投与することで重症化を防ぎ、結果として入院、または死亡のアウトカムを約7割減らすことが研究結果として知られています。
投与直後の経過観察が必要
三田キャスター:
一方で、私たちが理解しておくべき課題などはありますか?
山田悠史医師:
課題の1つは投与を受ける患者さんの外来での管理だと思います。
まれな副作用としてアレルギー反応や重いアレルギーであるアナフィラキシーが抗体製剤でも報告されているため、投与中や投与直後の経過観察が必要になります。
また先ほど、感染早期の軽症の方に有効と話しましたが、すでに重症化している方や重症化リスクのない方に使うメリットは知られていません。
全ての人に有効な薬というわけではなく、高額な薬でもあるので、何でもかんでも投与すれば良いというものではなく、適材適所で用いる必要がある点をご理解頂くことも大切だと思います。
三田キャスター:
今も入院できず自宅で一人で苦しんでいる方、不安に思っている方がたくさんいらっしゃいます。野戦病院の設置に加えて、抗体カクテル療法の薬の十分な確保と効率的な運用で適切な治療が早期に行き渡ることを切に願います。
そして少しでも医療の負担を減らすためにも1人1人改めて感染対策を徹底したいと思います。
(「Live News α」8月25日放送分)