「SDGs」という言葉を知っていても、実際どんなものなのか知らない人も多いだろう。
「今まで環境問題、人権問題、平和問題と別々の尺度で捉えていたものが、SDGsを通してカテゴリー分けされ、それぞれの社会問題が相互に関係していることを可視化したもの」
こう話すのは、SDGs普及活動家で「Design,more.」代表の横浜国立大学2年生・入江遥斗さん。今回、入江さんにSDGsの捉え方や私たちにできることを聞いた。
“ポストSDGs”も考える
SDGsは貧困、教育、ジェンダー、環境などの観点から17個の目標が掲げられている。「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包括性のある社会の実現のため、2015年の国連サミットにおいて全会一致で採択。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標だ。
この記事の画像(5枚)フジテレビでは8月22日に、公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の設立50周年を記念して協働で開催する「Voice of Youth Empowerment (VYE)2021 サステナ英語プレゼンテーションチャレンジ~地球の未来は、キミが変える~」プロジェクトの最初のイベント「SDGs Agora」を実施。
イベントには入江さんもゲストとして参加し、自分、周囲の人、地球上にいる全ての人を軸に「幸せ」について考えるワークショップを行った。
SDGsの目標を達成する年限は2030年。残り10年を切った中で入江さんは同世代に「2030年で終わりじゃない」ことを意識してほしいと訴えた。
「実は今、2050年や2100年を見つめるような計画も少しずつ出てきています。『2030年まででやっぱりできることないじゃん』と諦めるよりかは、2030年以降の社会を担っていく主体として、それ以降の“ポストSDGs”のようなものを考えていかなければいけないと思います」
「2030年」はあくまでも通過点であり、世界が抱えている課題に対して、期限を決めて動くのではなく、「次世代を見据えた、自分たちの子ども、孫のことを考えて活動していこうということをメッセージとして伝えたい」と強い信念を明かした。
暗記ではなく“本質”を知ろう!
そんな入江さんがSDGsを知ったのは、高校1年生の生物の授業。
「生物多様性の観点から学んだのですが、地球上にはそれぞれ生物がいて、生態系の中で密接に関係していることを知りました。その学びを社会に適応したらどうなるんだろう?と先生から問いをもらい、その中で『SDGs』というものがあると知りました」
「社会問題に関わってみたいけれど、なかなか関われない、どうしたらいいのかわからない」というモヤモヤを抱いていた入江さんにとって、SDGsを知ったことが「自分も主体になれる」と発見した瞬間でもあったという。そこから入江さんの活動が始まった。
学生団体「50cm.」を設立し、現在はSDGsを自分ごと化するためのきっかけづくりを行う「Design,more.」の代表を務めている。
国が出しているSDGsの資料が難しく、そこに課題を感じたため、学校や企業などでより分かりやすくSDGsを学べる動画や教材を制作。理解を深めるための発信・講演、学校や企業に出向いて授業など幅広く活動している。
それは「学校現場だとどうしても暗記事項になりがち」という懸念があるから。「衝撃を受けたのは、ある試験でSDGsの4番目と6番目がくり抜かれて、ここに何が入りますか?という4択の問題です。暗記して覚えることも一つのやり方ですが、本質を捉えていないような気持ちになりました」
17個すべて覚えていても、逆に覚えられなくても、そのうち1個でも知って行動に移せるほうがよりよい社会を築くことにつながっていくはずだ。
バトンを受け継いでいくことが大事
では、私たちが持続可能な社会を作るためには何が出来るのだろうか。
入江さんは例えば「節水や節電、食べ残しをしないこと」も大切だとしながらも、「それだけで満足してほしくない」と話す。
「小さな活動の積み重ねがすごく大事だけれど、それだけでは変わることができない。組織や国家の力も必要で、私たちの意識を変えることも重要。自分がどんな組織に属し、国家の中でどんな立ち位置なのかを認識することも必要です。節電や節水に留まらない、“社会を良くするためにはどうしたらいいか”を追求し続けることが大切です」
そのキーワードが「チェンジメーカー」だと入江さんは言う。「スティーブ・ジョブズみたいなスゴい人について行くより、身の回りを少しずつ変える“チェンジメーカー”が必要だと、経済産業省の方の話に刺激を受けました」と明かす。
さらに、少しずつ変えていきながらも、入江さんは「世代間の継承」の大切さを伝えていきたいという。
SDGsは日本語で「持続可能な開発目標」。それに対して、入江さんは「その行動や活動が持続可能じゃない」と感じることもあるそう。「多世代のバトンを今の若者が受け継ぎ、そのバトンを受け継いだら、育ててアップデートさせ、次世代に渡していくこと」が2030年以降の“ポストSDGs”を切り拓いていくことでもある。
2030年に向けて社会の課題を解決するために、日本や世界でさまざまな取り組みが行われている。それを未来へ持続させるためバトンを受け継いだ時、自分には何ができるのだろうと今から考えていきたい。