2年ぶりに開かれた夏の甲子園では高校球児たちが熱戦を展開しているが、愛媛県松山市で開かれた「ものづくり」の全国大会でも、高校生が日本一を目指してアツイい戦いを繰り広げた。

愛媛代表として出場した高校生に密着した。

授業で造園に魅了され…自然生かした魅力的な空間を

金属加工に電気の配線、真剣な表情で取り組む若者たち。

松山市で8月に開催された「若年者ものづくり競技大会」で、工業高校などでものづくりを学ぶ全国の若者たちが15の部門でその技を競った。

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井上音さんは西条農業高校の3年生で、愛媛代表のひとり。「造園」競技に出場した。

西条農業高校3年・井上音さん:
やっぱり自分のイメージ通りに完成させていって、それがきれいにできたらうれしいですね

小学生のころからものづくりに興味があったという井上さん。高校の授業で造園を学び、その奥深さと楽しさに魅了された。

造園を教えているのは、クラス担任の谷口先生。

井上さんの担任・谷口哲宏先生:
器用なんです、割と。空間認識はセンスの部分、結構そこはうまい

今治市で造園会社の代表を務める越智将人さん。定期的に井上さんを教えている越智さんは、大会を前にしたこの日も指導にあった。

井上さんを指導する・越智将人さん:
下の枝が前側にある方が木の「正面」になる。この位置だったら違う。正面じゃないんよね、よく似てるけど

大会では、決められた区画に竹垣や敷石、植栽などを施して庭を作る。制限時間は3時間30分。図面通りの寸法でできているかどうか、正確さや見た目の美しさなどが審査される。

西条農業高校3年・井上音さん:
やらかした…幅が全然違う

井上さん、図面を見誤り竹垣の丸太を立てる位置を間違えてしまった。

井上さんを指導する・越智将人さん:
図面を見なくても、寸法が頭に入っていないと

図面通りに作ることはもちろん、石や木をはじめとする自然の材料を生かし、魅力的な空間を作り出すことも大事なポイント。

西条農業高校3年・井上音さん:
石を割るのも剪定も、自然材料なので。失敗したら元に戻すことができないので、失敗しないようにと思いながら

井上さんを指導する・越智将人さん:
もうちょっと浅く切る。もう1mmくらい。雨がたまらないよう浅く切る。竹垣をもうちょっと練習したらええと思う

西条農業高校3年・井上音さん:
わかりやすいし緊張感もあって、本番に近い空気でできているのが良いかなと思います。(造園競技は)中四国で入賞者がいないと聞いて、やってやろう!って

ものづくりに情熱を燃やす井上さん、普段はどんな高校生なのか。

井上さんの友人たち:
優しい。ノリが良いところが好きです

失敗を糧に本番へ 制限時間3時間半の挑戦

そして迎えた大会当日。「造園」競技には男女計21人が出場。全員に同じ図面が出され、その出来栄えを競う。

練習では丸太を誤った位置に取り付けてしまった井上さん。本番では落ち着いて位置が確認できた。

井上さんを指導する・越智将人さん:
いい感じだと思います。天端(木や竹の上の部分)もまっすぐ切れているし、縦にもまっすぐ立てているし。竹垣がある程度順調にいったら、ペースが上がっていくと思う

井上さんが得意とする「乱張り」と呼ばれる作業。大きさや形がバラバラの石の縁をタガネやハンマーで整え、円形になるよう地面に置いていく。

西条農業高校3年・井上音さん:
調子が良かった。失敗も1回しかしなくて、うまくいっていた

井上さんの担任・谷口哲宏先生:
細かい所で改善して、練習で教わったことが十分発揮できている

井上さん、制限時間を10分超えて作業を終了。時間オーバーは減点だが手応えを感じていた。

西条農業高校3年・井上音さん:
最初は余裕があって、後半になってやり直したい所がどんどん出てきて。それを直していたら時間がギリギリになった

日本造園組合連合会 愛媛県支部・池内剛三支部長:
整地も良くできてます。張り石はちょっとリズムがあった方が良いのかな。大きい石だけでなく小さい石も入れたりすれば、もっと面白く見える。よくできております

大会翌日、結果が発表された。

西条農業高校3年・井上音さん:
銅賞!

井上さん、造園競技の愛媛代表として初めてとなる入賞を果たした。

西条農業高校3年・井上音さん:
ちょっと悔しいけど、今まで練習してきたものが出せたと思うので悔いはないです

先人たちが磨き続けた技術の継承が大きな課題となっている日本の「ものづくり」。未来の担い手たちがこの夏、大きな一歩を踏み出した。

(テレビ愛媛)

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