お膝元である横浜の市長選で、菅首相が全面支援を表明した盟友・小此木氏が敗北した。これが政権に与える衝撃とは。世論調査では内閣支持率が大幅下落しており、国民の菅政権離れはどこまで深刻なのか。

BSフジLIVE「プライムニュース」では、橋下徹元大阪府知事と政界を熟知する橋本五郎氏をゲストに迎え、菅政権の命運と総選挙の行方を展望した。

小此木氏落選には、支援した菅首相のコロナ対策への批判が影響

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新美有加キャスター:
横浜市長選挙の投票率は49.05%と、4年前の前回選挙より11.84ポイント上昇。当選したのは、立憲民主党の推薦で日本共産党などが支援した山中竹春氏で50万6392票。次点は菅首相が全面支援した前国家公安委員長の小此木八郎氏で、32万5947票。約18万票差、得票率では約12ポイント差で圧勝といえます。それぞれの勝因、敗因は。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
小此木氏は菅首相と一体。政府のコロナ対策はどうなのかと。神奈川では、選挙戦になってから感染者数が告示前の約3倍に増えている。これは響いた。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
山中氏が候補者として最高だった。コロナ対応に猛批判がある中、山中氏というコロナの専門家が出て、今の政府のやり方じゃダメだと言えば8割は勝ち。他の小此木氏、林氏、松沢氏、田中氏といった候補者は政治の手垢がついた人たち。有権者は変革を求めていた。

政党支持率はキープ “菅おろし”の可能性はあるが実力者は菅支持

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員

反町理キャスター:
横浜市長選の結果は、菅政権にとってどれほどの失点となるか。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
政治的には敗北の原因分析が反発力になりもするが、今回は総選挙直前だからダメージは大きい。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
政治家は選挙で通ることが全て。党内で菅さんが苦しい立場に立つことは間違いない。ただ政権支持率は下がっているが、自民の政党支持率は下がってはいてもまだ33.5%。立憲民主党は6.5%。

反町理キャスター:
政党支持率の方が内閣支持率よりも高い。横浜市議選、都議選の結果も厳しい。都市部における自民党の若手議員の危機感も大変強い。党内で総裁交代への動きは。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
政権支持率には政権への批判がダイレクトに反映される。だが、政党支持率は結局「どっちがマシか」という比較優位の話。ただ自民党内では確かに、政権支持率低下で足の引っ張り合いも出てくるでしょう。菅さんは派閥の長でもないし。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長

反町理キャスター:
無派閥ゆえに党内を掌握しにくい面はあるか。菅さんの手足になる人が自民党内にどれほどいるのか。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
だから誰にすがるかといえば、やっぱり安倍前首相、麻生元首相。

反町理キャスター:
総裁選に関しては、麻生さんははっきり口で言わないが、安倍・麻生・二階各氏が菅首相を支持。すると再選は固い?

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
対抗馬として誰かが立つにしても、本当に自民党が生まれ変わるように見られるか。

反町理キャスター:
無投票で菅総裁が再選という可能性もあるか。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
今このタイミングでの無投票再選では、党に力が生まれない。自民党は揺らいでいる状態。この難局だからこそ、やはり激論の総裁選をやらなきゃいけない。メディアに取り上げられるような論戦を。コロナだから党員投票を含めたフルスペックの総裁選を避ける理屈も立つ。対抗馬が立って本気でやるというのが本来の姿だが、無投票だけは避けてもらいたい。

菅首相には気持ちの発信、オープンな議論が足りず納得感が生まれない

新美有加キャスター:
FNNの最新の世論調査では、菅政権を支持すると答えた方は32.1%と前回から6.9ポイント低下。一方、支持しないと答えた方は前回から5.8ポイント上がって61.3%。政府のコロナ対応について評価すると答えた方は前回から7.7ポイント下がって22.7%。評価しないと答えた方は6.6ポイント増え70.4%。

反町理キャスター:
菅首相には何が足りないのでしょう。メッセージ性や発信力についてよく言われるが。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
こういう危機の状況では、聞かれたことにまともに答える。そして答えたことについて、自信を持って自分の気持ちを発信することが有効だと私は思う。細かいことは大臣や事務方の方が言えばいい。菅さんも記者会見について、もう少し柔軟にやってみればよいのだが。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
菅さんは、正解だと決まったことを霞が関の尻を叩いて実現するのはものすごく得意。しかし不得意なのは、賛否が激しい問題に関して決定するプロセスの踏み方。いきなり決めてしまう。賛否が激しい問題だからこそ、オープンの会議で激しく議論してもらい、菅さんが最後に決断する。そして国民に納得感を醸成しなきゃいけない。

政府命令で病床確保、従わない保健医療機関の指定や保険医登録を取り消せ

反町理キャスター:
先日ようやく、病床確保に向けて田村厚労相と都知事が話し合いを始めた。感染症法を根拠にした権限行使。強制力の話になりますが。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
政治に手かせ足かせをずっとはめてきたすべてのツケが、今回のコロナ対応に出てきている。適切にチェックする仕組みの下で強制力を持つのが、やはり政治の本質。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
例えば特措法にしろ、タガをいっぱいはめられる。野党が必ず人権問題だと言い、マスコミも騒ぐ。私は菅さん個人ではなく、国の制度的な問題と思う。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
でも法律を変えて、特措法31条の医療機関に対する要請のところを命令にすればいい。これは暴論ですが、従わなければ保健医療機関の指定や保険医の登録を取り消す。妊婦さんが亡くなる、自宅で若者が亡くなるというのは保険医療制度の破綻ですよ。税金が入っている保健医療について政府の方針に従わないのなら、指定を取り消せばいい。医師の資格を剥奪するわけじゃないのだから。それを今度の選挙で言えば、絶対に大勝する。

反町理キャスター:
やはり医師会が怖いのか。日本医師会の会員なんて数百万人。その人たちを敵に回しても残りの国民がよくやったと思えば、多くの人たちが政権を支持するのでは。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
僕もそう思うが、小選挙区制で地元の議員が医師会を恐れるのは、地元ではやはりお医者さんに信用があるから。しかし、病床確保の命令を打ち出した方に有権者は行くと思います。間違った権力の行使なら次の選挙で落としてくださいと言った上で、命令を果たす政治の姿を見せることが、今の日本の政治にとって一番必要なことだと思います。

総裁選後に総選挙の日程が有力。党・内閣の人事タイミングが難問

新美有加キャスター:
解散総選挙のタイミングについて。緊急事態宣言は9月12日まで。自民党総裁の任期満了が9月30日。8月26日に自民党の総裁選挙管理委員会の会合が開かれ、告示が9月17日、投開票が29日になる説が有力です。解散のタイミングは?

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
総裁選の告示前の9月13~16日に解散できるタイミングがあるが、感染状況を見るとそうはいかない。横浜市長選でも敗れ、もはや総裁選を先にしなければ。できるだけ争う形で自民党の活力を見せ、衆議院選挙に臨む。

反町理キャスター:
総裁選を先にやるということは、菅総裁が再任されたとしても、党三役や内閣の人事をやるのかどうか。総選挙の投開票日が10月にずれ込むとなると、任期切れになるかもしれない。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
私は総裁選後、衆議院選挙の前にやると思います。そのままの体制では、旧態依然だと思われる。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
僕は逆です。人事をやるなら派閥の領袖の力を借りなければいけない。もし党三役にまた二階さんが来れば、選挙ではやはりマイナスになりますよ。

反町理キャスター:
菅さんが再選後に人心一新をするなら、党役員人事や内閣改造をやるべきだが、派閥の力を借りて総裁続投を決めながらその人たちを切る形で人事がやれるのか。大変苦しいところでは。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
そこは口八丁手八丁しかない。麻生さんや二階さんといった党内での実力者、またはその人たちが言った人間を入れるしかないが、国民の感覚としては違和感がある。ある意味ごまかしだが、あとで決めると言うしかない。

無党派層の取り込みが総選挙のポイントとなる

反町理キャスター:
総選挙に向けた話。今回の世論調査では支持政党なしが44.6%。ここを各政党がどのような戦略で取っていくのか。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
難しい。例えば4年前の希望の党のように、第3勢力が出てくることもある。しかし、今回はコロナが非常に大きな束縛。支持政党なしが相当な割合のまま選挙に突入するのでは。

橋下徹 元大阪府知事 元大阪市長:
選挙は与党に対する信任投票みたいなもの。野党は変化への期待を思いきり膨らませなければ。いくら政策を出そうが、口だけだと国民に思われてはダメ。すると、やはり先程の医療界に対する命令。

橋本五郎 読売新聞 特別編集委員:
それは現場の仕組みに精通していなければ言えない。2020年からの失敗はそこにあった。

BSフジLIVE「プライムニュース」8月23日放送